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25.古龍

 巨大な古龍が下に横たわっており、他の1頭がその周囲を飛び回っている、古龍の姫らしい。

 シルフィーがゆっくりと古龍に向けて降下していくと、首を持ち上げた古龍がいきなりブレスを放ってきた。

 咄嗟にシルフィーの前に≪水壁≫を形成して防ぐが、ブレスで削られていく。さらに魔力を注ぎ、壁を厚くするようにして防いだ。

 ブレス1つでもかなりの威力だ。


「主殿まずいな。古龍様が理性を失われている。大人しく解呪させてくれそうにない。」

「見たところ呪いの流れは分かったけど、あの威力のブレスを続けられると邪魔だな。」

 まあ、ブレスレットがあるから俺達だけなら問題ないが。


「シルフィー、俺たちを下に降ろしてくれ。そして、あそこの姫に事情説明して、その後、あまり危険でない程度に古龍様の気を引いてくれ。レティは俺の側で万が一に備えて守ってくれ。」

「承知した。」

「承知しました。」


 下に降り立った俺たちは、確実に≪解呪≫出来そうなところまで古龍に近寄っていく。呪いは魔王が掛けたものというだけあって、解くにはかなり魔力が必要だ。

 古龍は、強烈なブレスを上に向けて放ち、シルフィーや古龍の姫にかすっている。彼女らに当たるのも時間の問題だし、水平に放たれて人が住んでいるところに飛んでいくのもまずい。よし、やるか。


 まず、古龍に≪重力≫を掛けて地面に押さえつける。俺の魔力の3分の1くらいかけたが、さすがに古龍、感覚ではもって数十秒。まあそれだけあれば十分。

「≪解呪≫」

 確実に完全に呪いを払う為、俺の魔力の半分を込める。


「「同時発動!!?」」

 シルフィーともう1人女の子の声。


 ≪解呪≫を掛け続けること20秒くらい、呪いを完全に払いきった。

 王都でレベルが大幅アップして以来、こんなに魔力を使ったのは初めてだ。まあ、俺の魔力は、どうやら約10秒で全魔力の1割回復するみたいだから、すぐ戻るけどね。

「フゥ~~。」

 ちょっと疲れたから大の字に寝ころぶ。

 古龍の気配は・・・、気を失っているようだ。


「ロバート様!大丈夫ですか?」

「主殿、大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だ。魔力を込めすぎて少し疲れたけど、完全に呪いは払えたはずだ。」

 レティと、シルフィーが聞いてくるので、気にしないよう答える。


「主殿、今回の件、本当に感謝しかない。」

「ああ、気にしないでいいよ。俺にとっても特にこの周辺は大事な場所なんだ。話を持ち掛けてくれて、被害が出る前に止められて、本当に良かった。では、古龍様の様子を見に行こうか。」


「お母様!、お母様!」

 姫が声を掛けているので、≪回復≫を古龍に掛ける。解呪は体に大きな負担だったようだ。

 ついでにブレスがかすっていた姫とシルフィーにも≪回復≫。

「んっ?おお!本当に呪いが解けておる。汝が解いてくれたのか。これで長年の懸案が解決した。本当に感謝する。」

「風竜王殿から話を聞いたわ。母を助けてくれてありがとう。」

 気が付いた古龍と姫から礼を言われる。


「いえいえ、実は、私の実家がここから結構近くて、シルフィー、いえ風竜王殿が話を持ち掛けてくれたことにむしろ感謝しているのです。」

と、答えながら、加えてダンジョンからの経緯も話した。


「風竜王に名付けして召喚契約を認めさせるとは・・・、あの魔力であれば、不思議ではないか。」

 古龍が納得したように呟く。

「シルフィーをダンジョン外に出すためというのもあったので、望まれるなら召喚契約を破棄してもいいのですが。」

と持ち掛けると、

「いやいや、主殿。このまま継続でいい。今後、我はこの辺りで古龍様に仕えて暮らそうと思うが、必要な時にはいつでも召喚してくれて構わないぞ。」

 そこまで言われれば、拒否する理由もないし、

「ありがとう。では、今後ともよろしく。」


「さて、汝には多大な恩ができた。何かお礼をしないとな。何か望みはあるか?」

「さっきも言ったように、実家のある都市が近いのです。なので、この辺りの人々が平和で安心して暮らせるように見守って頂ければ、ありがたいです。」


「ふむ、漠然としているが、例えば魔物が大挙して人の町を襲うのを防ぐといったことか?まあ、気が付いた範囲で見守るくらいは造作もない。それだけでは見合わないな、そうだ!娘を連れていくか?」

「はぁっ!?」

 何を言っているんだ?


「そうだ、娘を主従契約で仕えさせよう。我らの寿命からすれば、汝の一生に付き合ってもあっという間のことだし、人の社会を学べるいい機会だ。ああ、娘の気持ちは?とか気にする必要はない。我ら龍は、本能として強い存在には敬意・憧憬の念を抱く。既に汝に対しても大いに惹かれている。汝は冒険者なのだろう?娘は人化できるし、人化状態でも十分な戦力になるぞ。なんなら、子を成しても構わんぞ。こっちとしても汝ほどの相手はそうそう見つからんしな。」

 いやいや、色々一気にぶっちゃけすぎだろう。俺が、姫に視線を向けると、スッと顔をそむけられた。何故に?いや、それより大事なことがある。


「もし、本人がいいと言った場合でも、1つ確認があります。正直に言って、我々はダンジョンでも、竜種を倒して、その肉を食しています。一緒に来てもその辺に忌避感があるんじゃないですか?」

「ああ、そこは気にする必要はないぞ。我々の様に高い知性を持つ者と、それ以外の竜種では全く別物と考えていい。我々にしても、亜竜などを食べることは珍しくない。」

と、古龍が答えた。

「そこが問題なくて、主従契約をすれば、同行しても構わないの?お母様の言う通り、貴方に魅力を感じて惹かれているのは確かだわ。子を成すのもやぶさかではないし。」

と姫が続けながら、人化した。人と違って、本音を隠さずズバッと言うんだな。


 しかし、人化した後、服を着ているのはどういう仕組みなんだろうと思いながら姫の姿を眺める。

 美しい黒髪を持った美少女だ。人としての見かけで言えば、20歳前くらいといったところか。胸がけしからんほどの主張をしており、腰が引き締まっているのでなおさら強調されている。

「いや、しかし・・・。」

 レティの表情を伺いながら思案する。


「ロバート様、私の事を気にされる必要はありませんよ。」

と、俺の視線に気が付いたレティが先んじて言う。

「私も、先に仕えている彼女を蔑ろにするつもりも無いし、寵を独り占めにしようと争うつもりも無いから、安心して。」

と姫も言う。

 いや、なんでハーレム前提なのかと。


「まあ、ずっと俺達に一緒にいたいと思い続けるか分からないし、お試しくらいの感じで一緒に来ますか?ところで姫のお名前は?」

「今は無いから、主従契約で名付けて。」

「では、エルザという名前ではどうかな?」

「エルザ・・・、いい響きね。ありがとう。それでは、手を私の頭の上にかざして。」

 言われるまま、右手を彼女の頭にかざす。エルザが何か聞いたことが無い言語で詠唱をした瞬間、頭の中に契約が刻まれた感覚が広がる。

「これで、私はあなたに仕える者となったわ。」

 エルザが満面の笑みで語りかけた。


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