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107.迎え

 拠点の屋敷に戻り、数日後、エリックから≪式神≫にて襲撃者達の処分が決まったと連絡来た。

 国外追放というのは軽すぎかと思ったが、面倒臭さを考えるとそんなものかと思い、続きを読んで納得した。『公爵家の関係者は、今後一切我が領内への立入りを禁ずる』というのは、今後ロバートに絡まない様に気を遣ってくれたのだと理解したのだ。

 身内同士でも平気で陥れることが珍しくない貴族社会で、つくづく自分は肉親に恵まれていると感謝するのだった。



 その後、偶に食材の調達(ダンジョン含む)に出かける他は、基本的にはゆっくりと家族で過ごし、半年が経過した。



「それじゃあ、エルザ達を迎えに行ってくるよ。」

 エルザから連絡が届き、やっとエルザと我が子を迎えに行けることになった。

 今回は、ロバートだけがシルフィーに乗せてもらい、霊山へ向かう。

「お気をつけて、旦那様。それと、エルザとは長い間離れていたのですから、よくよく労ってあげて下さい。私ではここまでの期間、旦那様と離れ離れになるなど耐えられる気がしませんので。エルザも心待ちにしているでしょう。」


「うん。分かってるよ。この子達は、皆で世話することができたけど、エルザは1人で頑張ったんだもんな。」

 ロバートは、ガルシアとスウェシアの頭を撫でながら応える。

「父様は、もう1人のお母様を迎えに行ってくるよ。お前達の弟も連れてくるからな。」

「「かあさまもうひとり?おとうと?」」

「いきなりじゃ理解できないか。レティ、分かる範囲で教えておいてね。そんなに日数掛からないと思うから。」

「承知しました。行ってらっしゃいませ。」

「「とうさまー、いってらっしゃーい。しるふぃーもいってらっしゃーい。」」


 風竜王であるシルフィーも、結局ずっと居着いており、子供達とも遊んでいるからすっかり慣れてたものである。

「おお、行ってくるぞ。」

 ロバートが、シルフィーの背に乗り、下を見て手を振ると、シルフィーが飛び立つ。

 レティと子供達も手を振って見送った。



 シルフィーの飛行速度からすれば、霊山までは一飛びである。

 降り立つと、古龍と、龍姿のエルザ、そして小さな龍が並んで佇んでいた。

「キャウ~。」

 ロバートを見ると、本能的にその強さを感じ取ったのか、小さな龍が少し怯えた様子を見せる。

「あらあら、大丈夫よ。貴方のお父様よ。」

「キャウ?」

 エルザはそう言うと、人化し、ロバートに抱きついた。ロバートもごく自然に両手を回し、抱きしめる。

「旦那様っ!!会いたかった・・・。」

「エルザ・・・」

 ロバートも、久々の抱擁で感極まったのか、言葉が出ない。


「キュウキュウ。」

 エルザの様子に驚いたのか、心配そうに鳴く。

「ふふっ、大丈夫よ。さあ、旦那様、私達の子よ。」

 エルザが、ロバートの手を引っ張って、小さな龍の前に連れていく。

「名前は、まだ?」

 ロバートがエルザに聞く。

「ええ、旦那様から教えるのがいいと思って。」


「そうか、エルザと一緒に考えた君の名前は、エルランドだ。」

と、小さな龍に向けて話しかける。

「キュウ?」

 よく分かってないようではあるが、ロバートの態度に何かを感じたのか、顔を近づけてフンフンと匂いを嗅ぐ。

 ロバートは、怯えさせない様に、ゆっくりと手を喉元に伸ばし、ゆっくりと撫でる。


「キュ~ウ。」

 エルランドは気持ちよさそうに目を閉じてうっとりしている。

 その様子を見て、ロバートは首の後ろも撫で始めた。

「キュウキュウッ。」

 エルランドは、嬉しそうにロバートの顔を舐め始めた。

「あら、もうなれちゃったみたいね。流石親子といったところかしら。それならもう人型にならせる?」

 古龍がエルザに向かってそう言うと、

「そうね、手伝って貰ってもいい?」

「ええ、勿論。」

 古龍とエルザが、それぞれエルランドの片手を持ち、何か聞き取れない呪文を発する。


「キュウウウウウ。」

 エルランドが、驚いたような声を発すると、スポッと人化した赤ちゃんが、ロバートの腕の中に収まった。

 全体的な顔つきは、エルザ似だが、目元はロバートにそっくりであり、ロバートの顔をじっと見た後、甘えるように胸に顔を埋めてきた。

 ロバートもその様子にメロメロになり、力が入りすぎないように気をつけながら、しっかりと抱きしめた。


「このくらいだと、人族とあまり成長度合いが変わらないから、慣れれば少しづつ喋れるようになるでしょうね。一度人化する感覚を知ってしまえば、それも慣れで自在に出来るようになるわ。」

 古龍からそう聞かされたロバートは、エルランドを高い高いしながら、

「君の名前はエルランドだ。そして俺がお父さんだよ。」

と言うと、理解出来ているのかいないのか、嬉しそうにキャッキャと笑うのだった。



 その後、グリフォンクイーンの元を訪れ、事情を説明して羽根を貰えないか尋ねると、どうせ頻繁に生え変わるものだからと快く譲ってくれた。


 帰りは、人化した姿で、3人がシルフィーの背に乗り移動した。エルランドは、その間ずっとロバートに抱っこされたまま気持ちよさそうに眠っていた。エルザが、私もかまってっと拗ねながら、ロバートの後ろからお腹に手を回して抱きつき、頬を背中にくっつけて出産前からこれまでのコトを、大変だったのよと言いながら話し続けた。


「頑張ったね。ホントは生まれる前から一緒にいたかったけど、また今日から皆で協力して楽しく暮らしていこう。」

「そうね。でも二人きりの時間も作ってくれるんでしょ?」

「そうだね。エルザがいなくて、レティがずっと自分一人だけが・・・って凄く気にしてるから、しばらく夜はエルザと過ごしてと言われてるよ。」

「毎晩だと私の体がもたない!ってそうじゃなくて、龍の事情なんだから、そこまでレティが気にすることじゃないし、これまで通りでいいのに。」

「それだけエルザのことも大事に思ってるんだよ。まあ、帰ってから3人で話そう。」



 屋敷にたどり着くと、レティと子供達が迎えに出てきた。

「「だあれ?」」

「こっちがもうひとりの母様で、エルザだ。そして、この子がお前達の弟のエルランドだ。家族だから仲良くするんだよ。」

「「かぞく!!なかよくする!」」

「よし、いい子だ。エルランドも仲良くするんだぞ。」

「だぁ」

 分かったと言うように応え、エルランドがガルシア達に手を伸ばす。ガルシアとスウェシアも、エルランドの片手をそれぞれ握り、

「「らんどちゃん、かわいい。あそぼう。」」

「よし、中に入って落ち着くか。子供達も中で遊ばせればいいだろう。」


「はい、旦那様。エルザ、お帰りなさい。お疲れ様でした。」

と、レティが、エルザと抱き合う。

「ただいま。こちらこそ、双子で大変なのに手伝えなくて。」

 このままだと長くなりそうなので、ロバートが、さあ中に入ろうと、皆を屋敷に誘導し、仲良く屋敷に入った。



 こうして、ロバート一家は、しばらく子育てに勤しむのだった。

これにて、第四章は終了です。

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[一言] 子供達が健やかに育ちます様に。
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