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105.代官屋敷へ

 ちなみに、騎士となれば、この町での上司は代官である子爵であるが、子爵の家来ではなく、領主の直臣である。ロバートに見覚えが無くても、彼の方はロバートを見たことはあるかもしれない。


「ええ、よろしくお願いします。俺の方からも父に連絡をいれておきます。あと、ここにはいませんが、もう1人騎士団の副団長と名告ったニクラウスという者がいます。彼はそれなりに分別があるようには見えましたよ。」

「承知しました。その者は現行犯ではないので、丁重に扱いましょう。」

と、不敵な笑みを向ける。


「それで、俺達の事情聴取はいつやります?」

「事前の状況は、子爵へ頂いたご連絡で分かってますし、さっきのは現行犯ですから正直聴取することもありませんが、明日のお昼前でどうですか?実は、折角なので、子爵が食事をご一緒したいと申しております。代官屋敷で形ばかりになりますが、聴取をすることにしますので、お越し頂けますか?」


 ロバートは少し躊躇したが、決して自分のせいではない(と思っている)が、こうして手間をかけさせたし、無下にもできないと判断した。

「食事は、ここにいる全員一緒で構わないですか?」

「勿論、そう言伝されておりますので。子爵の他は、おそらく私が同席するだけですので、特に面倒臭いことにはならないかと。」

「それなら御馳走になりましょう。」


「ご快諾頂きまして感謝致します。それでは明日、お待ちしております。」

「分かりました。あ、ちょっと待ってください。今、出動した領兵は何人ですか?」

「私含め、8名です。」

「え~と、足りるな。これ持っていって下さい。この程度ならやましいものではないでしょう。」


 ロバートは、そう言って、程よく焼けた串を人数分差し出す。1つあたりのボリュームが凄いので、1人1本でもちょっと食べる分には充分だろう。しかも今日の肉はオークキングであり、あまり頻繁に市場には出回らないものだ。脂が滴り、食欲をそそる匂いがする。

「これはいい匂いがしますね。兵士達も喜ぶでしょう。遠慮なく頂きます。」


 串をホクホク顔で受け取り、捕縛された者達が気絶したまま詰め込まれた護送用の馬車に向かって去っていった。

 彼の名誉のために言えば、ロバートが領主の息子と知っているから素直に受け取ったのであって、誰からでもこういった物を受け取るわけではない。


「まあ、この件の冒険者ギルドへの対応も、子爵に丸投げすればいいか。」

「よろしいのですか?」

「ギルドが、彼等のことを代官に報告していないのなら、ギルド側の落度だから、寧ろ子爵がギルドに貸しを作れるよ。」

「旦那様、また悪い笑顔になってますよ。」

「フフフ、よし、邪魔が入ったけど、昼食の続きをしよう。」

 そう言って、また新しい串を焼き、貝なども乗せ、昼食を楽しんだのだった。



 翌朝、まだ早い時間帯に目を覚ましたロバートが、周囲を気にすると、前日の昼食後も砂浜で遊び続けた子供達は、疲れ果てていたので、まだぐっすり眠っている気配がする。

 また、昨晩も2人でたっぷり仲良くなったので、ロバートの胸に顔を埋めてぐったりとしているレティの寝姿も艶っぽい。


ロバートは、そのサラサラの銀髪を優しく指で梳いてやると、レティが身動ぐ。

「起こしちゃった?」

 レティは、答えず、ロバートの体を両腕でギュッと抱きしめ、胸に顔を擦り付けてくる。寝ぼけていると、こうして甘えた行動をとるのが非常に可愛い。そして、可愛いあまりに色々とその体のあちらこちらにちょっかいを出し、結局我慢できず、更にもう一戦致すことになった。



 ゆっくりと軽めの朝食をとった後は、庭先で鍛練をして汗を流し、風呂に入って身綺麗にしてから代官屋敷に向かった。

 到着すると、すんなり案内され、応接室で昨日の隊長-名前はアーロンとのこと-からほぼ形ばかりの事情聴取を受けた。

 その後、食堂に案内され、昨日の話の通り、子爵とアーロンとの食事が始まった。ちゃんと子供用のメニューも用意されていたので、収納している食事は出さなかった。特に礼儀など不要ですよと子爵から言われたので、子供達もおとなしく食べ始めている。


「まずは、ご無沙汰しております。」

 ロバートが切り出すが、子爵とは、息子を救出した一件以来の再会である。

「その節は、愚息達が大変ご迷惑をお掛けし、申し訳ございませんでした。」

 子爵が、子息のやらかしに巻き込んでしまったことを謝罪する。


「いえ、あれは、あのギルマスのやり方に問題があったでしょう。まあ、そのおかげで間に合ったとも言えるのですが。」

「確かにそうなんですが、問題は問題として別に考えなければなりません。そうは言いましても、ギルドのことなので、領都ギルドの統括のゴルドラン殿に報告するに留め、処分はギルドに任せました。結局、次のギルマスもギルド本部が任命してしまいましたが。やはり、この町の冒険者ギルドは、ダンジョンも近く旨味が多いですから、本部も息のかかった者を置きたいのでしょうね。」


「ギルマスからは逆恨みされているようですけど。」

 ロバートが呆れ気味にこぼすと、

「結局ご迷惑を掛けてしまいましたか。」

「いえ、統括からは釘を刺されているようなので、まあ無茶なことは言ってこないでしょう。それより御子息は如何されました?」

 ロバートが助けたマイケルのことを聞く。


「あれで性根を叩き直されたのか、元々の得意分野である学問を活かせる文官見習いとなっております。ここの代官は世襲ではありませんから、領都へ送り出しました。右腕一本と高い代償でしたが、利き腕が左だったのが不幸中の幸いでしたね。」

 ロバートは、エリックに預けたエリクサーで治せるとは思ったものの、一人だけ特別扱いすればキリが無くなる。それに、これについては自分の考えることではないとすぐ切り替える。


「お嬢さんもいましたよね。」

「ええ、あれは先日嫁いでいきました。悪い娘ではないのですが、考えが甘かったので、貴族に嫁ぐ心構えや義務、責任など叩き込み直しました。幸い嫁ぎ先が領内で、当人同士の相性も良いようで、喜んで嫁いでいきました。」

「そうですか、それは良かったですね。・・・ところで、彼らの処遇はどうなりそうですか?」

 

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