第一〇九話 煮られ鳥
グニドとクワトは、タプイアと呼ばれる浴場の入り口をくぐったところであんぐりと口を開け、ふたり仲良く立ち尽くした。
──鳥だ。
何だか普通の鳥に比べて顔が平面的だが、しかし瞑った両目の間に黒い嘴じみたものが生えている。ということは、あれは鳥だ。背丈が人間ほどもある、巨大な鳥だ。その鳥が濛々と立ち込める湯気の中、床に掘られた石の釜で煮られている。
あれでは焼き鳥ならぬ煮られ鳥だ。よもやタプイアとは、巨鳥を調理して客に振る舞う施設だとでも言うのだろうか。では何故浴場に入る前、たくさんの籠が棚に並んだ前室のようなところで服を脱ぐよう指示せられたのか。まさか、自分やクワトもあの白い出汁に満たされた釜の中で煮トカゲにされようとしている?
そうだ。モアナ人は蜘蛛や蠍まで揚げて食うほどの悪食家だ。
だとすれば、あり得る。この国では滅多にお目にかかれない二足歩行の巨トカゲを、おいしく調理して食ってやろうと企まれている可能性が──
「あれ。もしかして……ウーチェン教授? ウーチェン教授じゃないですか!?」
というグニドの困惑と戦慄を余所に、瞬間、頭の上で誰かが叫んだ。
誰か、というのは言うまでもない。アンガ・バザールを出た際に、ヴォルクの頭からグニドの頭へ席替えしたヨヘンだ。
すると彼の頓狂な声に反応して、巨鳥がむっつりと眠っていた目を開けた。
瞼は半分垂れたまま、煮られすぎたせいか少しぼんやりしているようだが、しかし正面に立ち尽くすグニドらを見つけるや巨鳥は短い嘴を開く。
「ホッホウ……誰かと思えば、君はスダトルダ教授のところのヨヘン君ではないかね。まさかこんなところでかつての教え子に会えようとは、奇遇なことだ」
「喋ッタ……!?」
途端に巨鳥の嘴から発せられた人語を聞き、グニドは思わず動揺してしまった。
だが間違いない。今の声は確かにあの鳥から聞こえた。
何せ浴場にはグニドら獣人隊商の他には、ヨヘンが〝ウーチェン教授〟と呼びかけた煮られ鳥しかいないのだ。ということはアレが喋ったとしか思われないではないか。けれどまさか人の言葉を話す鳥がいるなんて、とグニドが絶句していると、ときにヴォルクが、まったく動じていない様子で頭上のヨヘンを見上げて言った。
「ヨヘン……知り合い?」
「おう、知り合いも知り合いの大知り合いよ! ウーチェン教授はオイラが学生時代に世話になった、エルビナ大学の文化人類学教授だ! でもってセムのおっちゃんの元同僚!」
「文化人類学?」
「あー、おまえさんたちにはあんまり馴染みのない学問かもしれないが、要は民族学の発展型というか派生型というか……簡単に言や、人種や種族ごとにそれぞれ違う生活文化とか、社会構造を研究する分野のことだよ。オイラは大学を卒業したらすぐ冒険者になるって決めてたから、旅に出る前に余所の国や民族の社会について勉強しとこうと思って、ウーチェン教授の研究室に出入りさせてもらってたんだ」
「へえ。ってことはヨヘンの恩師か……グニド、クワト。あの人は梟人って呼ばれる、梟の獣人だよ。ヨヘンが通ってた大学の先生だって」
「オ、オウル……?」
「うん。アビエス連合国には、クルチャク鶏王国っていう鳥人族……つまり鳥の獣人の王国があって、梟人はそこの一部族。無名諸島で暮らす人間もラナキラ族とかヴォソグ族とか、色んな部族に別れてたろ。あんな感じで、鶏王国でもいくつかの部族が一緒に暮らしてるんだ」
「ホッホウ……これはこれは、我が国の内情に通じているようだね、融血児の青年よ。見たところ、君は狼人の血筋かな?」
「はい。ヨヘンの旅仲間で、ヴォルクといいます」
「ふむ、ふむ。スダトルダ教授の甥っ子が、旅の融血児にくっついて国を出たとは聞いておったが、君がそうか。私の教え子が世話になっておるようだね」
「〝ヒューリアン〟……?」
「ヴォルクやラッティみたいな半獣のことだよ。ウチの国では〝半獣〟って呼び方は差別的だからって、みんなそういう呼び方をしてんだ。何せ〝モング〟の語源はハノーク語の〝モングレル〟──〝雑種〟って意味だからな」
「ナラバ、ヒューリアン、ハ?」
「〝人間〟と〝獣人〟をくっつけた造語だよ。獣人至上主義者の中には〝シアリマン〟って呼ばないと怒り出す連中もいるけどな」
なるほど、と、頭上から聞こえるヨヘンの解説にいちいち納得しながら、アビエス連合国には〝獣人至上主義〟なるものまで存在するのか、とグニドはいささか驚いた。ヨヘンの並べたハノーク語を竜語に直して解釈すれば、獣人こそこの世で最も尊いと主張する者たち、ということか。しかしグニドの暮らしていた北西大陸では、少なくとも獣人は常に人間の下に見られていた。
様々な種の獣人が束になっても、数の上では人間に敵いっこなかったからだ。されどグニドの解釈が正しければ、連合国には獣人の方が人間よりも優れていると考える者たちがいるらしい。これは北西大陸ではまったく考えられなかったことだ。
グニドらも非力な人間たちを嘲笑って暮らしてはいたが、だからと言って竜人こそが世界の支配者になるべきだ、なんて大それたことを言う者はいなかったし。
「ふむ……ところで、ヨヘン君。そちらのふたりは私も見たことのない種族のようだが、外見的特徴から察するに、彼らは……」
「ええ。こっちの首の長いのは竜人族のグニドで、隣のゴツいのは鰐人族のクワトです。ふたりとも旅先でできたオイラの舎弟なんですよ! チュチュチュチュ──ぐえぇ!?」
「……オレ、オマエノ〝シャテー〟、違ウ」
「ず……ずびばぜんでじだ……ほんの冗談なんで、命だけはお助げを……!」
「ホッホウ、こりゃあたまげた。竜人と鰐人──生きてお目にかかるのは実質不可能と思われていた種族に会えるとは、何たる僥倖か。ホッホウ、ホッホウ」
と、グニドの手の中で今にも握り潰されようとしているヨヘンを無視し、ウーチェンはまだ半分眠っていたはずの眼を見開いた。
その双眸が、ちょっとびっくりするほど真ん丸だ。
左右それぞれにグニドとクワトを映した瞳は、まるで黄金の満月のよう。
かと思えば彼は折り畳んで頭に置いた布の上から、丸い硝子がふたつ連結された妙なものを手に取って、ちょんと嘴の上に置いた。硝子はウーチェンの瞳よりひと回りほど小さいが、黒い枠の中にぴったり収まっていて、湾曲したふたつの枠の繋ぎ目が嘴の上に置くのにちょうどいい形をしているようだ。
というかそれ以前にグニドが驚いたのは、あの巨鳥、なんと翼の下に腕がある。
釜の中では羽が閉じられていて気づかなかったが、彼が白地に鳶色の斑が飛んだ翼を開くと同じ色の羽毛を帯びた腕と黄色い鱗に覆われた四本指の手が現れ、ウーチェンは指先に生えた鋭い爪を使って器用に二連硝子を嘴へ乗せてみせたのだ。
しかも面食らっているグニドを余所にウーチェンは水音を滴らせながら立ち上がり、両手と同じ鱗仕立ての足を上げて釜から出てきた。
そうして猛禽を思わせる爪がタイルを噛む音をカツカツと響かせながら、グニドらへ歩み寄ってくる。白く濁っていた湯から出て全身があらわになってみると、彼はもはや人なのか鳥なのかよく分からない、そんなあやふやな生き物に見えた。
ほとんど人型に近い犬人とも、どちらかと言えばネズミが二足歩行をしているのに近い鼠人とも違う。言うなれば巨大な鳥が人間へ変態しつつある途中のような、およそグニドが出会ったことのないタイプの獣人だ。
「ホッホッホッホ、驚かれておるようですな、旅のお方。私の名はムドゥル・ウーチェン。先程そこのヴォルク君が話してくれたとおり、クルチャク鶏王国は常世の森出身の梟人です。鳥人をご覧になるのは初めてですかな?」
「ウ、ウム……オレ、鳥ノ獣人、イルコト、知ラナカッタ……」
「ホッホウ、竜人族は今も独自の言語と社会構造を維持したまま暮らしていると聞いておりましたが、ハノーク語もお話しになるのですな。ということは、そちらの若き鰐人殿も?」
「いえ……クワトはつい三日前に仲間になったばかりで、これからハノーク語を習得するところなんです。簡単な単語くらいなら通じるんですが」
「それはそれは、言葉が通じないのに無名諸島を出てこられたというわけですか。だとすれば噂どおり、鰐人というのは非常に勇敢な一族であるようだ」
としきりに感心しながら、ウーチェンは嘴の上の二連硝子をくいと持ち上げて、その向こうの眼を輝かせた。さっき街でマドレーンがかけてくれた〝凡化〟の魔法はまだ効いているはずなのに、この鳥人はグニドらに興味津々なようだ。
「うぐ……まあ、ウーチェン教授……お互い素っ裸のまま立ち話ってのも何ですから、まずは湯船に浸かりましょう……積もる話はそれからでもいいですか?」
「おお、確かにそうだな。いやはや、私としたことがお恥ずかしい。長年研究を夢見てきた対象との邂逅に、年甲斐もなく興奮してしまいました。ささ、まずはこちらへ。歓迎の印にお背中をお流ししましょう」
ホホホホホ、と笑いながらそう言って、ウーチェンは初めてタプイアへやってきたグニドらのために浴場を案内してくれた。
どうやらさっきまで彼が煮られていたあの釜は、入ったものを茹でて食ってしまうための罠ではなく〝温泉〟と呼ばれる地下水を汲み上げた人工の泉らしい。
この〝温泉〟は地中の熱で温められ、手を入れてみると人肌くらいの温度に保たれている。これに体を浸すと、常夏の島の気温に比して涼しいだけでなく、湯に溶けた大地の栄養が皮膚から吸収されて大変体に良いのだそうだ。
ゆえにヴォルクから教わった〝シャワー〟なる雨降らし器を使い、全身の汗と汚れを洗い流したグニドは早速、白濁した湯の中へ体を沈めてみた。
何やらただの水を沸かしただけのものとは違う、ちょっと変わったにおいのする湯だが、胸もとにかけてみると少しだけぬるぬるする。ウーチェン曰く、このぬるぬるこそが湯を白色に染めている大地の栄養らしく、ウーチェンの出汁ではなかったのだなと、グニドは掌に汲んだ湯を鼻先でくんくん嗅ぎながら思った。
「おおっ、いいぞ、クワト! こいつは極楽だあ、チュチュチュチュ!」
他方、クワトは三日ぶりに水に浸かれたのがよほど嬉しいと見えて、気づけば人型ではなく巨大な鰐の姿になっている。そうして白い湯の中をすいすい泳ぐクワトの背中に桶を乗せ、湯船代わりに浸かったヨヘンが子供のようにはしゃいでいた。
ちなみにグニドが最初石の釜だと思った温泉は大きくふたつに区切られている。
ヴォルクの説明によれば、片方は毛のある獣人用で、もう片方は毛のない獣人と人間用らしい。現在クワトが泳いでいるのは他に利用者がいない後者の方だ。
グニドも獣人の中では毛のない方だから、最初はあちらの湯に浸かろうかと思ったのだが、同じくほとんど人間に近いはずのヴォルクが尻尾の毛を気にして前者に入ると言うので彼に倣った。全身鱗で覆われた鰐人とは違って、竜人には頭頂から肩の付け根まで届く鬣があるためだ。
そして羽毛まみれのウーチェンももちろん、グニドと同じ湯船に浸かっている。
何か重要な儀式の一環なのか、折り畳んだ手拭いを再び頭に乗せながら。
「ホウ……やはりモアナ=フェヌア海王国の温泉はよいですなあ。アビエス連合国には他にも温泉を観光資源としている国がいくつかありますが、いずれも私にはいささか熱すぎましてね。こうしてゆっくり長時間浸かっていられる湯の方が、年寄りの身には有り難いものです」
「……あれ? ていうかそもそも教授は、なんで海王国にいるんですか? まさかどこか悪くして、湯治に来たとかじゃあないですよね?」
「ホッホッホッ、安心なさい、ヨヘン君。確かに私も近頃は老いを痛感する機会が増えるばかりだが、幸い五体は満足だ。それでまだ体の自由がきくうちにと、年末休暇を利用してフィールドワークに来てみたのだよ」
「〝フィールドワーク〟?」
「私のように研究対象が大学の〝外〟にある学者が、現地へ赴いて調査研究を行うことです。先程ヨヘン君が説明してくれたとおり、私は様々な国や民族の文化について調べている文化人類学者でしてな。今回はモアナ=フェヌア海王国独自の祭事について学ぶためにやって参りました。アビエス連合国は多種多様な種族や民族が集う国家ですが、中でも本国から遠く離れた島国である海王国は、古の時代から伝わるユニークな文化や宗教観の宝庫なのですよ」
「色んな国が地続きになっている大陸と違って、島国は他国の文化が流入しにくいから……ですか?」
「ホウ、ご明察です、ヴォルク君。そういった地政学的特色のルーツや変遷を解き明かし、記録として後世に残すのが私の仕事。ゆえに今回は海王国の新年祭で行われる独自の催しものについて調べに来たというわけです。大学が長期休暇に入っているときでないと、そう何日も研究室を空けるわけには参りませんからな」
「……? ダガ、海王国ノ文化、調ベテ、ドウスル? ナニカ、役ニ立ツカ?」
「ええ、もちろん立ちますとも。モアナ人の国民性や傾向を理解する上で、彼らの生活を解き明かすのは非常に大切なことです。人は何故、生まれた国や信仰する神によって異なる民族性を有するようになるのか。その理由を知ることは、世の中から差別や迫害を失くすための重要な一歩になるでしょう」
「差別ヲ、失クス……?」
「そう。自分と異なる考えや理解し難い文化にも、それが生まれるに至った確固たる理由が存在する。理由を知れば納得が生まれ、許容や譲歩が可能となる。つまり無用な争いごとを避けるための寛容さを世にもたらすのが、文化人類学と呼ばれる学問であるのです。もっと簡単に言うなれば、異なる民族が互いを許したり、理解したりするための足がかりを作るのが文化人類学者の使命……ということになりますかな」
そう言ってなおもホッホッホッと笑いながら、ウーチェンは爪の先で嘴の付け根を掻いた。彼の話は連合国に来たばかりのグニドには少々難しいが、しかし言わんとしていることは何となく分かる。要するにウーチェンは、モアナ人という人種を〝生まれ〟や〝血筋〟ではなく、彼らの文化や生活によって定義しようとしているわけだ。だとすればなかなか面白い試みだな、とグニドは思った。
(なるほど。モアナ人は普段、こういうものを食ってこういうものを信じ、こういう暮らしを送っているからこういうことをする……という〝理由〟が分かれば、むやみにモアナ人を嫌悪したり、おかしいと思う者が減るという考えなのか。言われてみれば同じ人間でも、竜人をまったく恐れない砂王国人と、見ただけで逃げ出す列侯国人がいる。その違いは何故生まれるか、と言われれば、確かに暮らし方がまるで違うからだ)
水や食い物の乏しい砂漠で暮らす砂王国人は、生きるために余所の国を侵略し、糧を奪ってこなければならない。だから人間よりも遥かに優れた戦闘種族である竜人と同盟することを選び、結果として互いに互いを恐れない関係を結んできた。
他方、列侯国人はそうした砂王国人と共に攻めてくる竜人を恐れ、見ただけで竦み上がる。彼らはいつも略奪される側であり、そういう歴史が列侯国で暮らす人間に竜人への恐怖と敵愾心を植えつけた。
実際、グニドがかの国で人間たちからひどい差別を受けたときも〝仕方がない〟と思えたのは、彼らが怯える理由を知っていたからだ。
ゆえにグニドもむやみに彼らを嫌ったり憎んだりせずに済んだ。一方的に恐れや怒りをぶつけられるのが悲しくなかったと言えば嘘になるが、だからと言って〝やはり人間とは分かり合えない〟とそっぽを向いていたら、自分はきっと一生かかっても、この世界の広さや美しさに気づくことができなかっただろう。
「フム……ソウカ。文化人類学、トテモ、面白ソウダ」
「ホッホウ、それは何とも嬉しいお言葉。ではぜひ貴殿らにも我が研究に協力していただけますかな? 実は私も以前から、アビエス連合国以外の国で暮らす種族や民族の研究がしてみたいと思っていたのですよ。結局国内の研究だけで手一杯なまま、こうして老境を迎えてしまいましたが……」
「ハイハイハイハイ! そういうことならオイラも協力しますぜ、教授! こう見えてオイラも学士の端くれ、単に道楽で世界を旅してきたわけじゃあないんでね! 今日までグニドから聞き取ったり、クワトの故郷で見聞きしたことは全部記録に残してますよ! 読みますか!?」
「ホッホウ、素晴らしい。さすがはヨヘン君だ、ぜひともその記録は拝見したい。竜人族や鰐人族の研究は、未だ誰も手をつけたことのない前人未踏の新分野……君の記録を論文としてまとめて世に出せば、きっと学会は大騒ぎだぞ」
「チュチュチュ! いやあ、オイラとしては論文というより冒険記として世の中に発表したいと思ってるんですけどね。学生時代にお世話になった教授のためなら、共著って形で論文を出すのもやぶさかじゃあないですよ、チューチュチュチュ!」
と、ヨヘンは上機嫌で桶の縁に寄りかかり、意味もなくバシャバシャと湯を蹴立てた。どうやら近頃、妹のアルンダにやり込められてばかりいたところに、自分の活躍を称讃してくれる相手が現れて浮かれ切っているようだ。
が、刹那、白い水面から目と鼻と背中のトゲだけを覗かせていたクワトが、急に後肢で立ち上がって人型に戻ったものだから、ヨヘンは桶ごと転がり落ちた。
彼の悲鳴は転覆した桶と共に湯に沈み、ぶくぶく言っているのをクワトが「あ」と言いたげに眺めている。
どうやらヨヘンが落ちるのを想定せずに獣化を解いてしまったらしい。
「そういえば……話は変わるんですけど」
「うん? 何だね、ヴォルク君」
「エルビナ大学の教授、ってことは、ムドゥルさんもマドレーンさんのことは知ってますよね?」
「ホッホウ、口寄せの郷の出身にして希術学者のマドレーン・マギステル教授のことかね? もちろん知っておるとも」
「そうですか。実は今、隣の女湯にいますよ」
「ホ?」
「俺たち、北西大陸のルエダ・デラ・ラソ列侯国から来たんです──マドレーンさんと一緒に、空艇団の飛空船で」