脱退
美智子たちは、階段を駆け下がり、再び廊下に出た。
すると、1人の女子ゾンビが現れた。
「ゾンビだ、戦闘は避けるぞ」と梶尾は警告する。
だが、ゾンビは美智子たちに気づき、走って来た。
すると、グエンは突然ゾンビの足を撃った。ゾンビは倒れこみ、動けなくなった。
「ナイスショット」と長田は口笛をしながら言う。
グエンはもう1発、ゾンビのもう片方の足を撃った。
「個人プレーはやめろよ!」
グエンはゾンビに近寄る。
「おい、こいつは結構なべっぴんさんだぜ」
すると、長田もゾンビに近寄る。
「ほんとだ、凄いべっぴんだ、おいボス、凄いぞ」
すると、今度は志木がゾンビに近寄る。
「すげー俺の好みじゃん!」
3人は、嫌らしい目つきでゾンビを睨みつける。
「へへ、俺勃起しちまったぜ」
「おい、もっと紳士らしくしろ、グエン」
「構わねえぜ、長田さん、どうせゾンビだ」
3人は、舌を出した。
「おい、俺の舌でも入れるか?」
「キスだ、キス」
「へへへへ」
美智子は、少し見てて辛かった。
「ねえ、3人とも」
だが、3人は聞かない。
美智子は助けを求めるつもりで、梶尾を見た。だが、梶尾は完全に他人事だ。
矢川はほっといている。
岡田は迷っていた。
「おい、俺のちんぽなめるか?」
「馬鹿、俺が先だ」
「俺の方が立派だぞ」
そう言って、志木はズボンを下ろし、勃起したペニスを出す。そして、ゾンビに向かっておしっこを吹きかける。
「おら、うまいだろ?」
「汚らしいぞ、志木」
「まったくだ、デブ」
美智子は見てて胸が痛かった。いくらゾンビでも、あんな扱いは酷過ぎる。あんまりだ。あまりの痛みに、胸倉をぎゅっと握る。
できれば止めたい。けど、怖くてできない。
「おい、俺のチンチンなめろや」
そう言って、志木は噛まれない程度の距離までペニスを近づける。
「やっぱり女は性奴隷になるべきだ」
その言葉だった。美智子の怒りを呼び覚ましたのは。
美智子は、拳銃でゾンビの頭を撃ち抜いた。初めての殺人。せめてもの情。
「あんたたち最低よ!いくらゾンビでも、そんな下品なことしていいと思ってるの!」
3人は黙り込む。
「何がべっぴんよ!何がキスよ!何がペニスをなめろだ!何が性奴隷だ!あんたたちのやってることは最低よ!最悪よ!下品よ!くそったれよ!」
すると、志木がぼそっと呟く。
「女のくせに、うるせえな」
美智子は、悲しくなりそうだ。これだから、男は!
「いいよ…私は別行動するわ、あんたたちは死体とファックするといいわ!あなたたちと一緒にいるのはごめんよ!」
そう言って、立ち去ろうと思った。
すると、志木が言いだした。
「おい、女の分際で調子に乗るなよ、俺たちとくれば助かる。考え直せ」
「嫌よ、友人を探して、友人と一緒にいる」
「死ぬぞ?」
「友人と一緒に死ねるなら、本望だわ」
「お前レズだろ」お前血液型aだろと同じ口調で言う。
「レズでも何でもかってに言え」
「何だと、このあま!」
「あなたにたまついてんの?豚野郎!」
美智子は、そのまま歩き始めた。
「ああ行け!勝手に1人で死ね!」
だが、美智子についてくる人物がいた。岡田だ。
グエンと長田が戸惑いを見せる「おい、岡田、どこへ?」
「さっきのでお前たちを見損なった。悪いが、俺も抜ける」
「本気じゃないだろ?」
「本気さ」
「なら、コカインかえせ」
岡田は、ポケットにあるコカインを出し、投げつけた。
「本気なのか?」
「お前たちと一緒に居たくない、この女のボディーガードでもやるさ」
そう言って、美智子の隣に立った。
「高橋!」
矢川の声がした。
「俺もこいつらを案内した後、すぐに迎えに行く」
「うん!待ってる!」
後ろから大声が聞こえた。
「戻れ!岡田!親友だろ?」とグエン
「俺たちは絆で結ばれてるんだ!」と長田。
岡田は、2人に中指を立て、振り向きさえしなかった。
やがて、2人は4人とは遠ざかった。
「いいの?私なんかと一緒にきて?」
「いいさ、変態どもよりはマシだ」
「ありがとう、岡田さん」
「それは偽名なんだ」
「え?」
「岡田太郎ってのは偽名だ。本名、特に苗字は女っぽくて嫌なんだ」
「どんな名前?」
「苗字は言わない。名前は美鶴だ」
「よろしくね、美鶴君」
「こっちこそ改めてよろしく、高橋さん」
「美智子って呼んで」
「今度からそうする」
2人は、前に進んだ。
野球部の浅野雄一は、神聖な野球道具の入った部屋から野球道具がいくつかなくなっているのに気づいた。まさか、野球道具を凶器に?
雄一は怒りを感じた。よく映画とかで野球のバットを凶器にすることが多いが、野球をこよなく愛する自分には、そういうシーンには怒りを感じた。そして、今まさに野球道具を凶器として使っている輩がいるのか!許せん!許さなぁい!
雄一はずしんずしんと前進した。浅野雄一、将来の夢は野球選手、背は野球部では平均くらい、しかしピッチング能力はお手の物、ルックスは良く、清々しい笑顔が好印象。
そんな彼が、今は怒りの表情を浮かべ、前進した。
だが、その時悲鳴がした。
見れば、廊下で見知らぬ女子が、男子1人に襲われていた!いかん!助けなくては!うおおおおおお!怒りの鉄拳がうずくぜ!
雄一は走った。襲っていた男子が振り向く。
「喰らえ!ウルトラエターナルファイアーボンバー!」
そう言って、男子の顔面ど真ん中に右こぶしを勢いよく命中させる。男子は吹き飛んだ(というのは雄一の妄想で、本当は倒れただけ)。
女子は立ち上がる。
「あの、助かりました」
「いえいえ、自分、人助けが好きなもんで」
「あたしは3年2組の鈴木美郷です」
「僕は1年1組の浅野雄一です」
鈴木美郷と名乗る女性は背が高かった。それに腰まである髪の毛をポニーテールに纏めている。眼は優しそうで、端正な顔立ち、声は若干大人っぽかった。
「にしても、なぜここに?」
「え?いえ、あの、弟を探しに来たのですが、この通り襲われてしまいました」
「とにかく、安全な1階に行きましょう」
「あの、ええ、そうしましょう」
2人は階段を駆け下がった。
遠藤円は、4階のロッカーに身を隠した。
先に進みたいが、先には血塗れの男子生徒が1名居た。
「まったく、どうして円がこんな目に……」
苛々したように言う。
「あのくそ男子、早くどきなさいよ」
すると、男子は本当にどこかへ消えた。
「チャンス!」
そう言って一気に進み、階段を駆け下がった。
しかし、驚いた。まさか、暴力事件が学校内に起きたと思うと、今度は米軍による封鎖だ。いったい何が起きているのだろう?向こうは武装しているようだが、論理上発砲するには避けたいはず。しかし、向こうの発砲許可条件が分からないと、迂闊に動けない。
円はとりあえず、何も考えずに階段を駆け下がった。
「待って、遠藤さん」
同行者の太田琴美が息を切らしながら来た。彼女は田舎出身の眼鏡っ子で、都会の常識をよく知らない。いわば、無法者だ。
「遠藤さん、早すぎますよ……」
「あなたが遅すぎ!いい?あたしは殺されたくないの。足手まといになるくらいなら、死んでくれたほうがマシよ」
「そんな……」
「死にたくないなら、黙ってついてきなさい」
「はい……」
そう言って、2人は階段を下がった。




