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Creators Heaven  作者: 八木山ひつじ
第四章
18/21

第十八話

 

 事前の予想に反して、エントランスホールは水を打ったように静まり返っていた。

 東都タワーの直下、ベースタウンと呼ばれる五階建てのビル内部には、定番の土産物屋や喫茶店、変わったところでは水族館やら蝋人形館などの「なぜこんなところに」と首を傾げざるをえないテナントが密集している。

 一階、照明こそ点灯してはいるものの、辺りに人の気配は皆無。外があの調子だからきっと、本丸であるここもぎゅうぎゅうの鮨詰めであろうと予想していたのが、いささか拍子抜けの感もある。

「――気を抜かない。どこに誰が隠れているか分からないんだから」

 見透かしたような沙希の注意に、正示は下げかけていた警戒のレベルを再度引き上げる。

 油断なく周囲を見回しつつ、、先行する沙希に声をかける。

「上、ですかね……?」

「でしょうね。なんとかと煙は高いところが好きと云うし、解放された人質の証言とも一致する」

 さらりと毒舌を置いて、沙希はフロア中央に位置する展望台行きのエレベーター乗り場を素通り、左方向の大階段へと向かう。

 慌てて後を追いながらも、正示はおそるおそる尋ねてみる。

「あの、エレベーターは使わないんですか……?」

「到着階で待ち伏せされていたらどうするのよ。あるいは途中で停まったりして閉じ込められたら? 少しは頭を働かせなさい」

 おそらく、沙希も緊張しているのだろう。いつもの叱咤にもまるで加減がない。落ち込みながらも五階分を慎重に、しかし駆け足で進み、ついには最上階までたどり着く。

 メリーゴーランドやコーヒーカップなど、一般的なデパートの屋上における定番どころが設置された屋上遊園地。頭上には、巨大な四脚に支えられた東都タワーが建っている。

「あそこから昇れるはず」

 言い、沙希はフロア中央に位置する展望台行きの階段へと向かう。

 広場を突っ切っていくその背を追って、正示もふう、と一息、改めて疾走を再開して、

 ――いきなりだった。

 背後、突然出現した誰かの気配は、身体が触れ合うほどの超至近距離にあって、

「はいはい、ちょこっと待ってねん?」

「ッ!?」

 耳元で囁かれ、正示は声も上げることさえできず、つんのめるようにして転倒する。

 沙希も即座に異常を察知、弾かれたようにその場で旋転し、

「――あなた、さっきの……!」

 這うようにして沙希の元へと辿り着き正示も改めて声の主を見やる。

 百七十センチはあろうかという長身に、驚くほどに高い腰の位置。そこから伸びるしなやかな手足と、風に散らばる金の長髪。先の放課後襲撃の際、沙希を人質にこちらの動きを封じた、桜庭と名乗った女性であった。

「アナタだなんて、ずいぶん他人行儀ねぇ。ありったけのラブとピースを込めて、『ゆぅかたん』って呼んで?」

 うふん、としなを作る桜庭を前に、正示は遅まきながら気付く。

 自分たちが進んできた広場に、遮蔽物となるようなものなどありはしない。しかし、こちらに近付いてくる足音など聞いた覚えもない。

 ――いったい、どこから、どうやって?

 ひとたまりもなく狼狽する正示を見、桜庭は楽しげに微笑んでいて、

「悪いけど、ここを通すわけにはいかないわねぇ」

 予想通りの言葉の後に、

「と。言いたいところな・ん・だ・け・ど」

 わざとらしいためを挟んで、桜庭は予想外の台詞を口にする。

「弟クンだけなら、トクベツに通してあげてもいいわよん?」

「な、は、え……?」

 いきなりの指名に、正示は盛大に困惑する。

 桜庭は、悪戯を成功させた子供のように満足げな笑みを浮かべて、

「せーちゃんもせーちゃんよねぇ。この期に及んであたしだけノケモノ扱いなんだもん。だったらこっちも、少しはワガママ言っても良くなくなぁい?」

 くねくねと身をよじらせる桜庭に注意を払いつつも、正示は必死に頭を働かせる。

 傍らに立つ沙希も、相手の真意が読めないのか訝しげに眉根を寄せており、

「……何を企んでいるのかしらないけれど、今、ここで、二人掛かりで貴女を倒してしまえば良いだけの話じゃないかしら」

 あくまで強気で応じる沙希に対し、桜庭は浮かべる微笑を深くして、

「あらん、試してみる?」

 そう言って、桜庭は背筋を伸ばす。

 踵を揃え、胸を反らし、あごを引く。

 ただそれだけの動作に、どうしようもなく目を奪われる。否応なく集中を強いられる。

 張った胸に手をあてて、桜庭は語る。

「あたしの保有アドレスは『舞踏家ダンサー』。一挙一動がそのまま能力発動へと繋がる、対絵画系アーティスト戦のスペシャリスト。〈セフィラスフェザー〉第一実働部副長の肩書きは、伊達じゃあなくってよ?」

 芝居がかった口上に、正示は息を呑む。

 自分や沙希など、アドレスの行使に際し専用のツールを用いる一般的なアーティストとは違い、己が身体をそのまま表現方法として用いる者がいる。『パフォーマー』と呼ばれる彼らは、アドレスによる表現に加え並外れた身体能力を有しているのが常であり、〈クリフォトスフィア〉でも特に危険視されているのだ。

 沙希の推測では、一善も『パフォーマー』に分類されるクリエイターなのでは、という仮説を立てていた。もし、彼女が一善と同レベルの身体能力を有していた場合、比較的発動の早い沙希の『ストーリーテラー』ならばともかく、自分の『イラストレイター』では援護はおろか、最悪、単なる足手まといにしかならない。

 どうやら沙希も同じ結論に辿り着いたらしい。正示を庇うように、一歩、前へ歩み出る。

 ブレザーの内ポケットから万年筆を取り出し、

「――行きなさい」

「沙希さん!?」

 反射的に問い返すも、沙希はもはや振り向きもせずに、

「私一人で十分よ。すぐに追いかけるから、先に向かってなさい」

 硬い声音で告げられた指示に、一拍を置いて、正示も頷きを返す。

 沙希の声には、強い覚悟と、深い信頼が滲んでいた。

 ここで足を停めれば、彼女の矜持を、託された信頼を汚すことになる。

 パートナーを組むようになって早二年。さすがに、それぐらいは理解しているつもりだ。

「……お任せします!」

 応え、正示は踵を返す。

 決して振り返らずに、一直線に展望台行き階段を目指す。

 

  ▼

 

 なにか仕掛けてくるなら今を置いてほかにない、と警戒を強める沙希の予想に反し、桜庭は微動だにしない。

 微笑を保ったまま、大階段を上ぼっていく正示を見、

「……ずいぶんとまた思い切ったわねぇ。弟クンのアドレスじゃあ、盾になる前衛がいないとうまく機能しないでしょう?」

 自分から通すと言っておきながら、桜庭はどこか心配そうに頬に手をあて眉根を寄せる。

 ここまできても、相手の意図が読めない。

 沙希は、内心の動揺を顔に出さぬよう気を付けながら、

「だからこそ、先に行かせたのよ。仮にここに残ったとしても、遠藤君、女性相手じゃ力を抑えるに決まっているし」

「信じてるのねぇ。それともラ・ブ・ゆ・え・に、かしら?」

 挑発的な台詞に、沙希は眉を立て険のある表情を作り、

「特務機関〈クリフォトスフィア〉、独立執行部隊所属――〈残酷アクゼリュス〉の早川・沙希」

 琥珀色の万年筆を右手に、真っ直ぐ桜庭を睨みつけ、言う。

「覚悟なさい。私は遠藤君のように甘くは無いわよ」

「うふっ、そそる台詞だこと」

 直後、示し合わせたかのように、両者が動いた。

 

  ▼

 

 階下、始まる戦いに後ろ髪を引かれながらも、正示はひたすらに上を目指す。

 全六百段、直線距離にして百五十メートルの大階段を、全速力で駆け上がる。高度と比例して、吹き付ける風は強くなっていく。

 切れ切れに届く罵声にちらりと下を見やれば、タワー横の駐車スペースに突入してきた特課機動の混合部隊と、クリエイターたちとが乱戦を繰り広げていた。物量に物を言わせて押し包まんとする特課隊に対し、クリエイターたちも大型のクリーチャーを前衛に出して徹底抗戦の構えだ。

 気が遠くなるほど長く、何層にも折り返し重なる階段を、一段飛ばしで上ぼる、上ぼる、上ぼる。

 呼吸の度に脇腹が痛み、いますぐへたり込んでしまいたい誘惑に駆られるも、がむしゃらに足を動かす。

 もはや歩くのと大差ない速度で最後の折り返しを曲がれば、ついにはゴールが目に入った。ぜぇぜぇと荒い息を吐きつつ扉を押し開け、展望台へと足を踏み入れる。

 照明が絞られているのか、内部は薄暗い。おかげか、窓の外に広がる東都の夜景がやけに眩しく感じる。

 深呼吸を一つ、二つ、三つ。

 未だ激しく乱れる息を無理矢理に押し殺し、慎重に歩を進める。

 物音一つしないフロアを進み、無人のカフェコーナーを通過したところで――

 見つけた。

 エレベーター前のひらけた空間に、一善はいた。

 三方に座し瞑目している香田、山里、宮元の、桜庭を除く〈セフィラスフェザー〉の幹部たちの中心。

 髪の長い少女に抱き止められて、ぴくりとも動かない一善の姿がある。

 そして、なにより、

「……やはりお前が来たか」

 ただ一人、場を傍観してた青年がゆっくりと振り返った。

 七年の月日を経てより一層鋭さに磨きのかかった双眸が、正示を見据える。

 背が伸びていた。髪形も変わっていた。それでも色濃く残る面影が、正示の胸中を掻き毟る。

「――兄さんっ!」

 震える喉で放った叫びに、誠一郎は能面の如く無表情を保ったまま、厳かに口を開いた。

「久しぶりだな、正示」

 鼓膜を震わす懐かしい声に、感情が溢れ出そうになる。

 だが、しかし。

「――つっ、あ……!」

 上がる苦の声に、否が応にも現実へと引き戻される。

 少女に抱かれた一善の身体が――世界と個人とを隔てる輪郭が、霧がかったように霞んで見える。

「一善さん!?」

 もはや異常は火を見るより明らかだった。原因が一善を抱く少女にあるのか、彼女を取り囲む三人にあるのかは分からないが、事態は既に、抜き差しならない所まで来ているらしい。

「止めてよ、兄さん!」

 懇願を叫ぶ正示に対し、誠一郎は無言で首を横に振る。

 正示の胸中を、無数の疑問が埋め尽くす。

 なぜ、事故を境に姿を消したのか。

 なぜ、〈セフィラスフェザー〉を率いているのか。

 なぜ、一善をさらったのか。

 渦巻く「何故」はすぐさま決壊寸前にまで嵩を増し、しかし形を成さずにただ一言に変換される。

「――兄さん!!」

 答えは、無い。

 決断は、半ば衝動的ともいえる速度で下された。

 夢にまでみた兄との対話すらかなぐり捨てて、正示は走る。

 微動だにしない誠一郎の脇を抜け、たび重なる全力疾走で棒と化した両足を必死に動かし、一善の救出を試みる。

 だが、

「無駄だ」

 背後、誠一郎の一言を聞くと同時、正示は前進の勢いもそのままに、後方へと弾き飛ばされた。

 無様に尻餅をつく事態こそ回避したものの、不可視に壁に鼻っ面を打ちつけ目を白黒させる正示に対し、誠一郎はなおも独白を続ける。

「ケセド、ゲブラー、ティファレトから成る倫理的三角形の結界――如何なる幻想をも封じ込め、如何なる現実をも遮断する、堅牢無比なる隔離の檻だ。返還が終わるまで、もはや誰にも邪魔立ては出来ない」

 異国の言葉の如く、意味の分からぬ台詞を口走る誠一郎を見、正示は今更のように懸念を抱く。

 ――この人は、本当に自分が知っている兄なのか?

 瞬く間に肥大化する不安から逃れるために、正示は最もシンプルな疑問を投げかける。

「兄さんはいったい、何をしようと……」

 問いに、初めて誠一郎の顔に表情らしい表情が浮かんだ。

 微かに眉をひそめ、

「――椎名から、なにも聴かされていないのか……?」

 なぜ、ここで椎名の名前が出るのか。

 狼狽に拍車をかける正示を見、誠一郎はしばしの無言を前置いて、

「ならば語ろう。お前には、すべてを知る権利がある」

 無造作に歩を進め、誠一郎は正示の傍らに立つ。

 身を強張らせる正示の背後、一善を抱き締める少女に視線を向けて、

「彼女の名は、神城・玲奈。戸籍上は、神城・一善の妹にあたる女性だ」

 その名前に、かすかに覚えがあった。一善が帰国したあの日、椎名が口にしていたような気がする。

「正示、お前は〈ジ・アビス〉を覚えているか?」

 忘れるわけがない。七年前、兄と別れた場所だ。

「俺と玲奈は、あそこで出会った」

 初耳だった。記憶にある限り、彼女と顔を会わせた記憶はない。兄からそのような話も聞かされていなかったはずだ。

「面識がないのも当然だ。彼女は、研究棟の地下深くに隔離されていたからな」

 正示の疑問を先回りして答え、誠一郎はなおも言葉を続ける。

「玲奈の持つ力は、全国で発見されつつあったアドレス能力保持者の中でも群を抜いて強力なものだった。力の大半を失い、零落してもなお、ただそこにるだけで他者のアドレスを歪めるほどに、な」

 始まりは十年前に遡る、と誠一郎は言った。

「玲奈の父、遺伝子工学の権威であった神代・十全博士は、自身の娘にアドレス能力の顕現を見た」

 その名前にも聞き覚えがあった。椎名が口にしていた、一善の父親の名だ。

「お前たち『第二世代』の発見よりももっと前、『始原の三柱』と称される最初のアドレス発症者の一人だ。正真正銘前代未聞の症例、現在のように政府からの支援もなく、研究は困難を極めた。それでも、十全博士は研究を続ける。惜しみなく私財を投じ、優秀な人材をかき集めて、〈ジ・アビス〉の母体となる空想現実化能力研究機関〈アイン・ソフ・オウル〉を創立した。お前の上司、椎名・統も、機関の創立メンバーの一人として参加している」

 どれもこれも初耳だった。自分たちよりも以前にアドレスが確認されていたことも、一善の父が〈ジ・アビス〉の設立者であることも、椎名がその研究員だったということも。

「十全博士を筆頭に、職員たちは全員一丸となって研究を進めた――施設内に隔離された玲奈の孤独など、まるで気付かずに」

 そこで一度言葉を区切り、誠一郎は一善を抱く少女を見やる。

「外界との接点を失い、ありとあらゆる自由を奪われた玲奈は、切に願った。友人として、姉妹として、掛け替えのない存在を欲した」

 わずかに目を細め、

「そして、彼女は産まれた。類い稀なる力を持った『創造主クリエイター』の、全ての力を捧げて創られた――『真なる創造』(アニマクルス)の結晶だ」

 一拍を置いて、誠一郎は真実を暴く。

「彼女は――神代・一善は、玲奈のアドレスによって創り出された『人格的存在キャラクター』だ」

 驚きは、思ったよりも少なかった。やはりか、と納得を覚えたぐらいだ。

 ――彼女いちぜんは、あまりに出来すぎている。

「その様子だと、薄々は気付いていたようだな」

 そう言って、誠一郎は薄く笑う。

「彼女は、産まれながらにして完成していた。非常識なまでの身体能力、ずば抜けて優秀な頭脳、老若男女問わず魅了する完璧な人格……。物語の主人公たる存在として必要な要素全てを望まれ産まれた、完全無欠の英雄だ。代償として、玲奈は力の殆どを失ったがな」

 微笑を消し、なおも淡々と言葉を紡ぎ、

「十全博士は彼女を自身の養子として、一善と名付けた」

 言葉を紡ぎながら、誠一郎は玲奈から視線を外す。

「間を置かず、一善は内なる衝動に抗えず海を渡ることになる。施設に隔離され、自由の全てを失った玲奈の願いを遂げるために――玲奈の望んだ夢、世界をつぶさに見て回るために」

 こちらにも背を向けて、窓の外を見やり、

「……一善の出立からほどなくして、十全博士が亡くなり――そして、全てが狂い始める」

 響く声音が、鋼のような硬さを帯びる。

「支柱を失い減衰する〈ジ・アビス〉に、追い討ちをかけるように全国各地で『第二世代』発見の報が届く。研究対象こそ増えたものの、その性質や系統も爆発的に増加、アドレスの研究は遅々として進まず、資金源である政府からも結果を求められ、職員たちは焦りに焦っていた」

 言葉と共に、誠一郎は両の拳を強く握り締める。

 正示の位置からは兄の表情は窺い知れないが、声には隠し切れない憎悪が滲んでいた。

「追い詰められた彼らは暴挙に出る。当時、玲奈以来となる強大なアドレスを有していた少年――」

 ずき、と脳に痛みを感じる。

「……お前を最重要研究対象に切り替え、力を失った玲奈を用いての人体実験に踏み切ったんだ」

 次々に明かされていく情報に、正示は言葉を失う。

 まさか、と思う。

 誠一郎が踵を返す。

 その顔に貼りついているのは、透徹した無の表情であった。

「皮肉にも、アドレスを待たぬと思われていた俺だからこそ、職員たちも油断していたのかもしれない。実験を知った俺は、すぐさま策を練った。水面下で協力者を募り、彼女を救出せんとした」

 そこまで言って、誠一郎は初めて黙り込んだ。

 黙したまま、視線だけはこちらの目を見据え、外れない。

 奇妙な沈黙はしかし、そう長くは続かなかった。なにかを振り切るように視線を外し、誠一郎は再度口を開き、

「……そこから先は、お前も知っての通りだ。事故の混乱に乗じ施設を出た俺と玲奈、一部のクリエイターたちは、国内を巡り仲間を集めた。二度と、玲奈のような悲劇を繰り返さぬために」

 言葉の直後、薄れつつあった一善の身体が、一層激しく掻き乱される。

「――ぐ、あぁっ……!」

「一善さん!」

 反射的に前進しかける正示を、死角から伸びた誠一郎の左手が押し止める。

「お前はうたな。何をしようとしているのか、と」

 至近、鷹の双眸が、塗れた刃物のように鋭利な光を放つ。

「簡単な話だ。かつて分かたれた力を一つに統合し、新しい世界を創造する」

 宣言、直後。

 不可視の衝撃をまともに受けて、玲奈、一善を囲む〈セフィラスフェザー〉幹部三人が一斉に弾き飛ばされる。

 咄嗟に膝を付き衝撃に耐える正示を尻目に、ただ一人、誠一郎だけが泰然と佇んでいて、

「かくして王は凱旋し、城壁は再び築かれる」

 どくん、と。

 心臓の鼓動によく似た音が響いて、

「――『再創世リジェネシス』の、始まりだ」

 半ば以上形を失くした一善の身体から、目も眩むような白光が放たれた。

 

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