11.宿
服を購入した後、ギルドで紹介してもらった宿へ向かう。多少高くても風呂のある宿を紹介してもらった。毎日≪浄化≫で綺麗にしているとはいえ、やはり風呂に、お湯に浸かりたいんだ。賊から頂戴した金をありがたく使わせてもらおう。
到着した宿は、<竜のねぐら>という名前で、華美ではないが、落ち着いた雰囲気で高級感が漂っている。
「このような高そうなところに私なんかがご一緒してもいいのでしょうか?」
と、申し訳なさそうな顔で聞いてくる。
「私なんか、とか言わないでくれ!レティは大事なパートナーとして今後も一緒に旅をするんだ。そんなにじぶんを卑下するな。」
「だ、大事な・・・、ありがとうございます。」
少し目に涙を浮かべながら言う。
「いらっしゃいませ。ご宿泊、お2人様でしょうか?」
中に入ると、受付の女性が笑顔で挨拶をしてくる。内装も落ち着いた雰囲気で好感が持てる。
「2人1部屋で、とりあえず2日間泊まりたいんだが。ギルドで、部屋に風呂があると聞いてきたんだ。」
「浴室付きは、ちょうど1部屋空きがございます。少々お値段が張りまして、朝食付きでお1人様1泊25000ゴルドとなっておりますが、よろしいでしょうか?」
さすがに安宿と比べるとお高いが、まずは風呂だ。
「それで構わない。先払いか?」
「はい、お先に頂戴しております。」
「では、これで。」
と言って、大銀貨10枚を渡す。
「確かに頂戴いたしました。お部屋は、1階の右側通路の一番奥の部屋となります。これが鍵になります。お出かけの際は、鍵をこちらにお預け頂いても、お持ち頂いても構いませんが、紛失した場合、別途鍵の取り換え費用をお支払い頂くことになりますのでご注意ください。朝食は、そちらの食堂で提供しておりますので、鍵をお見せください。夕食は料金に含まれませんので、食堂で食べられる場合は、その場で別途お支払いください。」
「了解した。では、世話になる。」
鍵を受け取って部屋に向かおうと思ったが、腹も減ったし、食堂で食べてからにするか。それ程混み合ってないしちょうどいい時間だ。
「レティ、お腹空いただろう。先にこの食堂で食べていこう。」
と、返事も待たずに手を握って食堂へ引っ張っていく。
「ご・・、ロバート様、て、て、手を・・・。」
なんか言ってるが、気にせず席に着かせる。
オーク肉のステーキと焼き野菜、フルーツジュースを2人前ずつ注文し、レティに話す。
「明日は、街を見物しつつ、色々と買い物をしよう。まずは、武器屋に行って、レティの武器、防具、ローブなんかを物色だな。」
「私の武器は、頂いた片手剣で十分です。森狼を倒した時も使いやすかったですし。」
森の中で、何頭かは、レティに倒してもらった。特に問題なく戦ってたので、今の剣でもいいかもしれないけど、
「まあ、もっといいものがあるかもしれないし、見るだけでも可能性が広がるでしょ。」
「お待たせしました。」
と料理が届いた。
「じゃあ食べよう。そういえば、勝手に決めたけど、お酒じゃなくて良かった?レティの種族だと成人は何歳なの?」
「16歳で成人ですので、飲めない訳ではありませんが、それ程好んでいませんので、ジュースでよかったです。」
オークのステーキを食べると、肉自体も美味いが、味付けが絶品だ。レティを見るともうほぼ食べ終わっている。
「もう1枚ずつ頼もうか。」
と、おかわりを注文したのだった。
食事を終え、部屋に入ると、まずは風呂だと早速浴室でお湯を張る。この宿では魔法石を使用してお湯を供給するタイプの魔導具を使っている。
「レティ、先に入らしてもらうよ。」
と、お湯が汚れるのでまず体に≪浄化≫をかけ、湯船に浸かる。
はぁ~、いい気持だ。しかし、王都を出て、まだ数日だというのに、色々とあったなぁ。
でも、今のところレティと出会えたことが一番大きいかな・・・。
そうだ!!野営用の小屋を改造して、風呂を作ろう。別に魔法石を使わなくても、制御すれば初歩の水魔法と火魔法でお湯は作れるし、大した魔力じゃない。なんで、もっと早く思いつかなかったんだ。これで毎日風呂に入れる、フフフ・・・。
カチャッ。んっ?
「失礼します。」
「レ、レティ、ど、ど、どうした!?」
なんだ、一糸まとわぬ姿でレティが浴室に入ってきた。
「お体を洗うお手伝いをと思いまして。」
ええっー。
「ひ、1人で大丈夫というか、≪浄化≫したから敢えて体を洗う必要もないんだけど。」
と言うと、ハッとした表情をした後、みるみるうちに顔が真っ赤になっていく。
「し、し、失礼しました。すぐに出ていきます。」
「ああ、待って、その恰好で戻ったら寒いよ。はい、≪浄化≫。湯船は広いからもう一緒に入って温まって。」
って、テンパって俺は何言ってんだ?
「分かりました。」
と、湯船に入ってくる。向かい合うと足が伸ばせないし、目のやり場に困るので、俺の足の間にこちらに背を向ける形で座ってもらった。やばい、これ絶対俺も顔真っ赤だ。胸の鼓動が早鐘を打つようになってる。しかし、
「綺麗だ・・・。」
「えっ?」
やば、思わず口に出た。正直すぎるだろ俺。でも口に出たもんは仕方ない。
「いや、改めて綺麗だなと、髪も、背中も・・・。」
「はぅ~。」
うなじも真っ赤に染まっていく。照れてる顔見たいなとか考えながら浸かっているうちに、少し落ち着いてきた。
「こんなこと聞くのもなんなんだけど、レティは俺に裸を見られても恥ずかしくないの?」
と、何気無く聞いてしまった。
「っ!!・・・。恥ずかしくない訳無いじゃないですか!他の誰にもこんなことしません!お慕いするロバート様だけ・・・あっ!!」
これまで以上に全身真っ赤になってる。
興奮したのか、こんなに感情を露にしたのは初めてだった。ああ、ものすごくいとおしく思って、思わず後ろから抱き締めた。
「ありがとう。そんなに想ってくれて。」
ビクッと、レティの全身が震える。
「わ、私はロバート様のど、奴隷なのですから当然です。」
「えっ、奴隷じゃなかったら違ってたの?」
「い、いえ、す、すみません。奴隷であってもなくても関係ありませんでした。」
焦って必死に言い直してくる。
「ごめん。意地悪言ったね。俺もレティを1人の女性として好きだ。」




