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18.再会

 今朝も、レティの可愛い寝顔を見ながら目覚めた。

 さて、お次は21階層からだな。

「さあ、行こうか。」

「はい。ロバート様。」


 ダンジョン入口から中に入り、水晶に手を触れ21階層へ飛んだ。安全地帯には誰もいなかったので、そのまま進む。この階層も雰囲気は今までと大きく変わらなかった。≪身体強化≫で駆ける。

 聞いていた通り、ランクBの魔物が出始めた。ミノタウロス、サイクロプス、殺人熊などだ。

 俺とレベルが上がり続けているレティの前ではただの素材だが。

 ミノタウロスの肉は上質な牛肉風の味わい、殺人熊の肉は鎧熊と同等の味わいだが体が更にデカいので取れる肉が多い。サイクロプスは体はデカいが残念ながら食肉ではなく、素材としての価値だ。

 勿論、もれなく倒して収納する。 

 

 22階層も半ばを過ぎ、臭い漏れ防止に≪結界≫を張りつつ昼食を食べていた時(ちなみに、昼食は、狩ったばかりのミノタウロス肉の味見だ)、5人の冒険者が近づいてきた。

 《結界》は、ダンジョン内なので音は通すように張っている。

 まあ、≪探知≫でとっくに気が付いてはいたが、悪意も敵意もないので、気にせず放っておいた。


「おお、こんなところで肉を焼いて食ってるとは、なかなか剛毅だな。」

 声を掛けてきた男は、昨日ギルドで、女騎士(風)と言い合いをしていたハゲ・・・ではなく、21歳の冒険者だ。

「ああ、どうも。結界を張っているので臭いは漏れませんので。ええと、そういう貴方は、21歳の方でしたね。」

とちょっとかます。

「「「「ぶっ!」」」」

と、周りの4人が吹き出す。


 21歳が戦士、他の4人が剣士の男、魔術師の男女、斥候の女という組み合わせだ。

 レベルが、20~25前後とそこそこ高い。

「なんだ、昨日見てたのか。いや、恥ずかしいところ見られたな。女性の1人も口説いてみろって、こいつ等がけしかけるから、慣れないことをやっちまった・・・。」

 若干顔を赤くしながら答える。

「結局あの後どうなったんですかね?途中で出てしまったもので。」

「どうもなってないな。あの女が、もう話しかけるな、ってなことを言って、出てったよ。」


どうやら、酔っ払って絡む癖のあるチンピラ冒険者って訳ではなさそうだ。

「あの女性が、過剰反応したってところかな?」

と、感じたこと言ってみる。

「いやぁ、凄い勢いで罵倒されちゃったからな。見たところいいとこのお嬢さんって感じだったから、声をかけるにしても相手を見なきゃダメだな。」


「そうですね。え~、食べます?」

 さっきから後ろにいる4人の肉に向ける眼光が・・・。

「「「「いいの(か)!!?」」」」

 勢いも恐い。でもほら、レティも顔をしかめないの。肉は大量に有るでしょ。


「構いませんが、この辺の階層ならいくらでも調達できるのでは?」

「いや、マジックバッグの容量が小さくて、嵩張らず換金価値が高い素材優先なんだ。倒したその場で食うのも危険だしな。ああ、名乗り遅れたが、俺はダンという。ランクBだ。後ろの4人と、パーティーを組んでいる。肉の対価は、魔法石でいいだろうか?」

「不要ですよ。さっきも言いましたがいくらでも調達できるので。」

「それではお言葉に甘えるとする。今後何かあれば、力になるぜ。」


 《結界》を全員が入れるように大きめに張り直す。

 肉を焼き、手渡しながら他の4人の紹介を受けた。

 ・剣士  -ガイ   ランクB 26歳 茶髪、長身細マッチョ

 ・魔術師男-ローディ ランクB 27歳 黒髪、中肉中背

 ・魔術師女-ナディア ランクC 24歳 金髪、細身中背

 ・斥候  -ヨナ   ランクC 24歳 茶髪、細見小柄


 特にパーティー名はつけておらず、意外にも一番若いダンがリーダー扱いとのこと。

 それぞれガイ&ナディア、ローディ&ヨナが夫婦で、ダンが1人身なので、昨日のけしかけになったらしい。

 とりあえず、こちらも2人の名前とランクだけ伝えた。


「いや~、旨いな!焼いて塩だけでこれかっ!」

と、剣士のガイが感動している。他の面子も同意とばかりに満足そうに頷いている。

「ええ、ミノタウロスは、今日初めて狩って味見中だったんですが、期待以上の味でした。」

と答えながら、次々と肉を焼いてやる。

 いやだからレティさん?そんな顔しないの。

「レティ、いっぱいあるからどんどん食べてよ。」

「はい!」

 よかった。いい笑顔になった。肉に関してはチョロい。


 食べ終えて、休憩しながら雑談中、ああとうとう近寄ってきたな。

 “地図”上でモンスターに追われた冒険者が近づいてくるのが見えていた。当然レティにも見えているが、俺が言わない以上、余計なことはしない。

 冒険者は自己責任が原則なので、敢えて手出しはしなかったんだが・・・。


 ドスンドスンという振動が近づいてきたところで、全員が異変に気が付いた。

「グアァァァァー。」

 大きな咆哮と共に殺人熊が6頭、追われている冒険者が4人。昨日ダンを罵倒していたお嬢様だ。

 護衛らしき1名が重傷っぽい。他2名も血まみれだな。お嬢様を守りつつ、煙玉で煙幕を張って何とかここまで逃げてきたんだろう。見たところ魔法職がいないみたいなので、剣の通りにくい殺人熊複数は相性が悪いだろうな。


 あ、目が合った。護衛が叫ぶ。

「おいっ、そこの冒険者!早く助けろ!!」

 おいおい、と思いながらダンを見ると、

「典型的な‘なすりつけ’だな。」

と、こちらの意図を理解して答えた。そして、

「いやぁ、昨日そこのお嬢様に[もう話しかけるな]って言われたもんでね。」

と肩をすくめながら答える。ダンのパーティーも落ち着いたものだ。


「そんなことを言っている場合か!このままだとお嬢様が危険だ!!」

と言って、近づいてきたが、《結界》に弾かれて転倒する。

「な、なんだこれは!?」


 まあ、目の前で見殺しにもできないか。ダンに向かって、

「どうします?そちらで何頭かやります?」

と聞くと、ダンも仕方ねえなと呟きながら、

「3頭なら危なくはないな。人数が合わないが、残りはそっちでいいか?実力的には問題ないだろう?」

「ええ、いいですよ。俺達は右側で。じゃあ《結界》を消して、あっちの4人に掛け直します。」

 俺は、そう言うと《結界》を掛け直し、右側3頭の殺人熊に≪麻痺≫を掛けた。

「レティ、よろしく。」

「承知しました。」

と、動きの止まった3頭に近寄りスパッ、スパッ、スパッっと首を刎ねた。


「「なっ!」」

と、護衛達が驚愕の表情を浮かべている。


 一方、ダンのパーティーを見ると、既に魔術師によって足を氷漬けにされた殺人熊の目にヨナが短剣を突き刺し、ガイが心臓を一突き、ダンが首を刎ねて3頭を始末していた。

 ランク以上の武器と実力と練度だな。


「俺たちは収納しましたが、そちらは魔法石待ちですか?」

とダンに聞いてみる。

「そうだな。この大きさだと解体しても持っていけないしな。」


「待て、それはそもそも我々の獲物だぞ!!」

と護衛が頓珍漢なこと言い始める。

 俺とダンが顔を見合わせて、ダンにどうぞ、と手で示す。

「まず、お前たちがやったのは、魔物を引き連れて他の冒険者を巻き込む典型的な‘なすりつけ’だ!これはダンジョン内での冒険者殺しと並んで最大の禁忌だ。分かってて言ってんのか?

 第一、そっちの重症者の手当てと、お嬢様の身支度が先だろ。」

 あ~、言っちゃうのねそれ。お嬢さま、顔真っ赤にしちゃったよ。相当恐怖が大きかったのか、ちょっと粗相を・・・ね。


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