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104.そうなるでしょうね。

 ロバートがギルドを出て、≪探知≫で確認すると、

「凄いよレティ、ニクラウス以外は、さっきの連中、敵意と害意だらけだよ。」

「はい、確認しました。旦那様が話し終える頃には、後ろに立っていた者達も中々の視線を送ってましたよ。旦那様もそこそこ煽ってましたから、そうなるでしょうね。」

「面倒だけど、隙を見せて片付けるかな。」

「では、買い出しを済ませてから、人気のない砂浜で焼肉をするのは如何でしょう?」

「いいね!レティの食欲がかなり紛れている気がするけど・・・、人の少ないところにいけば、簡単に手を出してくれるだろうしね。あそこまで言ってあげたんだから、ここから先は容赦しない・・・とは言っても殺すと面倒だから、子爵に連絡して、手勢に隠れて見ていてもらおう。」


 ロバートは、≪式神≫を取り出し、経緯を書いて代官のヨークシャー子爵に送った。子供達はともかく代官本人は、実直で有能な官僚だ。しっかり対応してくれるだろう。


 その後、常に警戒はしつつも、市場に行き、目につく物から買い漁る。

 この町で調達するのは勿論海産物が中心だ。サラ達にもそれぞれ使用者固定の収納バッグを渡しているが、まだ年若い彼女達が人前で使うと厄介事になる為、まとめてレティのバッグに入れている。


「そう言えば、塩がなくなりますので、手に入れていきましょう。」

「申し訳ございません。私の不注意です。」

 レティの指摘に、交代制で今食材の管理を担当しているセラが謝る。

「いいよ、いいよ。頻繁に買い出しに来てないし、そういうこともあるよ。」


 ロバートは気にしない様にとフォローする。実は、ロバートの収納には、塩をはじめとして大量に食材・調味料・調理済みの料理等が入っているが、これは、急な遠出等いざという時の為のもので、屋敷の在庫管理とは別にしていた。


 食材費管理担当のサラが大量注文すると、店員が奥に在庫確認に走る。最初はお金を使うことに遠慮していたサラ達も、予算を決め、やり繰りをさせることで、使い方が大胆になってきている。どうせ時間停止で保存するので、大量に買っても劣化することはないからだ。

 ホクホク顔の店主が出てきたので、サラが価格交渉に入る。別に言い値で買ってもいいが、これもサラ達の勉強の為だ。大量購入に見合う値引きを受け、購入した。

 店主が、大量に入る収納バッグを羨ましそうに見るのもいつもの光景だ。


 そして、楽しみは歩きながらの買い食いである。気楽に目につく美味しそうなものを買って、マナーを気にせず食べるのがいいのだ。

 子供達は、甘いお菓子や果物を楽しむ。人込みでもグズらず、ニコニコと食べており、それを愛おし気に見るレティの笑顔が神々しい。


 この幸せな空気を乱すお邪魔虫はといえば、2人が建物の陰からこちらを監視している。他の者は宿で待機しているようだ。害意を持つ人数が増えているのは、ギルドに来ておらず待機していた者達が話を聞いたのだろう。

 買い出しもほぼ終了し、昼を少し回ったので、砂浜に向かうことにした。



 砂浜に着くと、なるべく人の目から隠れるような場所を探し、昼食の準備と、不心得者を迎え撃つ用意を整える。

 砂から土魔法で竈と食材を置くテーブルを作り、金網と焼き串を取り出して準備を進める。女性陣が切り分けた肉と野菜を次々に焼き串に刺し並べていく。竈に火をおこし、金網を上に置いて油を塗る。


 子供達は、目の届く範囲で砂遊び中だ。砂がすぐ崩れるので、レティが水で濡らして遊びやすくしてやる。

 監視役は、1人が宿の方に向かったので、その内仲間を引き連れてやってくるだろう。


 待ってても仕方ないので、串を金網に置き、焼き始めると、害意を持った集団が動き始めた。何故かニクラウスだけが1人で別方向へ歩いている。何か用があるのか、追い払われたのかは分からないが、他の連中を止める役割は期待でき無さそうだ。


「ぼちぼち近づいて来たよ。帝国は、魔法の価値が高いから、彼らも魔法を使ってくるだろうね。サラ、君が彼らの魔法を防いでごらん。砂がかかると困るから、食べ物と子供達には俺が≪結界≫を掛けるから安心して防ぐことに集中して。まだ対人戦闘はしたこと無かったから、攻撃までは無理にしなくていいよ。やりたいなら練習台に丁度いいから止めないけどね。」

「わ、分かりました。まずは、防ぐことに集中します。」


 しばらくして害意の塊が、手前の小さな林の中で停止する。魔法は十分ロバート達に届く距離だ。

 サラは、若干緊張気味だが、気が付いていない振りは出来ているだろう。

 

 そして、魔法の詠唱を行う気配がした後、人数分の≪火球≫が一斉に飛んできた。

 詠唱を始めた時点で、サラに小声で「来るよ」と伝えていたので、慌てることなくサラが≪土壁≫を展開した。ロバートが教えているので、当然無詠唱だ。

 足元の砂を利用した為、土よりも強度は劣るが、≪火球≫相手であれば十分だ。寧ろ、砂が軽いことにより、展開が早かった。


 全て防ぎ切った為、相手方から驚愕が感じられつつも、気を取り直したのか第2弾の≪火球≫が発せられたが、再度、≪土壁≫で防ぐ。砂が飛び散るが、ロバートの≪結界≫のお陰で、食材含めて誰も砂を被っていない。

 

「セラも力を揮いたいかもしれないけど、人数もいるし、俺がチャチャッとやってしまうよ。≪風刃≫、≪雷撃≫」

 ロバートは、正確に伯爵に向けて≪風刃≫を放ち、その他の者は≪雷撃≫で気絶させた。捕縛するだけなら≪麻痺≫でも良かったが、攻撃してきた以上、痛みを味あわせたかった。

 特に、伯爵は、レティに対し許しがたい暴言を吐いたので、両腕の肘から先を切り落とした。


「ギャー!!!!!う、うでーーーーーーーーー!」

 その叫び声が合図となったかのように、領兵がどこからともなく湧き出て、彼らを次々と捕縛していく。


 隊長格の騎士がゆっくりと近寄ってきて、

「通報ありがとうございました。ヨークシャー子爵からお話は伺っております。最終的にはご領主様に判断を仰ぐ案件ですので、結果が出るまで時間がかかると思いますが。」

と、敬意を払いながら言う。

 どうやらロバートの正体を知っているようだ。

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