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第二十八話 襲来

 グニドは駆けていた。

 前屈した姿勢のまま、首と尾を地面と水平にして走る。大きな足が一歩進む度に土を蹴立て、大地に三本爪の足跡を残していく。


 そのグニドのすぐ傍を、エスロフの群が駆けていた。

 そこは鬱蒼とした森の中。枝葉に日の光が遮られ、薄暗く細い道を無数の蹄が蹂躙している。

 馬の背には武装した義勇軍の戦士たち。彼らは先頭を馳せるヒーゼルの赤い髪を目印に、一心不乱に駆けていた。


 グニドはその巨大な体ゆえ馬には乗れない。そもそも馬は竜人ドラゴニアンに怯えるので、たとえグニドがもう少しスリムだったとしても、乗れない。

 だから一人だけ自らの脚で駆けているのだが、その速さは馬にも劣らなかった。柔らかい砂に足を取られがちな砂漠で鍛えられた竜人の脚力は、並大抵のものではないのだ。


「グニド、大丈夫か?」


 と、ときにグニドの真横へ馬を寄せてきた影が言う。見上げると、そこには鞍の上からこちらを見下ろすヴォルクがいた。

 グニドはそれに「ウム」と返す。ヴォルクは自力で駆けているグニドを案じたのだろうが、空腹でさえなければ竜人の体力は底なしだ。


 グニドたちは現在、魔物の襲撃に遭っているという北東の集落ムラを目指していた。集落までは馬の足で約二刻(二時間)――と事前にヒーゼルが言っていたから、到着まであと半刻(三十分)といったところか。

 グニドは義勇軍に雇われた傭兵として、ヴォルクと共に早速その腕を買われることになった。というよりカルロスが、


「まずここで義勇軍われらと共に戦う意思と、戦士としての力を示せ。その姿を見れば兵たちも、少しはお前たちの見方を変えるはずだ」


 と、渋る周囲を押し切って送り出してくれたのだ。


「二人とも、気をつけて行っておいでよ」


 そのときグニドの脳裏にふと、要塞の門まで見送りに来たラッティの声が甦る。彼女は化かしの術こそ使えるが戦場で役に立てるほどの武芸はないという理由から、非戦闘員のポリー、そしてルルと共に砦に残ることになった。

 急な報せが入り、砦中が緊迫した空気に包まれたためだろう。見送りにきたラッティの傍には一緒に残るポリーやルルもいて、二人とも不安そうな顔をしていたのを思い出す。


 けれどもルルは結局、グニドと一言も口をきかなかった。ルルは終始ポリーの後ろに隠れて、しかし何か言いたげにこちらを見ていたから、本当はグニドの方から声をかけようかと思ったのだ。

 だがその前にヒーゼルから出発の号令がかかり、グニドは身を翻して門を出た。義勇軍ここでは戦いに出る際、常に指揮を執る者の命令に従い、味方の足並みを乱してはならない――それが戦士の守るべき第一の掟だと、初めにカルロスから言われていたからだ。


「あぁ、しかし、馬の上ってのは、ずいぶんと、揺れ――でっ! ゆ、揺れ、揺れやがるな……! 馬車の上とは、大違いだっ」


 と、ときにところどころ裏返った声がして、グニドはふと顔を上げる。そこにはヴォルクが腰につけた物入れからひょっこり顔を出したヨヘンの姿があった。

 何でもヨヘンは「グニドについていかないと冒険記の執筆に差し障る!」とかで、戦えもしないくせに無理矢理グニドたちについてきたのだ。危険だし無謀だと皆が止めたのだが彼は聞き入れず、仕方なく折れたヴォルクが「物入れから勝手に出ないこと」を条件に腰に吊るして連れてきた。


 が、そんなヨヘンは早速走る馬の揺れに苦しめられ、物入れごと上下左右に振り回されている。ヴォルクの方は馬の扱いに慣れているのか涼しい顔で手綱を操っているが、ヨヘンは「やばい、そろそろ吐く」と早くも疲れ切っている様子だ。

 だから砦で大人しくしていれば良かったのに、と、駆けながらグニドは呆れた。が、そこへ、


「もうすぐ森を抜けるぞ! 武器を抜け!」


 と、縦列を組んだ馬群の先頭から声がする。ヒーゼルの号令だ。

 それに合わせて、馬上の戦士たちが一斉に武器を抜いた。ほとんどの者はヒーゼルと同じ長剣を手にしているが、中には槍や長刀など、長柄の武器を持参した者もいる。

 グニドはそんな人間ナムたちの様子を一瞥して、自らも大竜刀を手に取った。

 その峰を肩に預けるようにして担ぎ、グニドは低く咆吼する。

 同時にヴォルクが顔をしかめた。


「――嫌な匂いがする」


 グニドも同感だ。一行が一塊になって進む先――その方角から、色んな匂いの混じった風が吹いてくる。

 何かが焼ける匂い。胸が悪くなりそうなほどひどい腐臭。魔物が身にまとう瘴気。そして――大量の、血の匂い。 


「出るぞ!」


 ヒーゼルの声がした。グニドは馬の脚を速めたヴォルクに続いて自らも速度を上げた。

 行く手から眩しい光が射している。ぽっかり口を開けた森の出口だ。出口までの道のりは緩やかな斜面になっていて、グニドはそれを駆け上がる。

 そうして茂みから飛び出し、思わず足を止めた。


 グニドたちが辿り着いた丘の麓――。


 そこで人間の集落が魔物の影に覆われている。


「これは……」


 森を抜けるなり足を止めたのは、グニドだけではなかった。ヒーゼルを始め、義勇軍の面々も茫然と馬を止めている。

 そうして彼らが見下ろした先には、想像を絶する数の魔物がいた。十や二十などというものではない。ともすると麓のあれは魔物の集落なのではないか、と首を傾げたくなるほどの数だ。


 グニドは我が目を疑った。元々砂漠にはあまり魔物が出ないから、あれほどの数の魔物を目にしたのはこれが生まれて初めてだった。

 麓にぽつぽつと立ち並ぶ人間のイエからは、激しい火の手が上がっている。そこから噴き上げる黒煙けむりが禍々しい魔物たちの姿と相俟って、あたかも村を呑み込もうとしている闇の化け物のようだ。


「なんて数だ……最近魔物の数が増えているとは聞いてたが、あの数は尋常じゃない……!」

「ムウ……ヒーゼル、味方、何人イルカ?」

「先行してきた騎馬隊が百騎。あとから更に二百の援軍が来ることになってるが……」

「そ、それまでたった百騎で持ちこたえるってのかよ? ただ戦うだけならまだしも、オイラたちは村人も守らなきゃならないんだぜ!」

「……。グニド。お前、何体までならあの魔物どもを引き受けられる?」

「ム?」


 と、ときに麓を見つめたままのヒーゼルに尋ねられ、グニドはしばし思案した。

 見たところ村を襲っている魔物たちは、数こそ多いが皆小型だ。先日グニドたちが砂漠で戦った大蚯蚓エグ・ムロウのような巨大な影は見当たらず、大きくても馬と同じくらいのものばかりと見える。

 それを丘の上から確かめたグニドは、


「――三十ダ」


 と、ヒーゼルを顧みて告げた。

 途端にヒーゼルの口角がわずかに上がる。ちら、と横目でこちらを見てきたその表情は――意外にも、不敵だ。


「なら、俺も三十。おいヨヘン、お前、算術が得意なんだろ?」

「へっ? あ、ああ、まあ……」

「なら代わりに計算してくれ。麓にいる魔物の数もざっと百程度。そのうち三十をグニドが、もう三十を俺が倒す。とすると、残る魔物は?」

「四十だ」

「なるほど。それじゃあ第一班から第五班、お前らは俺と一緒に来い。残りの魔物四十に対してお前らは五十だ。それなら一人一体倒してもおつりが出る――楽勝だろ?」


 そう言ってくるりと戦士たちを振り向き、ヒーゼルは笑った。すると、それまで麓の惨状に息を飲んでいた戦士たちの目がぱっと光を取り戻す。

 その眼差しには闘気が満ち、皆が怯えを捨てて頷いた。

 そんな戦士たちの姿を見て、グニドは内心舌を巻く――このヒーゼルという男はたった一言で、消沈しかけていた味方の士気を燃え上がらせたのだ。


「よし。それじゃ、残りの第六班から第十班は村人の救出と護衛に当たれ。村の真北にあるフェンテ城趾まで誘導すれば、いくらか守りやすくなる」

「はい!」

「サン・カリニョからの増援が来るまでおよそ一刻だ。それまで何としても持ちこたえるぞ!」

「――応!!」


 ヒーゼルに応えた戦士たちの唱和が、ビリビリと空気を震わせた。

 そこにはもう、怯えを滲ませている者は一人もいない。皆が体中に闘気を漲らせ、戦の前の、あのピンと張り詰めた気配が丘の上に満ちていく。


「――ときを上げろ!」


 ヒーゼルが剣を振り、戦士たちの咆吼がこだました。

 その鯨波こえの嵐はついにグニドのたてがみまでビリビリ言わせ、麓に蜷局とぐろ巻く黒煙けむりの大蛇へ降り注ぐ。


正義神の名の下にヴィヴァ・ツェデク!」


 それが、突撃の合図だった。

 一斉に同じ言葉を叫んだ戦士たちが、ヒーゼルを先頭に丘を駆け下りていく。

 その馬群に紛れながら、グニドも吼えた。五十騎の人馬と巨大な一つの塊になり、一気に斜面を駆け下る。


 激突した。


 グニドたちは燃え盛る家々の間から雪崩れ込み、駆け下りてきた勢いを駆って魔物どもに突撃した。


 村の中には様々な姿形の魔物がいる。多いのは異形の獣のような形をしたものだが、中にはブンブンと羽音を立てて頭上を飛び回る人喰いエルテーブや、鋭い爪牙を持つ人型の魔物もいる。

 そうして一見明らかに形態も生態も違うモノが集まり、一つの意思となって人間を襲うのが魔物という生物の特徴だった。

 彼らは争乱や天災のあるところに好んで集まる。人間の屍肉をあさるためだ。

 そのためなら普段は別行動をしている異種の魔物とも手を取り合う。魔物同士が敵対して相争うという話は聞いたことがないから、きっと姿形が違っても、彼らは元々〝同族〟という括りの中にいるのだろう。


 グニドは唾液を振り撒きながら向かってきた獣型の魔物を一刀の下に斬り捨てた。四つ足なのに顔は人間のそれに近いという、何とも不気味な化け物だ。

 青黒い毛並みに雄牛エヴィーブのような角を持つその化け物は、アウ、アウ、と気味の悪い鳴き声を上げながらグニドの周りを駆け回った。人間の顔を持つくせに、発するのは岩蛙クコル・ダオトのような低く濁った鳴き声だけ――そう、魔物はほとんどが人間の言葉を解さない。


「グニド、上からも来るぞ!」


 そのとき、恐らくその方が戦い慣れているからだろう、いつの間にか馬を下りて剣を振るっていたヴォルクが声を上げた。

 それを聞いてハッと顔を上げれば、蝙蝠タイヴのような翼を生やした黒い魔物が迫ってくる。上半身は人型だが腰から下はエカンスの体という、これまた気味の悪い化け物だ。


 尖り耳の蝙蝠人間はその手に鋭い槍のようなものを持っていて、右へ、左へと攪乱するように飛びながらこちらへ向かってきた。グニドがそれに気を取られた一瞬、背後から例の人面獣が飛びかかってきたがやつらは竜人の視野の広さを知らない。グニドは前を向いたままその姿を視界の端に捉え、容赦なく尾で薙ぎ払った。

 それと同時に腰から飛刀を抜き、頭上をフラフラしている蝙蝠人間へ投げつける。魔物はそれをひょいとかわしたが、なんの、今のはわざと・・・躱させたのだ。


 グニドの予想どおり、顔面を狙われた蝙蝠人間は飛刀を避ける際に高度を落とした。その一瞬の隙に合わせ、グニドは大竜刀を投げ捨てる。

 そうして幾分か軽くなった体で跳躍し、魔物の長い尾をむんずと掴んだ。

 そのまま着地すると同時に、魔物の体を地面へ叩きつける。二度、三度とまるで鞭のごとく扱えば、魔物は簡単に絶命した。

 グニドはその体を振り回し、ぐるぐると勢いをつけて放り投げる。投げた先には今にもヴォルクを襲おうとしていた別の魔物がいて、いきなり飛んできた蝙蝠人間を避ける間もなく巻き込まれて吹き飛んだ。


「お、おおっ……魔物を掴んでぶん投げるとか、聞いたことねえ……! さすがは竜人――って、おいグニド、後ろ後ろ!」


 と、ときにヨヘンの声がして、大竜刀を拾い上げていたグニドはとっさに身を翻す。そこには二体目の蝙蝠人間がいて、グニドはあわやというところで突き出された槍を躱した。

 まるでグニドの唯一の死角を見抜いたかのような、真後ろからの攻撃。それにヒヤリとしつつ応戦しようとしたところで、横からまた人面獣が邪魔してくる。


『ジャアッ!』


 大竜刀を横薙ぎに振り回し、グニドはそれを叩き伏せた。が、そこへ間髪入れず蝙蝠人間が襲いかかってくる。反応が間に合わない。

 ならば鱗で、と一旦攻撃を受けることを覚悟したそのとき、突然まばゆい閃光が走った。

 次いで、轟音。

 稲妻の槍に貫かれた蝙蝠人間が真っ黒に焦げて落下する――ヒーゼルの神術だ。


「その魔物の槍は受けるな、グニド! そいつの槍には〝鎧溶かし〟の毒がある。鋼の鎧も溶かす毒だ、いくらお前の鱗でも受けたらやばいぞ!」


 ――〝鎧溶かし〟だと? とグニドが驚き振り向けば、その先で馬上のヒーゼルが飛びかかってきた魔物を斬り捨てていた。更に頭上から飛来する人喰い虫を、ヒーゼルは一体、二体と神術で鮮やかに撃ち落としていく。


「ムウ……ワカッタ、気ヲツケル。助カッタ」

「ちなみに俺はもう十体倒したけど、お前は?」

ジャ!? オレ、数エテナイ!」

「何だ、それじゃ勝負にならないじゃないか」

「勝負スル、聞イテナイ!」


 グニドがそう抗議すれば、剣についた魔物の血を払いながらヒーゼルが笑った。

 この状況でなお無駄口を叩き、笑っていられるとは豪胆な男だ。あるいはこちらの気を紛らわすための気遣いなのか、それとも本気なのか、この男はそこがよく分からない。


 だがどちらにしても頼もしいことは確かだ。やはりヒーゼルには戦士として見るべきものがある。

 グニドはヒーゼルやヴォルクと付かず離れずの距離を保ちながら、村の中で暴れ回った。途中、魔物に追われて逃げ惑う人間や瓦礫の下敷きになった者を見かけたが、それらの救出、誘導は担当の戦士たちが順調にこなしている。グニドたちはただ目の前の魔物を狩ることに専念していればいい。


 初めは倒しても倒しても湧いてくるように感じた魔物は次第にその数を減らし、戦況はグニドたちの優勢となりつつあった。

 先程丘の上から見たときはその数に肝を潰したが、いざ戦ってみればどうということはない。魔物たちは黒くてドロドロした血を撒き散らしながら、次々と斬り伏せられていく。


 そのうち西の方角からワッと喊声が上がったかと思えば、最初にグニドたちが駆け下りてきた丘の上から、更に二百ほどの歩兵が押し寄せてくるのが見えた。

 ヒーゼルの言っていた援軍だ。その到着によって戦の大勢は決し、魔物の数は見る間に減少していく。


「おい、見ろ! 魔物ども、尻尾を巻いて逃げてくぞ!」


 と、やがて魔物の死骸だらけとなった村の中に、ヨヘンの歓声が響いた。

 それに気づいたグニドが首を巡らせれば、こちらの増援に怖じ気づいたのだろうか、確かに魔物の残党が背を向けて逃げ出していくのが見える。


「ヒャッホウ! 何だよ何だよ、意外とアッサリ片づいたな! もっとこう、冒険記中盤の大見せ場になるような戦いを期待してたんだが――」

「――おかしい」

「え?」


 と、ときにヴォルクがあたりを見渡しながら言うのを聞いて、物入れの中のヨヘンが不思議そうに彼を見上げた。

 ヴォルクはピンと立てた黒い耳を魔物たちが逃げていく方向へ向け、尻尾を地面と水平にしている。その表情は何やら深刻で、頬から垂れた魔物の返り血にも気づいていないようだ。


「ドウシタ、ヴォルク?」

「人間を襲いに来た魔物が、狩り・・の途中で逃げ出すなんて聞いたことがない……ごく一部の知性を持った魔物を除いて、普通、魔物ってのは人間を見つけたら死ぬまで追ってくるものだ。なのにあいつらは逃げ出した……」

「た、たまにはそういうときだってあるんじゃないのか? 魔物だって命は惜しいだろ」

「――いや、そもそも魔物に自分の命を〝惜しい〟と感じるだけの知性があるかどうか……やつらは言わば〝人間を喰いたい〟という本能の塊だ。それ以上の思考回路は持ち合わせてないと言っていい」


 と、そこでグニドたちの会話に入ってきたのは、戛々かつかつと馬を歩ませたヒーゼルだった。その目はヴォルクと同じく魔物の波が引いた方角を向いていて、心なしか一抹の緊張を滲ませている。


「……まあ、とにかく戦闘は一段落したと見ていいだろう。この隙に味方の被害状況の確認と、フェンテ城趾への伝令を――」

「――ギシャアアアアアッ!!」


 そのときヒーゼルの言葉を遮って、おぞましい鳴き声がこだました。

 まるで砂漠の甲虫が上げる威嚇の声をいくつも重ねて、禍々しくしたような声。その声に怯んだ面々が何事かと振り向いた先で、燃え盛っていた木造のイエが突然爆発する。


 ――否。それは家が爆発したわけではなく、半分焼けて崩れかかった家の残骸を巨大な生物がぶち破った・・・・・のだった。

 突如として現れたそれ・・は濛々と立ち込める黒煙けむりの中から、ゆっくりとその全貌を垣間見せる。


 まず初めに見えたのは、青黒く光を照り返す外殻。その外殻に覆われた六本の節足。

 尖った脚の先には鋭利なトゲがいくつも生え、それがギチギチと軋むような音を立ててこちらを向く。

 体の前面には、地につくほど重そうで巨大なハサミが二本。やがて吹き抜けた風が煙を散らし、その後ろに隠れていた赤い複眼がチカチカと不規則に明滅する。


「お……おい、何だあれ……」


 誰かが茫然と呟いた。


 グニドたちの前に突如として姿を表したそれ・・は、人間の暮らす家よりも遥かに巨大な化け物だった。

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