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亡国の世界線  作者: 二人兄弟
α世界線編
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【番外編】お髭様と私

一話完結。

 私の名はシルヴィア・スチュアート。中性的な顔立ちをしているということもあり、メイド服がいまいち似合わない私は燕尾服えんびふくを着させて頂いています。ロイド様は衣服類には無頓着な方で、とくに何も仰ってくださいませんでしたが、コーデリアからは「似合う似合う、随分イケメンだな」なんて、あまり嬉しくない褒め方をよくされます。自分では結構気に入っているのですが。何よりメイド服なんて恥ずかしくていまだに着れません。



 私は普段侍女として『お髭様』こと、ロイド様にお仕えしております。ロイド様の行くところにはこれまでも必ず付き従って参りましたので、今度の戦でも当然のように戦地にまでやってきてしまいました。


 血なまぐさい戦場にはどうしても慣れず、度々吐いてしまいます。コーデリアがいなければとっくに心が折れていたかもしれません。


 先日どうも浮かないご様子でしたので「どうなさりましたか?」とそれとなく尋ねてみたところ、またモーガン様と一悶着あったとのこと。何か問題が起きないと良いのですが。


「お呼びでしょうか、ロイド様?」


「うむ」


 「後で来るように」と呼び出された私ですが、何故崖上のここに呼び出されたのかまでは察しが付きませんでした。モーガン様と揉めた因縁の場所でもあり、あまり気分が良いとは思えないのですが。


「ここでずっと考えていたことなのだが」


「はい」


「絶壁すぎる……」


「は?」


「それはもうどうしようもない程に。そうは思わんか、シルヴィア?」


「えっ!?突然何を言い出すんですかっ!?」


 ロイド様もそのようなお考えだったとは……コーデリアに言われて結構ショックで、ずっと悩んでいましたけれど、まさかロイド様までとは思いもよりませんでした。正直かなり衝撃的です。



「変か?」


「いえ……まあずっと気にしていることではあるのですが」


「お前もやはり、気にしていたか」


「はい……」


「これからの命運を握ることだ。真剣に考えねばなるまい」


 腕を組むロイド。


「……失礼ですが、そこまで大袈裟なことですか?」


 ショックとはいえそこまでとは思いませんが、正直。


「作戦の士気に関わることだ。決して大袈裟ではあるまい」


「はぁ……?」


「うむ」


「……そうですね、モチベーションが上がらず困りますよね、色々と」


 案外、殿方というのはそういうものなのかもしれないですね。


「うむ、たとえ策を弄したところでこの絶壁だ……きっと満足な成果は得られまい」


「え?策を使うんですか?確かにそういう手段に頼るという選択肢もありますが……きっと限界がありますよね。現状を打破するには難しいです」


 うーむ、根本的に大きくしなくてはいけませんね。ちょっと工夫したくらいでは……残念ながら。


「落ち込むことはない。いくらでも方法はあるはずだ」


「絶壁でなければ色々できますよね……」


 ぱふぱふとか?


 きゃー何を言わせるんですかっ!?……我ながらキャラじゃないですね。ごめんなさい。


「うむ」


「はい……」


「もっとなだらかであれば、と何度思ったことか」


「……はい?もっとなだらか?」


「そうだ」


「とんでもないですっ!」


「……?」


「これ以上なだらかになってしまったらコーデリアに笑われますよっ!」


 切実なんです。露骨にバカにしてきますからね。


「コーデリアは関係なかろう。あやつからどう言われようとお前が気にする必要はない。無論、私も意に介さん。考慮に値せぬよ」


「そうですか?」


「うむ」


「……そうですよね。他人の評価なんて関係ないですよね」


 私は胸をなで下ろしました。そう仰ってもらえると少し気が楽になります。


 大きさなんて……ね?


「……よくわからんが、とにかく仮定でモノを言っても仕様がない」


 無いものは無いんですから、ね。


 ってなんだか自分で言っていて悲しくなってきました。


「確かにそうですね、現状を嘆いたところで、建設的ではありません」


「本当に絶壁かどうか傾斜を確かめねばなるまい……よし、シルヴィア。私に従いてこい」


「……?従いてくるも何も今ここから見えますが?」


「愚か者。上から見ても解らんだろうが。実際、下で触って傾斜を確かめねば」


「え……触るんですかっ!?」


「無論だ」


「そうですか……仕方ないですね。でも、ここでは誰かに見られてしまう可能性もありますし……場所を変えましょうか?」


「見られて困るか?ただの調べモノだろう?」


「困りますよっ!?」


 何を仰ってるんですかっ!?この人天然ですか?


「そうか?……まあうっかり調べた内容が漏れてしまっては困るしな……うむ、確かに。ではそうしよう」


「それで、どちらで?やはり……えっと、その寝……室ですか?」


「は?何を言っておる?」


「だって、お外は恥ずかしいですし……」


「恥ずかしい?……お前」


 ロイド様は何故か額に手を当て、呆れている様子でした。ん?


「何か勘違いしていないか?」


「はい!?」


 え?


「……崖下でここを駆け降りることができないか調べるだけだ、逆落としの為にな」


「……」


「シルヴィア、お前もしかして……?」


「ロイド様」


「……おぉ、何だ?」


「ちょっとここから飛び降りますねっ!今までありがとうございました。シルヴィア先生の来世にご期待下さいっ!では!」


「おぉい、ちょっと待て……まてえ!早まるなぁああああああああああああああああ!」



「何してんだ、シルヴィア」


 岩陰から鶏冠が見えたような気がしました。

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