めぐり
-めぐり-
薄曇りの空を仰ぐ。ああほら、見つけた。
「おはよ、叢雲」
そう声をかければコクリと返事が返ってくる。
私は箒を動かしていた手を止め、近くにあった木にもたれる。
あ…眠い。
と、不意に気配を近くに感じ、ちらりと見てみると、叢雲も同じように木にもたれていた。
「暖かくなったね…ふぁ…」
「…」
じぃっと私を見てる。めっちゃ見てる。私、今普通にあくび見られた。
「う…コホン。暖かいと眠くなるよね」
「…」
あぁ、お願いうなづいて。
薄曇りの暗さが私の瞼を重くしていく。叢雲って無口だから…余計眠気が…
「…もうすぐ、夏」
「…へ?」
ぼそっと叢雲の低い声が聞こえた。
もうすぐ夏…そっか、もう6月になるんだっけ。
「…梅雨が来るね」
「…」
コクリ。うなづいた叢雲は少しさみしそうだった。
そっか、叢雲は雨の日出てこないんだっけ。梅雨の時期はなかなか会えなくなる。
「大丈夫。待ってるから」
眠気で少しぼんやりしながら言う。
「いつだって誰だって待ってる」
確かに春は終わってしまう。雨が降ると晴れなくなる。
けれど、必ずみんなどこかにいて、また会いに来てくれるから。
雲の上は晴れだし、そのもっと上には星や月が輝いているし、海の向こうに新しく春が訪れる。
そういうことなんだ。
「…ありがとう」
つぶやきが聞こえた気がする。
叢雲が…いや、叢雲だけじゃない。目に映るもの、映らないものそのすべてが笑ったような気がした。
季節は巡る。