23.50階層到達
「本当に驚いたわ。ここまでの力とは思わなかった。
改めて挨拶するわ。私がここのギルドマスターのアレクサンドラよ。アレクでもサンドラでも好きに呼んで。」
「ギルマスと対戦出来て光栄です。改めましてロバートと言います。こちらはレティシアです。それでは、アレクさんとお呼びしても?」
サンドラはちょっとね・・・。
「ええ、よろしくね。
貴方達は、実力的には、もうランクA、いえSでもおかしくないと思うわ。さっきもまだまだ余力はあったみたいだし、かなりの数の亜竜や地竜を狩ってるみたいだしね。
ただ、ランクAから上は、生活圏での魔物や盗賊の討伐、護衛依頼、魔物のスタンピード対応など、より直接民衆の役に立つ広範囲の実績が必要となるの。まだ若いけど、更に上のランクに行こうとするなら、ダンジョンの狩りだけじゃなく、その辺も考えて依頼を選ぶといいと思うわ。」
「ご忠告ありがとうございます。今後留意します。」
「ところで、竜種の買取は皮だけだったみたいだけど、肉はどうしたの?」
と、何故か少し恥ずかしそうにギルマスが聞いてくる。
「肉は自分たちで食べます。特に売らなくてもお金はあるので。」
「そう・・・、相談なんだけど、少しだけ分けてもらえないかしら?最近市場にもあまり出ないし、立場上、自ら狩りに行く訳にもいかなくて。・・・最近ね、そのね・・・、旦那との・・・夜の生活が少なくて・・・、竜種の肉は精がつくのよ・・・。」
後半の方は、俺にだけ聞こえるような途切れ途切れ小さな声で恥ずかしそうに言う。
なるほど、かなり年上だけど、エルフの寿命ならそっちもまだまだ現役なんだな。
美人エルフの萌え顔も見れたし、少しならいいか。
「分かりました。多少ならお譲りしますが、あまり人に言わないで下さい。きりが無くなるので。ここに出していいですか?」
「本当に!?ありがとう!この私のバッグにお願い。」
亜竜と地竜の肉を1ブロックずつ渡した。ギルマスがホクホク顔だ。
「代わりにと言ってはなんですが、1つお願いがあります。」
「私にできることならなんでも言って。」
「では、もし我々が今後このダンジョンの最深階層を更新したり、万が一最後まで攻略した場合、名前を公表しないで欲しいんです。」
「更新の事実や攻略の事実自体は隠せないけど、攻略者の名前なら隠せるわ。前例はないけど。」
「それで構いませんので、お願いします。」
「そろそろよろしいでしょうか。ギルド証の更新手続きをしましょう。」
そう言えばいたね、不愛想受付嬢が。ギルマスに向ける視線がなんか冷たい。
「ああ、ごめんなさい。引き留めてしまったわね。お肉ありがとう。今後も頑張ってね。」
ギルマスと別れ、受付嬢と共に受付に向かった。
受付でランクBのギルド証を受けとったが、結局それほど時間を使わなかったから、ダンジョンへ向かうことにした。
ダンジョンの入口から41階層へ飛んだ。安全地帯に冒険者はいないし、最近野営をした感じもない。まあ、ここまで来れるなら稼ぎもあるだろうし、野営の必要はないか。
「じゃあ、行こう!」
いつも通り、2人で駆ける。目新しい魔物としては、ランクAのグリフォンやコカトリスがいた。両方とも飛べる魔物だ。
グリフォンは、全長2m程度で、上半身が鳥、下半身が獅子のような姿をし、肉は美味らしい。
コカトリスは、全長3m程度のまさに巨大な鶏といったところで、これも肉は美味とのこと。
おそらく両方とも鶏肉系の味わいと予想して、狩る。コカトリスは石化の能力を持つが、状態異常に強い俺たちには問題ない。
しばらくグリフォン、コカトリス、亜竜、地竜と食肉となる魔物を狩りながら進む。マンティコアはスピードで俺たちに追いつけないので、スルーする。もはや基準は食べれるかどうかだ。
42階層で、野営をすることにして、早速グリフォン、コカトリスの肉を焼く。
美味い・・・・・。期待に違わぬ美味さだ。
コカトリスは鶏肉を極上品にした感じで脂の旨味が凄い。
グリフォンは鶏肉と豚肉のいいところだけを合わせたような上質の味だ。
レティはどちらも美味しそうに噛り付いている。幸せそうな顔で、こっちもホッコリする。
2人でお風呂に入り、就寝した。
その後、出会う魔物種はあまり変化せず、進む。
43、44階層で1泊。
45、46階層で1泊。
47、48階層で1泊。
49、50階層で1泊。
とうとう、50階層のボス部屋の前まで来た。
「意外と日数が掛ったのかな。どうなんだろう。」
「いえ、おそらくとんでもない速さで到達したと思います。」
ややジト目でレティが答える。
「さあ、ボス部屋に入ろう。」
ボス部屋に入ると、かなり暑い。ボスはランクSの火竜だ。体長は8mくらいか。飛ぶことなく悠然としている。
しかし、この環境は、ローブに≪付与≫した温度調節機能が無いとつらくないか?父上達は結局攻略したのかな?50階層到達と言ってたからボス部屋まで来てないのかな。まあ今はいい。
「レティ、弱点は水魔法だ。遠慮なくいこう。」
「承知しました。」
と言って、俺と距離を離し、火竜の攻撃目標を分散する。
「グアァーーー」
火竜が咆哮し、火のブレスを吐く。
「≪水壁≫」
レティが水の壁で防ぐ。ブレスの炎がぶつかり、水蒸気が広がる。
その間に俺は後ろに回り込み、オリハルコンの剣で尻尾を攻撃する。スパっと尻尾が切断された。オリハルコンすげえ。
怒り狂った火竜がこちらを向いてブレスを吐こうとした瞬間、レティがオリハルコンの斧で一閃、首を刎ねた。
最初の掛け声は何だったのか。攻撃に水魔法使ってねえ。
当然、肉素材として収納する。
この戦いを終えて、レティのレベルは171となっている。
「切りのいいところで1度戻ろうか。」
51階層安全地帯で到達登録し、水晶でダンジョンから出た。
ギルドに入ったが、特に変わった反応などは無かった。51階層まで行った情報は、ギルド側では把握できないのかもしれない。ギルド証を見せない限り分からないのであれば都合がいい。
例によって、解体場へ向かう。火竜素材は目立ちそうなので出さない。
亜竜の皮 ×25体分×300000ゴルド
地竜の皮 ×25体分×350000ゴルド
グリフォンの羽根・毛皮 ×20体分×250000ゴルド
コカトリスの羽根・毛皮 ×20体分×250000ゴルド
常時依頼報酬含めて約3000万ゴルド。既に目立たないとかいうレベルではないと思うが、解体場には、解体係しかいなかったのが救いだ。
他の冒険者には変な目で見られていない・・・、と思う。
前回と同じ風呂付の高い宿に泊まり、レティと濃密な夜を過ごした。