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日常
―日常―
私、水影 紫は人には見えないものが見える。
それは幽霊の類では決してなく、そこにある日常の風景が少しばかり形を持ったもの。
そう、例えば…
「ね、そこジャマ」
ここ、神社のど真ん中で寝そべっている何とも罰当たりな奴とか。
「相変わらずオレの扱い雑だな」
「当たり前。丁寧にする意味ないし」
ぺしぺしと箒で叩いてやる。
「痛ッ!止めやがれ!これでもオレはっ…」
「ハイハイ、分かってますよ昼の主」
ため息混じりに台詞を奪う。
そう、この実に適当そうな青年は昼の主…つまり、“昼”という風景が形を持ったもの。
名を…たしか陽炎って言ったかな。
「陽炎?」
「何で疑問系なんだよ」
「あ、合ってたんだ」
のんびりした休日の昼、いつもの風景。
何か喚いてて騒がしい気もするけど…ま、気にしない。
「てめっ、いい加減名前覚えやがれ!!」
「あーうるさい。いいじゃん合ってたんだし」
今日も私は、日常の中に幻想を見る。
―陽炎【かげろう】―