第一二六話 天使降臨
「ユニウスを守ったのはこの石よ」
とそう言って、マドレーンが指先で弄んでみせたのは、ユニウスの右耳から垂れた青い希石の耳飾りだった。
「護身石。……と、私はそう呼んでいるけれど、要はユニウスの命を守ることだけに特化した希石ね。ルルアムスが人蛇族からもらったっていう首飾りと原理は同じよ。持ち主に危険が迫ると石が反応して、防護術が発動するようにできてる。術が発動すれば製作者もそれを感知できるっていうおまけつきでね」
グニドがそんなマドレーンの講釈を聞いたのは昨日、胸に矢を受けたユニウスが別宮と呼ばれる離れの宮殿に運ばれたあとのこと。
そこにある寝室で、横になったユニウスの傍らに座ったマドレーンは長い脚を組みながら、なおもチリチリと寝台の上の希石を転がしていた。
「フム……ナルホド。デハ、サッキ、オマエガ、スグ現レタハ、護身石ガ、呼ンダカラ、カ」
「そういうこと。まったく、せっかくの休暇なんだからゆっくり過ごそうと思った矢先にこれだものね。帰国してからこっち、ちっとも気が休まらないわ」
「ごめんよ、マドレーン。おまけに転移術まで使わせちゃって……」
「テンイジュツ?」
「〝空歩き〟……簡単に言えば、今いる場所から離れたところへ瞬間的に移動する希術のことよ。とにかく便利な術なんだけど、その分、尋常じゃないくらい希霊を食うのよね。口寄せの郷で一番強い氣魄を持つ族長ですら、連続で使うと消耗する程度には」
「ム、ムウ……希術ハ、本当ニ、何デモ出来ルナ……ダガ、ナラバ、何故、ユニウスハ、矢ニ当タッタカ? 護身石、矢ヲ避ケルコト、出来ナイカ?」
「はは……そこは僕も一応神子だからね。神子は心臓を貫かれるか、首を斬り落とされない限り死なないと言われてる。だから可能な限り希霊を節約できるように、術の出力を最低限に抑えてるんだ。さっきの矢も、心臓を逸れてくれさえすれば問題はなかったからね」
いや、たとえ心臓は逸れたとしても、矢を受ければ痛いし苦しいだろうとグニドは思ったが、ユニウスはどうやら、何度も何度もマドレーンに護身石を拵えてもらうのは申し訳ないと考えているようだった。というのも護身石は通常の希石と同じく、石に宿った希霊──希術の源となる力のことだ──が尽きると壊れてしまうらしく、ゆえにユニウスはできる限り石を長持ちさせようとしているのだ。
「口寄せの民は無尽蔵に希術を使えるものだと思われているけれど、実はそういうわけじゃない。神術を使えば神力が枯渇するように、希術も使いすぎれば術者の負担となる……だからマドレーンにもあまり無理はしてほしくないんだよ。世間じゃ『狂魔女』だ何だと言われてるけど、彼女もこう見えて案外情が深いからね。放っておくとすぐに無理をしてしまうんだ」
「あのねえ、ユニウス。それはあなたやヴェンが、私が無茶しなきゃいけないような状況を何度も作るからでしょ。本当に私を労るつもりがあるのなら、もう少し後先考えて行動してちょうだい」
「あはは……ごめんごめん。君たちが留守にしてる間、サヴァイにも耳に胼胝ができるほど同じことを言われたよ。〝マドレーンはともかく、我々はいつまでも傍で支えてやることはできないんだからよく考えろ〟ってさ。これでも僕なりに、精一杯善処はしてるつもりなんだけどな──」
そう言って苦笑していたユニウスの護身石が、今。
突如舞台に現れた少女がサッと右手を振るうや否や、音を立てて砕け散った。
あまりにも唐突な出来事に、劇場内にいる誰もが呆気に取られ、何が起きているのか分からずにいる。おかげでシンと静まり返った会場に、刹那、貴賓席の手摺から身を乗り出したヴェンの絶叫が轟き渡った。
「ユニウス、そいつから離れろ!!」
彼の声に打たれたように、はっと我に返ったユニウスが演説台からあとずさる。
ところがユニウスが身の危険を察知するよりも早く、少女は頭上に向かって右手を掲げた。その掌の上で閃光が起こり、たちまち刃のごとき形状へと収束する。
あれは果たして神術か、はたまた希術か──
「ユニウス!!」
直後、ユニウスの体は想定外の衝撃でもって弾き飛ばされ、壇上を転がった。
と同時にパッと咲いた鮮血が舞台を濡らし、客席から裂帛の悲鳴が上がる。されど舞台を染め上げたのは神の血の青ではなく、人間の赤だった。とっさにユニウスを突き飛ばしたサヴァイの胸に、少女の放った光の刃が深々と突き立ったのだ。
「サヴァイ……!!」
ユニウスの叫びを聞きながら血を吐いたサヴァイが意識を失い、ゆっくりと倒れ込むのが見えた。その頃には既に貴賓席にヴェンの姿はなく、彼は扉をぶち破るようにして廊下へと飛び出している。加えてようやく状況を理解した聴衆からも次々と悲鳴が上がり、会場はたちまち恐慌の渦に呑まれた。
すさまじい混乱を目撃したグニドはとっさに立ち上がり、手摺を掴んだまま凍りついているルルを抱き上げる。舞台の上の光景をこれ以上見せるわけにはいかないと思い、自らの胸に彼女の顔を押し当てた。だがサヴァイは、ユニウスは──と再び見やった先では血相を変えたユニウスが、サヴァイへと駆け寄っていく。
ダメだ。行くな。グニドはとっさにそう叫びそうになった。何せ今のユニウスには護身石の加護がない。そしてあの少女の狙いは十中八九、ユニウスだ。
「ユニウス!」
刹那、舞台の上で再び閃光が巻き起こった。少女が起こしたものではない。
が、彼女が姿を現したときと同じように光はあっという間に人型となり、次いで金色にたなびく鬣が見えた。マドレーンだ。彼女は確かアイテール教団のテロに備えて、マグナ・パレスで待機していたはず。だというのに何故ここに、と束の間戸惑ってから、グニドははっと理解した。そうか。護身石だ。
あれが砕けると同時にマドレーンに知らせを送り、異変を察知した彼女もまた転移術で駆けつけた。恐らくはそういうことの次第だろうとグニドは悟った。
「グニド! アタシらも行こう!」
瞬間、背後から聞こえたラッティの呼び声で我に返る。振り向けば先に貴賓席を飛び出したヴェンに続いて、駆け出そうとしている仲間の姿がそこにあった。だが自分たちがあそこへ行ってできることがあるだろうか。いや、仮に何の役にも立たなかったとしても、何もしないでいるよりはずっとマシだ。そう判断したグニドはルルを抱えたまま身を翻し、ラッティたちと共に廊下へ走り出た。ところがだ。
「う、うおおお……! ラッティ、待て待て! 今、一階に下りたらえらいことになるぞ!」
ほどなく一階へ下りる階段の前まで辿り着いたとき、グニドの頭上から階下の様子を見下ろしたヨヘンが慌ててラッティたちを制止した。
というのも恐慌状態で会場を飛び出してきたすさまじい数の群衆が、階段のすぐ下で肉の洪水を起こしていたためだ。舞台の上でサヴァイが襲われるさまを目撃した人々は狂乱の声を上げながら、我先に劇場から逃げ出そうとしていた。
おかげで階下では群衆が渦を巻いており、とても下りられそうにない。
あの中を無理に押し通ろうとすれば、一〇〇〇果(五〇〇キロ)近い体重を誇るグニドでさえも濁流に呑まれて、呆気なくぺしゃんこにされてしまうだろう。
「くそっ、これじゃ舞台まで辿り着けない……! エクターさん、他に一階に下りられる階段は!?」
「う、うむ……私も劇場の内部にはあまり詳しくないのだが、確かどこかに関係者用の専用通路があったはず。その通路を見つけられれば、あるいは……!」
「なら、ヴェンさんもそっちへ向かったのかも。試しに俺がにおいを辿って──」
と、エクターの証言を聞いたヴォルクが振り向きざま、より嗅覚のきく獣の姿を取ろうとしたときだった。
彼はもと来た道を顧みるなり目を見開き、瞬時に腰の剣を抜き放つ。
「えっ……えっ? ヴ、ヴォルク、急にどうしたの──」
と、そんなヴォルクの異変に気づき、慌てて後ろを振り向いたポリーもまた、途端に「ヒィッ……!?」と悲鳴を上げた。そのときにはグニドも背後へ向き直り、緋色の鬣を逆立てている。一拍ののち、グニドはルルをラッティに預けると、自らもおもむろに大竜刀を引き抜いた。何故ならそこにはいつの間にか音もなく、先刻ユニウスを襲ったあの少女が佇んでいたためだ。
「なっ……く、曲者! おのれ、何者だ……!?」
ときを置かずに騎士たちも少女の存在に気がついたらしく、全身の毛を逆立てながら細剣を抜き放った。が、髪も肌も服さえも、唯一青い瞳を除いてすべてが白い謎の少女は顔色ひとつ変えようとしない。
歳はルルと同じくらいと見えるのに、終始つくりもののような無表情で、生き物としての気配をまるで感じられないのがあまりに不気味だった。
「ようやく見つけましたよ、ルルアムス」
おまけに少女はエクターの誰何には答えず、抑揚のない声色で突然ルルの名前を呼ぶ。彼女の硝子玉のような両目に見据えられたルルはびくりと飛び上がり、怯えた様子でラッティへと縋りついた。すると彼女らをかばうように、刹那、木と骨でできた短槍を握ったクワトが少女の前に立ちはだかる。
巨大な体を前屈させて、今にも飛びかかろうかという構えを見せたクワトの表情は、普段の彼からは想像もできないほどに凶暴だった。漆黒の鱗に皺を寄せ、少女を睨んだクワトは低くうなるや、ずらりと並んだ牙を見せつけるように、吼える。
「コェ……アフディ・ダレウ・ガドゥンガ!」
「……口を慎みなさい、異形の徒よ。わたしはイヴ。人間が精霊とか天使とか呼ぶものです」
「て、天使様だって……!?」
クワトが鰐人語で何と叫んだのかは分からないが、それに答えた少女──名をイヴというらしい──の言葉を聞いて飛び上がったのはヨヘンだった。
というかあの少女はまさか、クワトの話す鰐人語を理解したとでもいうのだろうか? 彼女自身はハノーク語を話しているのに?
(いや、待てよ。そういえば……)
似たような現象を、グニドはかつてルエダ・デラ・ラソ列侯国で体験したことがあった。あれは確か、カルロスが正義の神に乗っ取られ暴走したときのことだ。
彼の肉体を我がものとしたツェデクは、グニドが話す竜語を当然のように理解して会話を成立させていた。ツェデクに乗っ取られる前のカルロスは、竜語などまるで解さなかったにもかかわらず、だ。
(つまり神には、異種族の言語も瞬時に理解する力がある……ということはこのイヴとかいう仔人も、本物の〝天使〟なのか)
──天使。
それは人に似て人ならざる者であり、神の使いとして天より現れる存在だと、グニドもかつてポリーやヨヘンから聞かされたことがあった。『預言者』が人の身で神の声を聞く者を指すならば『天使』とは神の分身であり代弁者だ、と。
言われてみれば、魂のない人形のようなイヴの気配は、確かに〝人に似て人ならざる者〟という形容がしっくりくる。
されど彼女が真に神の使いだというのなら、グニドにとってはまぎれもない、敵だ。何せ列侯国で遭遇したツェデクも、無名諸島に災いをもたらした神領国の手先も、神の名の下にルルを連れ去ろうとしたのだから。
「ば……バカ言うんじゃないよ。天使といったら白い羽を生やして、頭に光の輪っかを乗せてるもんだろ。だ、だいたいアンタが本物の天使だっていうんなら、なんで博愛の神に選ばれた神子を襲うのサ?」
「……なるほど。では、これで満足ですか?」
と言うが早いか、イヴはやはり無表情のままパチンと右手の指を鳴らした。
すると直後、彼女の背中にバサリと白い翼が生え、頭上には浮遊する光の輪まで出現する。グニドは目を疑った。先程舞台の上に忽然と現れたのといい、たったいま目にした幻術といい、まさか彼女も希術師なのだろうか?
だがこんな幼子が、ここまで希術を使いこなせるものなのか。それが可能なのはやはり、彼女が本物の天使であることの証左のごとく思われるが……。
「ユニウス・アマデウス・レガリアは確かにエハヴの神子ですが、残念ながらエハヴは他の神々に背を向けて天界から離反しました。よって神子たるユニウス共々、エハヴは魔道に堕ちたのです。ですからエハヴとエハヴを信奉する者どもは、神の名の下に裁かれなくてはなりません」
「ば、馬鹿な……エハヴ神が天界に背かれただと? そのような話は古今東西聞いたことがない。幼気な少女に剣を向けるのは騎士道に反するが、我らが宗主を愚弄するのであれば容赦はせんぞ!」
「愚かな……おまえたちはエハヴに踊らされているのですよ。あの者は博愛という名の甘言でもって人類を誑かし、神の意思に背かせようとする。現にユニウス・アマデウス・レガリアは何者も迫害しない共栄共存の理念の下に、一度は大陸を狂わせた魔女の存在すら容認しているではありませんか」
「確かに大魔女ヘレは千年にも渡る災いをもたらしたが、それは個人の罪であって口寄せの民の罪ではない。天使の名を騙って詭弁を弄すな!」
「おや……果たして本当にそうでしょうか。魔女どもの操る邪術が、エマニュエルを破滅に導くものだとしても同じことが言えますか?」
「何……!?」
「『無知は罪なり』……堕天した神に毒されし哀れな民よ。あくまでも天意に背くと言うのなら、今ここで──滅びなさい」
何の感情も窺えぬ声色でそう吐き捨てるや否や、イヴはエクターに向かって右手を翳した。途端に彼女の頭上の光輪が閃き、ほんの瞬きの間に生まれた数本の光の刃が彼女の周囲に浮き上がる。その刃の切っ先がエクターに向いているのは誰の目にも明らかだった。ゆえにグニドは咆吼し、エクターを守るべく飛び出していく。
『グニド、ダメ!!』
背後でルルが叫ぶのが聞こえた。
しかしここでグニドが退けば仲間が傷つく。何よりルルに危険が及ぶ。
グニドの戦士の勘がそう言って、激しく警鐘を鳴らしているのだ。
「身の程を知りなさい、まざりもの」
ところがイヴは、やはり冷淡すぎるほど冷静だった。瞬間、エクターに狙いを定めていたはずの刃が一斉にグニドへ向き直り、放たれる。
だが対するグニドは長年、戦場で絶えず神術の脅威に晒されながらも生き延びてきた猛者だ。よってこの手の術で生まれた刃が、標的の肉を貫くための質量を帯びていることを知っている。つまり、触れられるということだ。
而してグニドは一本目の刃を躱し、二本目は大竜刀で払いのけ、続く三本目も振り向きざま尻尾で叩き落とした。と同時に肩の鞘から飛刀を引き抜き、振り抜いた尾の慣性を活かして即座にイヴへ向き直る。そうしながら限界まで身をよじり、四本目の切っ先をギリギリで避けつつ飛刀を放った。が、完璧な不意討ちであったにもかかわらず、イヴは右手のひと振りでグニドの飛刀を払いのける。
途端に「バチン!」と火花が弾けるような音がしたところを見るに、恐らくは神術か希術によって退けられたのだろう。されどグニドが放った飛刀はあくまで目眩ましだった。何しろグニドには分かっていたのだ。
自分が隙を生み出せば、クワトがそこへ飛び込んでいくだろうことが。
「グルルァアッ!!」
その刹那、イヴの意識は間違いなくグニドに向いていた。ゆえにクワトも、捕らえた、と思ったはずだ。かくて彼が突き出した短槍の白い穂先は、戦士ふたりの確信に違わず、イヴの体を貫いた──かに見えた。いや、確かに貫いたのだ。
ただ肉を突き刺した手応えも、ほとばしる血飛沫もなかっただけで。
「呪われよ」
直後、あまりの手応えのなさに愕然とするクワトに向かって、イヴがスッと右手を翳した。彼女の掌の中心には、またしても光が集まり出す。まずい。
グニドはクワトに向かって思わず『逃げろ!』と竜語で叫んだ。
が、はっと我に返ったクワトが、とっさに跳び退こうとしたときにはもう遅い。
何故ならクワトの巨体は床に固定され、動かない。氷の神術によく似た氷結の花がパッとクワトの足もとに咲き、彼の両足を冷気で絡め取ったためだ。
「クワト……!!」
ラッティたちの叫びを聞きながら、グニドは瞬時に床を蹴った。ほとんど同時にヴォルクも駆け出している。間に合え。そう念じながら咆吼したグニドの視線の先で、イヴの掌から光線が放たれた。白い尾を引く矢のごとく発射された光線は、寸分違わずクワトの心臓を狙っていた。が、その切っ先が彼の胸を貫く寸前、突如として光線が破裂音を上げ、見えざる何かに捩じ曲げられたかのごとく歪曲する。
「な……!?」
ジジジジ、と震動するような音を上げて軌道を変えた光線は一拍の静止ののち、再びギュンッと加速して、あろうことか天井に突き立った。何が起きたのかは分からないが、これは好機だ。そう思ったグニドは迷わず飛び込み、自らの体を砲岩のごとく使ってクワトに体当たりした。竜人の全体重を乗せた一撃は、同じ巨躯を誇る鰐人をも軽々と吹き飛ばし、彼を床に縫いつける氷の花ごと引き剥がす。
かくてふたりが縺れ合いながら転がるうちに、呼吸を合わせて飛び出したヴォルクが正面からイヴへと斬りかかった。するとイヴは、今度はあえて攻撃を受けるという選択をせずに回避する。背中の羽を使ってふわりと跳びのいたイヴの挙動は、こんなときだというのにどこか優雅で、余裕さえ感じさせるものだった。
が、半枝(二・五メートル)ほど跳びずさったのち、ゆっくりと着地したイヴの表情は意外にも険しい。直前までただのひと片も感情がないかのごとく振る舞っていた彼女が苦々しげに眉を寄せ、目を細めたのだ。
「……深淵の魔女……」
かと思えばイヴは何事か小さくうめき、その場にいる誰でもない虚空をじっと睨み据えた。一体何を見つめているのかと、気になったグニドはイヴを視界に入れたまま焦点だけ動かしてみる。途端に図らずもぎょっとして、グニドは声を上げそうになった。何故ならそこにはいつの間にか、深黒の外套に身を包み、フードを目深に被った人物が佇んでいたためだ。
「ま……マギサどの!」
直後、ぱっと目を輝かせたエクターの歓声を聞き、グニドはますます度肝を抜かれた。深淵の魔女、マギサ。
それは他でもない、悠久の星霜を生きる口寄せの民の長の名だ。