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第十五話 オアシスにて

 水音で目が覚めた。

 二枚の重い瞼をもたげ、グニドは鈍い瞬きをする。

 体がひんやりとして気持ち良かった。ふと見ると、岸に預けた顎の下で水が遊んでいる。


 そこはラムルバハル砂漠の真ん中にあるオアシスだった。

 グニドは無事オアシスへ辿り着くなり水の中へ飛び込み、どうやらそのまま眠ってしまったようだ。

 このオアシスへ駆け込む前後の記憶は断片的で、グニドは体を泉の水に浸したまま、はて、自分はあれからどうしたのだったかと思案した。

 とりあえず鎧と刀を投げ捨てて泉に飛び込み、底まで潜って手当たり次第シーフを貪ったことは覚えている。

 それから心ゆくまで水を飲み、ルルの体を冷やし、ルルを木陰へ連れていき……。


(ルル?)


 そう言えばルルはどうしたのだろう。ようやくまどろみから覚めたグニドはハッとして頭をもたげた。

 するとその瞬間、グニドの耳に飛び込んできた笑い声がある。ルルを寝かせた木陰の方からだ。

 グニドは長い首を巡らせ、声のした方向を振り向いた。

 直後、仰天して水から飛び出す。何故なら木陰に起き上がったルルの目の前で、巨大な禿鷹ロドノックが二羽、翼を広げて喚いていたからだ。


『ルル!!』


 覚醒したグニドはすぐさま駆け出し、吼え声を上げて二羽の禿鷹へと突っ込んだ。

 禿鷹はそれに驚いてギャギャギャと騒ぐと、すぐさま空へ飛び立っていく。

 グニドは鋭い牙を見せて威嚇し、禿鷹どもが二度とルルに近づこうなどとは思わぬように咆吼した。

 が、そのとき、


『あーっ!』


 と、遥か彼方へ逃げゆく禿鷹を見やり、ルルが落胆したような声を上げる。

 何事かと見下ろすと、ルルは空を見上げてひどく悲しそうな顔をしていた。

 かと思えばグニドに視線を移し、非難めいた口調で言う。


『もう、グニド! なんでおどかすの! せっかくなかよくなれたのに!』

『仲良く? 馬鹿言うな、あれは肉食のグニウだぞ。川辺の小鳥ティトモットとはわけが違う』

『でも、ルルのこと起こしてくれたんだよ。ツンツンって』


 言って、ルルは自分の腕を指先で小突く仕草をした。

 要するにつつかれたのだ。そしてルルはそれを禿鷹どもの善意による行いだと信じているらしく、事情を理解したグニドは図らずも呆れのため息をつく。


『あのな、ルル。それはお前を起こしたんじゃなくて、喰おうとしてたんだよ』

『えっ。そうなの?』

『あいつらはここ数日、ずっとお前を狙ってたんだ。だからおれが寝入った隙にこっそり喰おうとしたんだろうさ』

『でも、でも、ルル、あんなにふさふさの生きものはじめて見た! お口もへんなの! こんな風にとがってて、かたくて白くて!』


 直前まで肉をついばまれようとしていたにもかかわらず、ルルはまったく恐怖を感じた様子もなかった。

 それどころかいたく無邪気なはしゃぎようで、禿鷹の特徴を身振り手振りでグニドに伝えようとしている。そんなことをしなくてもグニドは禿鷹をよく知っているのだが――と、そこまで思い至ってようやく気づいた。


 ああ、そうか。ルルはこれまで竜人ドラゴニアン以外の生き物を見たことがほとんどないのだ。

 地下での無聊を慰めるため、蜥蜴ドラズィルエスィムを捕まえて見せてやったことはあったが、あれらはするすると檻の間から逃げ出してまったくルルに懐かなかった。

 あとは時折小さなエルテーブが迷い込んでくるくらいで、鳥などついぞ目にする機会はなかったはずだ。

 どうりでいつになく興奮しているわけだ、と納得し、グニドは禿鷹どもが飛び去った方角を見やって言う。


『あれはグニウという生き物だ。鳥は木の実や虫を食べるのがほとんどだが、たまにああいう肉食のやつもいる』

『へぇー! ぐにう? ぐにうってすごいね! バサバサーッてするとふわーってなるの! あれ、ルルにもできる?』


 ルルはなおも興奮した様子で、自分の両手をバタバタと上下に動かした。

 恐らく鳥が空を飛ぶことを言っているのだろう。が、〝飛ぶ〟という事象すら知らないルルの発想はまったく奇天烈で、グニドは思わず笑ってしまう。


『いや、この世であんな風に空を飛べるのは鳥か虫かノガルドだけだ。残念だがお前じゃ無理だな』

『えーっ。でも、ルルもふわーってしたい!』

『無茶言うな。そんなことより、ルル。お前、体調はどうなんだ? 熱は?』

『ねつ?』


 グニドが尋ねると、ルルは大きな目をまん丸にして瞬きをした。どうやらこの少女には、自分が少し前まで大変危険な状態にあったという自覚がないらしい。

 それを見て取ったグニドはやれやれと首を振り、それからルルの両腋りょうわきに自らの手を差し入れた。

 そうして小さなルルの体を軽々と持ち上げる。突然持ち上げられたルルは『ふわあー!』と何やら騒いでいたが、グニドは構わず掌の皮膚に意識を集中した。


『……うむ。どうやらだいぶ下がったみたいだな』

『下がった? なにが?』

『お前の熱が、だ。まったく、一時はどうなることかと思ったが……』


 意識を取り戻してすぐにこれだけはしゃぐ元気があるのなら、ひとまずは大丈夫だろう。そう思うとグニドはようやく緊張から解放され、深々と安堵の息をついた。

 下手をすれば、砂漠で二人仲良く野垂れ死んでいてもおかしくない状況だったのだ。このオアシスに辿り着くまでの過酷な数日間を思い返すと、グニドは背筋が寒くなる。


 あれほど絶望的な状況で、よくぞ生きてここまで辿り着けたものだ。グニドはそう自分を褒めてやりたかった。

 特にルルが昏睡状態に陥ってからは生きた心地がしなかったが、今、こうして彼女を抱いていると得も言われぬ感慨が胸を満たしていく。こんなに深い安堵に包まれたのは生まれて初めてかもしれない。

 グニドは竜人同士が親愛の情を表すときのように、ルルの額に自らの額を擦りつけたい気分だった。


 が、


『――あっ! グニド、下!』


 と、突然ルルが叫ぶ。

 グニドはつられて下を見た。

 が、そこにはすぐそばに佇む喬木の影が揺れているだけだ。


『? 何だ?』

『見て、そこ! なにかいる!』

『……何もいないぞ?』

『いるよ! うごいてる! それ!』


 未だグニドに持ち上げられたまま、ルルはしきりに地面を示した。

 が、グニドがどんなに目を凝らしても、そこにいるという〝何か〟の姿は見当たらない。唯一足元で動いているものと言えば、風に吹かれて揺れる下生えの草だけだ。


『いや、ルル……これは草だ。生き物じゃない』

『くさ?』

『この緑のやつだろう?』

『ちがうよ!』


 上手く伝わらないことがもどかしくなったのだろう。手の中でルルがばたばたと暴れ出したので、グニドは仕方なく彼女を地面に下ろしてやった。

 するとその瞬間、しゃがみ込んだルルがバッと何かに手を被せる。まるで狩りに熟達した戦士のような、しなやかで隙のない動きだった。

 その身のこなしがなかなかのものだったので、グニドは「ほう」と感心する。

 ところがすぐに、


『あっ! にげた!』


 と叫び、ルルは地面に置いた自らの手をもう一方の手でぱちん!と叩いた。

 一体何が逃げたと言うのだろう。やはりグニドにはそこに生き物がいるようには見えない。

 それでもルルは一心不乱に、これ以上はないというほど真剣な表情でその〝何か〟を追い続けた。

 右手を左手の上に、更に左手を右手の上に、かと思えば再び右手を左手の上に、左手を右手の上に……。


『……。おい、ルル。お前、何やってるんだ?』

『これ! グニド、これつかまえて!』


 もしかしたら新しい遊びを編み出してふざけているだけかもしれない、と思ったが、やはりルルは真剣だった。

 彼女が切羽詰まった声で〝これ〟と示したのは、地面に置かれた彼女の右手だ。それを捕まえろとはどういうことかとグニドが考え込んでいる間にも、ルルはバシバシとしきりに地面や自らの手を叩いている。


 が、その手の動きを追ううちに、グニドにもようやく分かった。

 ルルが小さな両手で必死に閉じ込めようとしているもの。

 それは風が吹く度にさわさわと動く――木漏れ日だ。


『……』


 グニドがついに〝何か〟の正体を知って沈黙している間にも、ルルと木漏れ日の格闘は続いた。

 ルルは捕まえても捕まえてもするりと手の甲へ逃げる木漏れ日に納得がいかないらしく、ぐるぐるとあたりを這い回っている。途中から頭を使い、手で捕らえるのではなく砂を被せたりもしているが、もちろん木漏れ日は捕まらない。


 そこでグニドはふと思い立ち、ルルが必死で追いかけている木漏れ日の上に手をかざしてみた。

 するとグニドの手に遮られた光は地面から消える。

 途端にルルは息を飲んでグニドを見上げ、


『きえた!』


 と、この世の終わりに出会したような顔で叫んだ。


 それを見たグニドが試しに手をどけてみると、再び木漏れ日が地面に落ち、


『出てきた!』


 とまたもルルが反応する。


 グニドはもう一度だけ光を遮ってみた。


 木漏れ日が消え、地面は影で塗り潰される。

 ルルは直前まで木漏れ日が当たっていた場所を急いで掘り返したりしていたが、当然光が見つかるわけもなく、


『なんでー!?』


 と、困惑しきった様子でグニドを見上げた。

 それを見たグニドはこらえきれず、ついに吹き出してしまう。

 それから白い腹を押さえ、声を上げて笑った。

 こんなに大声で笑ったのは久しぶりだ。


『グニド、なんでわらうの!?』

『い、いや、悪い……お前があんまり必死だから、ついおかしくなってな』

『おかしくないよ! ルルはこれをつかまえたいの!』

『ルル。そいつは誰にも捕まえられないんだ』

『どうして?』

『形がないものだからさ。おいで』


 グニドはようやく笑いを収めて身を屈めると、手を伸ばしてルルを抱き上げた。

 そうして彼女の小さな尻を肩に乗せ、その体を片手で支えてやりながらつと空を示して言う。


『あの木の葉の向こうに、いっとう眩しい光が見えるだろう?』

『うん。ルル、しってる。あれは太陽っていうの』

『そう、太陽だ。さっきお前が捕まえようとしていたのはあれだ』

『そうなの?』

『ああ。この世のあとにも先にも、あれを捕まえたやつはいない。あれは光の塊だからだ。光は目で見ることはできても、捕まえることはできないだろう?』

『うん……風とおんなじ』

『そう。風と同じ、精霊の依り代だ。だから誰にも支配できない』

『そっかぁ……つかまえられないんだぁ……きれいだから持っていきたかったのに』


 ルルは至極がっかりした様子で、グニドの長い首に身をもたせた。そのままグニドの首に抱きついて、ぼんやりと空を眺めている。

 最初に大地の肚レドヌ・ダオルを出たとき、ルルは雲はおろか空も太陽も分からなかった。

 この世にはまだまだたくさんルルの知らないものが溢れている。その一つ一つに触れるとき、ルルは一体どんな反応を見せるのだろう。


『ねえ、グニド』

『うん?』

『なんだかまぶしいね』

『ああ、そうだな』

『みんなきらきら。砂も、水も、葉っぱも』


 そう言ってルルは頭上の木の葉を示す。鳥の羽のように裂けた細長い葉の間からは、なおも木漏れ日が雨のように降っていた。

 世界をこんなに美しいと思ったことが、かつて一度でもあっただろうか。

 ルルが隣にいるだけで、グニドには見慣れた景色がまったく違うものに見える。

 砂漠も空も泉も。

 思えば今までの自分は喰うことや戦うことにばかり明け暮れて、世界へ目を向けることを忘れていたのかもしれない。


『メシにするか』

『うん』


 それからグニドたちは木陰に腰を下ろして、もうしばらくここで休んでいくことにした。

 グニドは木の幹に背中を預け、腹のあたりにルルを座らせる。そうして荷袋の中から豆を取り出し、それを手ずからルルに喰わせた。

 グニドの方は一眠りする前にたらふく魚を食べたので当分は持ちそうだ。ルルも思ったより食欲があり、グニドの手からひょいと豆を摘み上げてはカリカリと小気味良い音を立てて咀嚼している。


 やがてルルの腹が満ちると、二人は泉の水で体を洗い、さっぱりしたあとは濡れたかみを乾かすために再び木陰で休息した。

 グニドはやわらかい下草の上に腹這いになって寝そべり、その上にルルがうつぶせになる。そのまま夕方まで眠り、日が沈む前に一度起きてルルに夕飯を食べさせた。


 夜はルルの神刻エンブレムの力で火をおこし、その傍で眠る。

 不思議なことに、ルルの力でつけた火は薪をくべなくても消えないのだ。おかげでグニドは久々に暖かい夜を過ごせた。


 翌朝、まだ空が薄暗い頃に目が覚めると、グニドはくわっと牙を剥いて大きなあくびをする。

 ルルはまだ眠っていた。グニドはその寝顔をしばらく傍で眺めたあと、泉に潜って魚を喰った。


 こんなに穏やかなときを過ごしたのはいつぶりだろうか。少し前までは狩りがどうとか、長老レドルの座がどうとか、ずっとそんなことに追われていたはずなのに、今はそれらがとても遠いものに思える。

 だがいつまでもここでこうしているわけにもいかなかった。このオアシスは確かに居心地がいいが、魚は無限に湧いてくるわけではないし、ルルの食糧にも限りがある。


 グニドが次の目的地として考えているのは、ここより更に北へ四日ほど行った先にあるシャムシール砂王国唯一の町シェイタンだった。

 しかし一つだけ問題がある。シェイタンに辿り着くまでルルの体力が持つかどうかだ。

 丸一日オアシスで休んだとは言え、再び砂漠に出ればまたルルが熱射病にかかってしまうのではないかと、グニドはそれを恐れた。今回は運良く禿鷹につきまとわれるだけで済んだものの、次こそは砂漠の大蛇トネプレスに襲われるかもしれない。


 そう考えるとグニドは後込みし、再び砂漠に出ることをためらった。

 どうすれば安全にシェイタンへ辿り着けるか。呼吸を止めて魚が寄ってくるのを待ち、水中で岩のようにじっとしながらそう考える。


 ――岩のように。


 何気なくそう思ったところで、グニドはハッとした。

 そうだ。その手があった。

 オアシスの泉の底は、砂まみれの地上とは違いゴツゴツとした褐色の岩が覗いている。それは何故か。

 答えは、この泉の水源が砂漠の地下にあるからだ。

 つまりこの泉は、オアシスの真下にある大地の肚の地底湖とつながっている。


『おい、ルル!』


 油断して近づいてきた魚をガッと捕まえてから、グニドは泉の底を蹴って浮上した。

 そうして盛大な水飛沫を上げながら岸へ上がる。その音でようやく目が覚めたのだろう、焚き火の傍で丸くなったルルが眠そうに目を擦っている。


『うぅん……なあに、グニド?』

『お前、水に潜れるか?』

『みず?』

『そうだ。そこの泉の底からもう一度大地の肚に潜れる。地上を行くよりそっちの方が涼しいし安全だ。だが大地の肚に入るためには、泳いで水底まで行かないといけない。たぶん、かなり深くまで潜ることになると思う』


 ぶるぶると体を振って水気を飛ばし、グニドは言った。手の中では捕まえた魚がビチビチと尾を振って暴れている。

 斑模様の鱗を持つ淡水魚だった。グニドはそいつを口に運ぶと、生きたまま丸飲みにしてしまう。


『お前、しばらく息を止めていられるか?』

『息をとめる? そんなことしたら、くるしいよ』

『苦しい? ちょっとくらいなら平気だろ』

『ちょっとだけでもくるしいもん。ルル、くるしいのはいや』


 ルルは珍しく渋い顔をして、いやいやと首を振った。グニドは息を止めるのがそんなに苦しいことだと思ったことがないので、思わず首を傾げてしまう。

 竜人は鼻孔を閉じ、呼吸を止めると、そのまましばらく無呼吸で活動することができた。さすがに長時間その状態でいると苦しいが、未明から日の出の間くらいの時間なら余裕で動き回ることができる。

 それは狩りの途中で砂に潜って身を隠したり、川に潜って魚を獲ったりするときには欠かせない能力だった。身を隠す場所がない砂漠に暮らす竜人だからこそ、進化の過程で手に入れた力だと言っていい。


 だがよくよく考えればルルは人間ナムだ。人間は竜人のように砂漠で狩りをしたりしないし、そもそも水に潜れるのかどうかも分からない。

 グニドはかつて死の谷モソブ・クコルの南、そこを流れる大河シャールーズの畔に暮らす部族から話を聞いたことがあるのだが、人間というのは川を移動するとき『フネ』と呼ばれる巨大なたらいのようなものに乗って進むのだという。


 つまり人間は生まれつき〝泳ぐ〟という能力が備わっていないのではないか。グニドはそう考えて落胆した。

 それではルルを連れて大地の肚へ潜ることができない。グニドが抱えて泳ぐにしても、少なくとも三百を数える間くらいは息を止めていないといけないので、それすらできないというルルを連れていくことは不可能だ。


『グニドはあの水たまりの中に行きたいの?』

『ああ、そうだ。あの水溜まり……泉の底は岩だらけで、その岩の間に大地の肚へ続く穴がある』

『じゃあ、その穴に入れればいい?』

『そうだ。でも、そこへ行くにはしばらく息を止めてないといけないんだ』


 ようやく目が覚めてきたのだろう。ルルはなお眠たそうにしていた瞼をぱちぱちと瞬くと、ふわあ、と大きなあくびをした。

 そうすると目尻にうっすら涙が浮かぶ。人間はあくびをすると何故か涙が出るようなのだ。

 ルルはその涙をごしごしと拭いながら、言う。


『なら、息をとめなくたって行けるよ』

『え?』

「――アメル・オペン・ゲアノル」


 涙を拭っていた手をすっとかざし、泉を指差してルルはうたった。するとその胸で神刻が輝き、信じられないことが起こる。

 ザバアッと波のような音を立て、泉の水が二つに割れた。

 思わず見とれるほど碧く澄んだ水は透明な壁のようになり、グニドらの前に道を作り出している。


 その道の先では泉の底が剥き出しになり、沈んでいた岩の姿が地上からもはっきりと見えた。

 更に突然の事態に逃げ遅れた数尾の魚が、砂の上に取り残されてビチビチと跳ねている。

 グニドは唖然とルルを顧みた。


『ね? これで行けるよね?』


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