表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/110

1.覚醒

初投稿です。

勢いで序章を書きました。

拙い文章ですが、どうぞよろしくお願い致します。

 チェスター王国第三王女サンドラが主催する王国高等学院の卒業パーティー会場に杖を突いた男がゆっくり入ってきた。

 「遅いわよ!何やってたのよ。」

 サンドラは睨みつけながら叫ぶ。が、一呼吸おいて、


 「まあ、いいわ。ライアン・エドワーズ、あなたとの婚約は破棄します。」

 

 ざわっと周囲の目が一気に二人に集まる。

 ライアンは、狼狽えながらも、問い返す。

 「な、何故ですかっ? り、理由をお聞きしても?」


 「はーっ、言わないと分からない?あなたのレベルが0で、いっこうに上がらないからよ。レベルが上がらないからスキルも取得できない。卒業後、公爵家を興す私の相手にふさわしくないでしょう?おまけに賊に襲われて右足を失うなんて・・・。その他にも理由が必要?

 まあでも、あなたがどうしても私の側にいたいというのであれば、執事にでもしてあげてもいいのよ。」


 「・・・」

 何故か焦点の合わない目をしてぼーと立ち尽くすライアンにサンドラが苛立つ。

 「聞いているのっ!?」


 はっとした表情で焦点の戻った目でサンドラを見返し、

 「この婚約破棄は、陛下は許可なされたのでしょうか?」


 急に冷静な態度になったライアンに驚きつつも

 「も、勿論父上もお認めになってるわ。」

 と、咄嗟に嘘をついた。


 「それでは、チェスター王国第三王女サンドラ殿下と、私ことエドワーズ辺境伯長男ライアンとの婚約は、王家側からの通告により破棄とのこと、確かに承りました。

 私のようなものがいても空気が悪くなるでしょうから、これにて退出させて頂きます。」

 と、やたら丁寧に事実確認をするかのようにはっきりとした口調で伝え、来た時と同じようにゆっくりと出て行った。


 (おかしい。いつものライアンなら泣きつくか、狼狽えて取り縋ってくるはずなのに・・・)

 サンドラは、意外なライアンの態度に驚いたため、そのまま見送ってしまった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ライアンは、辺境伯家の馬車で屋敷に向かいながらこれまでのことを思い返していた。


 8歳のときのパーティーで、第三王女に見初められ、強引に婚約者にさせられた。

 嫡男を婿に出せないと反対していた両親も、王と王妃に頭を下げられれば、首を縦に振らざるをえなかった。最初は純粋に好意を示していた王女は、徐々に態度がきつくなり、そのうち会えば罵声を浴びせるようになった。

 原因は、レベルが0から全く上がらなかったことだろう。低レベル帯では周囲の貴族子弟がサクサクレベルを上げているのに、魔法に武術、勉学と人一倍厳しい鍛錬を休むことなく繰り返しても、ライアンのレベルは何故か上がらなかった。もっともレベルは0でも、威力が低いながらも魔法は使えるし、武術はトップクラスだったが。

 しかし、毎日のように罵倒されても、結局ライアンはサンドラの側から10年間離れられなかった。

 理由は先ほど判明したが。

 

 そして卒業を控えた数日前、狩りに出かけた時、盗賊に襲撃され、右足を失う大怪我を負った。

 卒業パーティーなど欠席するつもりだったが、王女から絶対に出席しろと伝言が届き、気遣いのなさにイラつきながらも出かけたところ、婚約破棄を言い渡された。


 しかし、その婚約破棄理由を聞かされ、流石にブチッとキレかけた瞬間、頭の中で声がした。

 『記憶の封印が解かれました。レベル上昇の封印が解かれました。今までの経験値によりレベルアップします。レベル29になりました。』

 頭の中に、全く別の国で暮らしていた男の記憶が溢れるように流れ込んできた。また、レベルアップにより取得したスキルの内容がはっきりと知覚できた。


 (よくわからないが、キレかけたからか?)

 (レベル29といえば、近衛騎士団の騎士レベルじゃないか・・・)

 『18年間のレベル封印の代償として、レベル18倍のボーナスが入り、レベルが522になりました』

 (げっ!?マジか)

 その瞬間、頭の中が妙にすっきりし、サンドラへの想いが霧散した。


 「聞いているのっ!?」

 サンドラの声が聞こえた時、現実に引き戻され、冷静に状況を判断した。

 (とりあえずレベルの件は、置いておいて、婚約破棄をしてくれるって言ってるんだから、確定させてしまおう。そしてとっとと退出してしまおう。)

 そして、国王が許可しているとの言質をとり(おそらく嘘だろうが)、魔力を乗せた言葉を使い、婚約破棄を了承した宣言をし、即座に退出してきたわけである。


 「さて、今頃父上達も屋敷に帰ってきているだろうし、家族会議かな。ゆっくりしていると、王女がまた何か言ってくるかもしれないしな。」

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ