21.竜種
ギルドに戻り、留守番組に経緯を説明し、問題解決を伝えたので、そのまま解散となった。
買取を頼みに受付に行くと、今回はそのまま解体場に行くように言われた。
前回出し切らなかったランクCまでの素材も出してしまおう。
冒険者ランクCになったから多めに出しても大丈夫だろう、と思ったら、解体責任者の顔が引きつっている。ランクBの素材はまだまだあるんだが、肉は売らない。
森狼 ×28体 × 5000ゴルド
トレント ×45体 × 7000ゴルド
オーガ ×34体 × 40000ゴルド
トロール ×28体 × 50000ゴルド
サイクロプス ×30体 ×100000ゴルド
受付で、常時依頼報酬も含めて約800万ゴルドを受け取ったところで、受付嬢から
「依頼件数とランクBとCの魔物討伐数から、ランクBへの昇格試験が受けられるのですが、現在試験官になれる冒険者がいないので、お待ち頂けますか?」
と打診された。しばらくダンジョンに入るだろうし、またこのギルドに来るので構わない。
「どうせ、またダンジョンに入って、素材を持ってギルドに来るので、タイミングが合った時で構わないよ。」
と伝えて、宿に向かった。
今回の宿は、食事に期待して、1泊2食付き、2人で20000ゴルドと前回よりは高いところを選んだ。
食事は、前回の宿よりはマシだったが、肉質は野営の方が上だった。
部屋に入ると、入手した2本目のオリハルコンの斧を≪解体≫して、オリハルコンのインゴットにする。それを素材として、オリハルコンの片手剣を2本“創造”した。
自分用とレティ用として、いつもの≪付与≫をして、使用者を固定する。
「じゃあ、寝ようレティ。」
といつもの魔法をかけた後、レティと一緒にベッドに入った。
朝、いつものレティの可愛い寝顔を見ながら起き、ふとキスしたくなった。昨夜も何回もしてるのに。
「んっ、ん、んぅ~~~~~!!、ぷはっ、ハァハァ・・・。」
「おはよう、レティ。」
「お、おはようございます。ふ、不意打ちなんて・・・。」
と真っ赤な顔で睨んでくる。
まだまだ初々しい反応が可愛い。
「さっ、朝食を食べてダンジョンに行こう。」
「むぅ、誤魔化しました・・・。」
ダンジョンに入り、30階層に飛んだ。
「さあ、行こう。」
今日も、駆ける。29階層でボス部屋を過ぎたが、その後もいるのはランクBの魔物が多い。倒して収納していく。
31、32階層と進み、1泊。
33階層に進んだところで、飛んでいる魔物を見つけた。ランクAの亜竜だ。バカでかい蛇に翼を付けたような姿の一応竜種らしい。竜種は肉が期待できる。
≪風刃≫で翼を切断し、落ちてきたところで首を刎ねた。今回レティはオリハルコンの斧を積極的に使っているが、凄まじい切れ味を見せている。
5頭ほど落としたところで、周りからはいなくなった。
適当な場所を見つけて、≪結界≫内で昼食を取った。勿論、亜竜肉のステーキだ。
美味すぎる・・・。レティも満面の笑顔だ。2人共に何枚もおかわりをした。
その後も亜竜を見つけ次第倒し、収納していく。
34階層へと進み、そろそろ野宿かという頃、これもランクAの地竜がいた。トカゲを大きくしたような姿で羽根は無く飛べない。硬い鱗を持ち、通常の刃物では傷つけられそうもない。魔法耐性も高い。
という情報だったが、オリハルコンを一閃すると首が落ちた。切ったレティも驚いているが、実は亜竜も固かったし、今更だな。
7頭いたので、全滅させ収納した。
近くに場所を探して、取り出した小屋で野宿(?)する。夕食は地竜肉の串焼きにした。
これも美味い。亜竜と似ているが脂がやや多い。味わいは甲乙付けがたい。出来るだけ狩っていこう。
そして、野宿のお楽しみ、2人でお風呂に入り、寝た。
その後も駆け続け、出てくるランクA、Bの魔物を狩りつつ進む。そういえば、30階層付近までは他の冒険者がいた(敢えて近寄ってはいない)が、30階層を越えて暫くすると見掛けなくなった。それほど高ランク冒険者がいないのか、魔物が強く、先に進むのが遅いのだろうか。
35、36階層で、1泊。
37、38階層で、1泊。
39、40階層で、1泊。
そして、40階層にボス部屋があった。
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第三者視点---ギルドマスター部屋---
「ギルマス、お帰りなさいませ。」
と、例の無愛想受付嬢が入ってきた。
「ああ、ただいまアンナ。何か問題でもあった?」
王都から帰ってきたギルドマスターであるアレクサンドラが尋ねる。エルフである彼女は、200歳を超えても若々しく、エルフの特徴でもある美貌・スリムな体躯・美しい金髪を備えていた。
かつてはランクS冒険者として活躍していたが、結婚を機に活動を休止すると、懇願されギルマスに就任していた。
アンナに尋ねたものの、挨拶のようなもので、特に問題を予測して聞いたわけではない。しかし、
「実は、・・・。」
と、領主家が絡んだトラブルをアンナが報告した。
「つまり、伯爵家の騎士の暴走を、その冒険者達が直接伯爵を訪ねて行って、穏便に話を収めたということね。」
「はい。ギルマスがご不在で、初動を誤りました。申し訳ございません。」
「そうね。結果だけ見ると、最初に伯爵かお嬢様に直接事実確認した方がよかったわね。まあ、穏便に済んだなら良かったわ。次に活かしてね。」
「はい。」
「でも、その冒険者達は何者なのかしら?」
「両パーティー共に、最近こちらのダンジョンに入り始めたようです。彼らの証言通りなら、知己ではなく今回の件で初めて出会ったようです。一方の5人パーティーの持ち込みの成果もかなりのものなのですが、もう一方の2人パーティーが異常な量の素材を持ち込んでいます。マジックバッグの収納量もおかしいです。」
残念なことに、ロバートの目立たない為の調整は全く意味を成していなかった・・・。
「貴族に物怖じしない態度と、その希少なマジックバッグ、いいところの出なのかもね。」
「そして、その2人は、規定によりランクB昇格試験の権利があります。ただ、試験官を出来る人がいなかったので待ってもらいましたが。」
少し考える仕草をして、
「それなら私がやるわ。」
と、アレクサンドラがニヤリと笑った。