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無口な雲
―無口な雲―
「今日雨降るのかなぁ?」
友人が空を見て心配そうに言う。
確かに今日は雲が多い。
けれど、雨は降らない。
「大丈夫だよ。今日はただの曇り」
私がそう断言できる理由は、まぁ雨の主が見当たらないことと…
「…」
無言でこちらを見ている人影にある。
(…相変わらず無口だ)
彼は雲の主で叢雲という。
割と毎日見かけはするが、会話はあまり無い。
たまにポツリと言葉を発するけどね。
彼は雨が降るときは見かけないので、今日は降らないのだろう。
「あ、あたし隣のクラスに行ってくる」
友人が席を立ち、窓際には私一人となった。
「や、叢雲」
小声ではあるが、口をしっかり動かしてそう言う。
コクリ。
叢雲が無言でうなずくを見て、笑った。
「今日、降らないよね」
一応自身はあるが聞いてみる。
すると、視界から叢雲が消え…
「明日は…傘」
すぐ近くでボソッと低めの声が聞こえた。
不器用だなと思いつつ、私は笑ってうなずく。
いつのまにか雲の切れ間から青空と太陽が覗いていた。
またねとばかりに叢雲の影がゆれて消えた。
―叢雲【むらくも】―