プロローグ
俺、山田さくらがフルダイブMMOをやり始めたのは高校2年の時だった。
理想の見た目でアバターを作成し世界を駆ける。
毎日が楽しく、学校へも次第に行かなくなり仮想世界へのめり込んでいった。
それから数年、立派な引き篭りニートへと進化した。
「さくらちゃん、そろそろアルバイトでもいいからしてくれないかしら」
朝食を取ろうとリビングへ上がると母ちゃんからいつもの小言を言われる。
「うるせぇ、ばばぁぶっ殺すぞ」
普段通りの返答を返す。
現実世界では仕事もしていない25歳パラサイトかもしれないが、
イルシオンオンライン(IO)では紳士で高身長マッチョな桜武さんなのだ。
とは言いつつも視線が痛すぎて、さっさと朝食を取り自室に戻る。
「何もする気が起きない。」
独り言を呟く。
昨日全てを捧げてきたIOが突然サービスを終了してしまったのだ。
問合せをしても、「ご愛顧ありがとうございました。」のテンプレートしか返ってこない状態だ。
同じトップクランに所属していたメンバーから自殺者が出るかもしれない。
俺と同等かそれ以上、捧げてきたやつらだった。
昨日、イライラが爆発し暴れたため壁に穴が開き
破れた漫画本が散乱した状態なので片付けた方がいいかもしれない。
アバターをコンバートし、夜通し他のMMOを試しに遊んでみた。
IOはフルダイブMMO界隈でかなりの悪評があるらしく、元トッププレイヤーである俺は
ログインした最初の町の時点で掲示板に晒されていた。有名人の辛い所である。
IOでは初心者は始まりの町で物乞いをするのがセオリーだったはず、解せぬ。
「まーた、イルシオンオンラインの奴が来たぞ」
「全員物乞いとか笑かすなよ」
IOのユーザーインターフェイスはかなり古く、
最近のシステム補助が充実したMMOとは操作性がかなり違っていた。
IOプレイヤー自慢のプレイヤースキルは、ほぼ役に立たない。
クソ雑魚と掲示板で言われていた事に我慢ができず反論していた所、
書き込み禁止を食らってしまった。糞が！
新しい安住の地を求めてMMOを物色し始める。
目ぼしいものは昨日試しでしまったので心惹かれるものがない。
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βテストプレイヤー募集
フルダイブ型MMOのβテストプレイヤー募集。
リアルを追求したMMOで202x年サービス開始予定。
安心、安全、1日1時間から可能！
90日生存出来た場合、運営スタッフとして採用も可！
※ゲーム内で死亡した場合、テスト終了となります。
時給3000円
期間90日
年齢18歳以上
※グロデスク、暴力的、性的な表現が含まれます。
ご承知の上、申込みください。
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MMO物色中に表示された広告を何気なく見ると
新作MMOのテストプレイヤー募集だった。
広告でテストプレイヤー募集とか初めて見るな。
時給もコンビニ等と比べてかなり高い。
アルバイトくらいした事はある。
出勤初日1時間23分でバックれたが・・・。
その事をIOでメンバーに話したら
「A級か、S級の俺からしたら雑魚だな」
と言われたのはいい思い出だ。
「よしっ」
テストプレイヤーのアルバイトでもして迷惑かけてる母ちゃんに何か買ってやるか。
昨日は暴れて警察まで来たしな・・・。
