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日常幻想  作者: 月御影
13/13

めぐり

-めぐり-

薄曇りの空を仰ぐ。ああほら、見つけた。

「おはよ、叢雲」

そう声をかければコクリと返事が返ってくる。

私は箒を動かしていた手を止め、近くにあった木にもたれる。

あ…眠い。

と、不意に気配を近くに感じ、ちらりと見てみると、叢雲も同じように木にもたれていた。

「暖かくなったね…ふぁ…」

「…」

じぃっと私を見てる。めっちゃ見てる。私、今普通にあくび見られた。

「う…コホン。暖かいと眠くなるよね」

「…」

あぁ、お願いうなづいて。

薄曇りの暗さが私の瞼を重くしていく。叢雲って無口だから…余計眠気が…

「…もうすぐ、夏」

「…へ?」

ぼそっと叢雲の低い声が聞こえた。

もうすぐ夏…そっか、もう6月になるんだっけ。

「…梅雨が来るね」

「…」

コクリ。うなづいた叢雲は少しさみしそうだった。

そっか、叢雲は雨の日出てこないんだっけ。梅雨の時期はなかなか会えなくなる。

「大丈夫。待ってるから」

眠気で少しぼんやりしながら言う。

「いつだって誰だって待ってる」

確かに春は終わってしまう。雨が降ると晴れなくなる。

けれど、必ずみんなどこかにいて、また会いに来てくれるから。

雲の上は晴れだし、そのもっと上には星や月が輝いているし、海の向こうに新しく春が訪れる。

そういうことなんだ。

「…ありがとう」

つぶやきが聞こえた気がする。


叢雲が…いや、叢雲だけじゃない。目に映るもの、映らないものそのすべてが笑ったような気がした。


季節は巡る。

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