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 ぶきっらぼうな声が響く。

「…お前ら誰だよ」


 一つ間を空けてからティーフィーはハッと気がつくようなそぶりをして、少年に歩み寄った。

「す、すみません。私たち旅の者ですが、貴方はこの島の方ですか?」

「はぁーー…。お前ら素人だな?、、なんか小せぇし。」

「「?」」

「私のことでしょ!」

 少年は大袈裟にため息を吐くと、握った拳で反応してきたメルガを無視して言葉を続けた。

「この辺の地理は割とよく知られてんだ。知ってたらこんな小せえ島に人がいないことくらい分かんだろ…。」

「そう、。」

「…だったら貴方は何故ここに?」

 苦笑いを浮かべるティーフィーを押し退けてステアは少年に向かってそう問うた。

 だが少年は答えることはせず、舌打ちをした後ぞっとするような目つきでステアを見つめ返すばかりだった。

「あの…?」

「お前さぁ、俺は誰だ?って聞いたんだぜ。まずはそっちから答えて貰おうか。」


 ステアがティーフィーを盗み見ると、丁度ステアを見つめていたティーフィーと目が合った。

「私から言うわ。ティ…フィリスよ。」

 ティーフィーは胸に手を当ててそう名乗った。

 ステアは、本名を言っていいものか迷ったが、今までのことを思い出して、その名前を口にした。

「私はステアと申します。」

「メルガだよ?」

 メルガは相変わらずマイペースというか呑気というか…。

 肩まで伸びた亜麻髮を揺らして少年に微笑みかけたメルガを見て、ティーフィーも笑みをこぼした。


「それじゃあ答えて貰いますよ。貴方が何故この島にいるのか。」

 ステアの言葉に少年は唾を吐いて頭を擦った。

「…俺は自分とこ追い出されたんだよ。そうだ…お前ら!」

「「「?」」」

 急に3人を指差した少年はニヤッと気持ち悪い笑みを浮かべてこう言った。


「俺はこの辺の海詳しいんだ。お前らの船で俺の行きたいとこ行かれてくれんなら、お前らの目的地へも案内するぜ。」



「ーーカミルって言うのね。姓は無いの?」

 船の設備を確認しながらティーフィーはカミルにそう問いかけた。

「…別に、どうでもいいだろ。」

「そうね。」

 ティーフィーは、これ以上聞くとこっちの素性も知られかねない、と早々に口を噤んだ。

 カミルはそんなことは全く気にも止めずにただ黙々と帆を畳んでいた。

「ところで、カミルの行きたいとこってどこなの?遠いの?」

「メルガか…。それほど遠くはない、ムライソンっていう小せえ島国だ。」

「「えぇ!?」」

 メルガの問いに対してカミルが発した答えは二人を驚かせた。

「なんなんだよ…」

「どうかしましたか?」

 その声を聞いてか船の中で食糧を見に行っていたステアが籠を抱えて船外へ出てきた。

「俺がムライソンに行きたいって言ったらめっちゃ大声で驚きやがるから、、」

「ええぇ!?」

「お前もかよ!!」


 カミルは大袈裟にため息を吐くと3人の顔を順に見た。

「何だってんだよ…ったく、、」

 ティーフィーは瞳を大きく開いてようやく口に出した。

「なにって、、私達が目指す場所もムライソンなのよ…。」

「うんうん。」

「…驚きました。」

 メルガとステアも続いてそう言うが、一番驚いていたのはカミルだった。

「………!!」

「どうしたのよ?」

「マジ…か、」

「ええ。」

「??」


 なんでだ?今更観光に行くような場所でもないだろ、、それとも何か?俺がいない間に観光地と化したのか?ああ…くそっ、、何だってこんな奴らが俺の国に…。

 いや、あそこはもう…。

「俺の国じゃねぇのか-…」

 カミルは頭を抱えてた腕を膝に下ろすと空を見上げた。



「ーーメルガ!何も置いてきてないわね?」

「うん!大丈夫だよ!」

 メルガは最後の袋を船に乗せ終えるとにこっと微笑んだ。

「それじゃあ出発しますよー、カミルさんいいですか?」

 ステアが下にいるカミルに問いかけると、カミルは小さな布袋を肩に背負って船に飛び乗った。

「あぁ!問題はねぇよ。」

「それじゃあ、」

「「しゅっぱぁーつ!!」」

 大きく腕を掲げたティーフィーとメルガに、カミルは心底呆れた声で呟いた。

「……はしゃぎ過ぎだろ。」


「結構色々あったんだね。あの島。見て見て〜この果物なんか見たことない!」

 メルガは大事に抱えていた袋から果実を二つほど取り出して波にかざした。

「ムライソンにゃ普通にあるぞ。」

「ええー?」

 カミルはメルガの手からその果実を取り上げて海にぽいと投げ捨てた。

「あぁぁぁ〜……折角持ってきたのに。」

「買えばいいだろ。」

「そんなぁ〜」

 未だに通り過ぎた海の底を見つめるメルガから目を離し、カミルはほどなく見えるであろう遠くの島国を見据えた。

「…綺麗な海ね。」

 カミルが横を見るとティーフィーが鮮やかに煌めく亜麻色の髪を掻き上げて微笑んだ。

「でも少し雲行きが怪しくないですか。降らないと良いですけど…。」

「ステア。」

 ティーフィーの横に並んで空を見上げたステアを見つめて、カミルも少し先の空に目を移した。

「いや、降るだろうな。あんな様子じゃ。」

「分かるの??」

 ティーフィーが聞き返すとカミルは思い切り顔を歪めた。

「いや…海に出る奴の基本だろ。」

「ご、ごめん。」

 ティーフィーとステアは苦笑いを交わし気まずそうにもう一度船の外に顔を向けた。


読んでいただきありがとうございます

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