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プロローグ「雑音(ノイズ)」

初めまして。葛葉燐太郎くずのはりんたろうと申します。


小説家になろうでは初作となります「一人ぼっちの君に精いっぱいの哀を。」という作品を執筆していきます。


人間の声が雑音に聞こえてしまう高校生、藤崎影子とクラスメイトを含めた多くの人間との交流を描いたちょっぴりホラー?な学園交流系ストーリーです。


更新頻度が比較的遅めかもしれませんが、隔週火曜日更新を目途に連載を続けていく予定ですので、是非ご愛読の方よろしくお願いします!!


 今日はいつも以上に頭痛が酷い。それもそのはずだ。ここは今日この日限りで、普段以上に「騒がしい」場所になるのだから。


 春、この季節に私はいい印象を抱いたことがない。何故ならこの時期にのみ行われる人生の大イベント、そう、若き者が数年単位で経験するであろう、「入学式」という途轍もなく目出度く、煩わしい行事があるからだ。多くの人間が各々希望だの夢だのを引っ提げて学校という表向きはとても立派な建物に集う。これほど私にとって苦痛なる空間はないだろう。私、藤崎影子ふじさきえいこにとって、見知らぬ人間の発する声は全て「雑音ノイズ」となって鼓膜を響かせるのである。いつからこうなってしまったかなど覚えていない。一つ確かなことは半年前、私の両親、私が心を許した数少ない存在を交通事故という有りがちで、且つ憫然たる方法で失ってしまうまではこんな事は起こり得なかった。私はあの事故以来、人との会話を断絶して生きてきた。兄弟姉妹もいなく、身寄りのない私を保護し、養育してくれた叔父さんを除いて、だ。叔父さんは私にとてもよくしてくれている。母の弟であり、自営業をしている叔父さんは、母の生前から私と母に多くの援助をしてくれていた。子供の頃から読書が好きだった私に、毎年誕生日になると好きな本を5冊まで買ってくれる恒例のプレゼントは、高校生になった後も続けてくれると約束してくれている。私の誕生日は6月1日。うむ、今からでも待ち遠しいものだ。そんな叔父さんは私の両親の死後、悲しみを通り越し、虚無の心情を抱いていた私の元を訪れ、「大学を卒業できる年齢になるまでの面倒を見よう」と言ってくれた。彼曰く、「君のお父さん、そして姉にはお世話になってきたからね。君が自立できるまでの生活を助けさせてほしいんだ。」とのことだ。その時知ったのだが、どうやら職業柄父親とも交流があったらしく、「これが二人へのせめてもの恩返しになれば」とその後ひっそりと続けていたこともあり、叔父さんは父とも深い仲だったということが判明した。


 ともあれ、この日から私の人生は明るい道へと進路変更することができたのだ。叔父さんの支援もあり、当初から目指していたこの霞里かすみざと高校に進学することも出来た。しかし、入学が決まる前、あるいは決まった後からだったかもしれないが、どうも人と話すことに辟易するようになってしまったのだ。元々自分からガツガツと話しかけに行くタイプではなかったが、会話すること自体はそつなくこなすことができたし、特別それに起因する出来事があったわけではない。恐らく両親の死がまだ心のどこかでしがらみとなっているのだろう。人との会話に怯えるようになってきていたのだ。そして気づいた時にはそれらの声は雑音と化していた。そんな状態なのに何故私が高校への進学を辞退しなかったのか。母が生前私に「貴女は強い子なの。どんな困難や障害が立ちふさがろうと逃げてはダメ。その瞬間貴女は弱虫になってしまうのよ」という言葉をよく私にかけてきた。それを思い出したからだ。そして、叔父さんも「辛いことがあったら僕に必ず相談すること。出来る限りのサポートはさせてくれ」という言葉にも後押しされた面はある。だから私は少しずつでも立ち向かうと決めたのだ。この雑音に満ち溢れた高校生活3年間を無事乗り切ってみせる。そして両親に「私は強い子だよ!」と胸を張って言える日が来るように。

プロローグ「雑音ノイズ」 終

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