夜桜
―夜桜―
「昼は大変でありんしたなぁ」
夜夜様が優美に笑う。
それに苦笑を返してお酌をする。
「ずっと掃除してたんだってっ?お疲れ様っ☆」
「ゆかりねぇ、おつかれさま?」
そう、花影と途中から佐保姫さんの二人が暴走したために、神社が花で埋まりかけたのだ。
それを掃除するのに二〜三時間はかかった。
「大丈夫。ちょっと腕がだるいくらいだし」
心配そうにこちらを眺める朧ちゃんを軽く撫でる。
くすぐったそうに笑った。
と、不意に私の頭にも手がのる。
「ま、月夜の夜桜くらいはゆっくり見な、嬢ちゃん」
「そうね。こちらは静かだし」
ぐりぐりと春月に撫でられ、花見月にお団子を渡される。
月一族は世話好きなのかな。
「にぃ!ねぇ!おぼろにもー!」
あ、この子のせいか。
「まったく…おのこは乱暴でありんすねぇ。ほれ、こちへ来なんし」
夜夜様に手招きされて近づくと、櫛でするすると乱れた髪が梳かされていく。
「ありがとうございます…あ、花びら」
「ゆかりねぇ!おはなとったぁー!」
ぼんやりした月明かりの中で薄桃色の花びらが雪のように舞っている。
何だか幻想的だと思った。
「あっ紫姉っ見て見てっ!」
星芒に言われて夜空を見ると、キラリと星が流れる。
「わぁ…」
「ふっ良いことありそうでありんすねぇ」
「きらきらがしゅーって!」
「あぁ、綺麗だったな」
「お願いできたかしら?」
桜舞う夜の中で
こんな日常がずっと続けばいいなと
そっと願う私がいた