初恋のラブレター。
僕は初めて恋をした。
それは高校に入学してから数えて、三度目の春だった。
それは突然に現れて、僕の心をかき乱した。それまでこんな気持ちになったことがなかった僕は、ひどく困惑したし、騒然としていた。この気持ちをどこにぶつければいいのか、わからなかった。
そんな僕の逃げ道は、絵だった。その日、その時、感情の赴くまま筆を運んだ。時には荒く、時には繊細に。思ったことを、感じたことをそのままに筆にのせた。
そうやって描いた絵は、何時の間にか賞をとっていた。審査員曰く、繊細かつ大胆な、若者の強さが描かれていたそうだ。僕はその評価にどうしても納得できなかった。
時はたち、その絵は文化祭で美術の作品発表の場で飾られることになった。題名は、想い。どこか違うような感覚があったが、これ以上にしっくりくる言葉が思い浮かばなかった。
そして、文化祭当日。
僕は、例の絵が展示されているという美術室に足を運んでいた。それがどんな風に展示されているのか、見にきた人がどんな評価を下しているのか、そんなことに興味はなかったけれど、なぜか僕はそこに行かなければならない気がしたのだ。
足早に人混みをすり抜け僕が美術室を訪れた時、そこは静寂に包まれていた。やっぱり気のせいだったのかと踵を返した時、美術室の扉は開いた。
誰だろう。
そんなことを頭の隅で考えながら、僕は他の作品を見ているフリをした。
入ってきたのは二人の女子生徒だった。
その片方は、紛れもなく僕の心を狂わせた原因そのもので、またわからない、どうしようもない感情が襲ってくるのだと覚悟した時、その子は静かに口にした。
"なんかこれって、甘酸っぱい初恋みたいだね"
と。
その言葉はストンと、僕の中で欠落していた隙間にぴったりとおさまった。
初恋。
それがこの答えだったんだと確信したんだ。
自分の中にあったどうしようもない感情たちが、すべて恋心だったんだと、僕が初めて理解した瞬間だった。
それから少しして、この絵の題名は、"初恋のラブレター"に変更することになった。首を捻る人もいるけれど、それがこの絵の本質で、僕の一番に伝えたかったものだ。
この絵に答えをくれたあなたに、この絵を送ろう。
『初恋のラブレター』
あなたを初めてみたあの日から、僕はあなたに恋をしていた。
この想いの答えがわからなかったから、感じたままに描いたんだ。君にこの感情を届けたかったから。伝えたかったから。
あなたのことが大好きです。
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