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ゾンビの弱点

 米陸軍将軍のマイケル・ストーンは、選んだ優秀な完全武装の兵士とともに現場についた。

 現場では、あの専門家のドン・ネビルでも、医療部隊隊長のアネット・レナーでもない、あのだらしないプレイボーイで有名なジョン・ローレンスが今まさに部下に命令を出していた。

「ゴードン大佐」

 ゴードンは気づくなり、敬礼し、姿勢を正した。

「何でしょうか、ストーン将軍殿」

「ネビル博士とアネット少佐はどうした?なぜお前が現場指揮を取る?」

「将軍殿、ネビル中佐は、あの失踪不明の輸送対象捜索に力を阻止でいます。アネット少佐は私から現場担当からはずしました」

「なぜそんな勝手なことを?」

「将軍、アネット少佐の妹がこの学校に通っているのですよ?」

「だから?」

「アネットには、自分の妹がいる学校封鎖の指揮を取るには荷が重すぎます」

「彼女は優秀だぞ」

「ですが、まだ若い。妹がいる学校を封鎖する姉の気持にもなってください。ただ1人の家族ですよ?今の封鎖対象は学校。大勢の罪なき未成年たちがいます。きっと精神的に未熟な彼女には、ストレスや不安が溜まり、間違った判断を下す。そうすれば、封鎖作戦と兵士の士気に問題が生じます。それでもいいのなら、いいでしょう、呼び戻します」

 ストーンは考えた。

 確かにゴードンの考えにも一理ある。確かに優秀とは言え、彼女は若い。愚かな若さだ。それが故に、間違った判断を下す。そう言った意味では、確かにゴードンが指揮を執るのも自然だ。ストーンには、化学分野に関する知識がそれほどないが、ゴードンは豊富だ。

「お前は正しい。完全封鎖までの時間は」

「推測では一時間ほど」

「わかった、報告ありがとう」

「では、これで失礼します」

 ゴードンは敬礼し、再び封鎖作業指揮に戻った。



 健一は疑問に思っていた。

 橘が岡田を止血し、保健室まで運ぶのはいいが、岡田をベッドに眠れせた後、なぜか岡田を縛り上げた。どういうことだ。

 理由を聞いても、「万が一のためよ」としか言っていない。どういうことだ?

 橋本は、野球部から頂いたマスク前頭部、顔面、喉を保護するために装着するあれ、 プロテクター 肩、胸、腹を保護するために装着するあれ、 ファウルカップ 股間周辺を保護するために装着するあれ

レガース 膝から足首までを保護するために装着するあれを着用し、金属バットを装備して完全武装状態だ。恐るべし、オタクパワー。

 健一は、隣に座る美由紀に話しかけた。

「なあ、橘先生おかしいと思わないか?」

「え?何が?」

「岡田をベッドに縛り付けることだよ」

「うん、確かにおかしいよね、あはは」とわざと笑いした。

 健一はため息ついた「はあ、高橋が心配なんだろ?」

「うん……みっちゃん、今頃どこで何をしてるんだろ?」

 確かに心配だが、学校に来てないなら、それほど安心できる状況はないだろう。

 すると

「岡田が目を覚ましたぞ!」と橋本が叫んだので、全員岡田のベッドに集まった。

「岡田、大丈夫か?心配したんだぞ」

 健一はもっと近寄ろうとしたが、様子が変なのに気付いた。

「岡田?」

 岡田が目を見開いた。それは、狂気と殺意、それに赤く染まっていた。そして、奇声を発した。

「やっぱりそうね……」と橘が確信したように呟いた。

「どういうことですか?」

「何もかも同じなのよ……」

「何に?」

「3年前の感染症に……」

「え?」

 橘は椅子に座りこんだ。その時の橘は、いつもより大人びていた。


 坂口は、近くの部屋に鎖で縛られ、上げられていた。

 グエンは、ショックで言葉を失っていた。

「坂口を殺さずに気絶させたのは正解だったな」

 岡田は呟く。

 梶尾は首を傾げる「どういう意味だ?」

「坂口のおかげで、連中の弱点が分りそうだ」

「何?」

「見ろ」

 そう言って、岡田は拳銃を引き抜き、坂口の右脚を撃ち抜いた。

「こいつは撃たれてもピンピンしてる」

 そう言って、腹、胸、右肩に一発ずつ。

「連中は不死身だ、死なない」

「いや、そうでもない」

 そう言って、坂口の頭を撃ち抜いた。坂口は、動かなくなった。

 全員が驚愕した。

「どういう……ことだ……?」

「連中はゾンビだ、近年流行っている走るゾンビだ」

 そう言って、岡田は椅子に座り、状況を詳しく説明しようとした。

「いいか、俺たちが連中ゾンビと初めて遭遇したとき、俺たちは連射したが、連中は撃たれてもピンピンしてた。だが、ボスがショットガンを連中の頭に撃った時は、連中は死んだ。つまり、連中は正真正銘のゾンビか、あるいはそれに近い存在なんだ」

「それに近い状態?」

「人は心臓が止まってもしばらくは生きていられる」

「心臓は血液を送る器官だからね、でも血液が送られないと、3~5分で脳が停止、死に至るわ」

「そこなんだ、心臓が止まって動ける人はあまりいないが、連中は胸を撃たれてもしばらくは生きてた」

「しばらくは?」

「実は、ここに来る前に死体を見たんだ。あのマスクのゾンビだ。あいつは腹と胸を撃たれた。心臓が止まり、脳が停止するまであいつは動き回った。つまり、連中の胸を撃てば、数分後には死ぬし、頭を撃てば確実にやれる。保証はないけど、連中の胃を撃てば、胃酸が漏れて勝手に死ぬだろうね」

「つまり、彼らを即座に殺すには頭を撃ち、胸を撃てば後で死んでいく?」

「そういうこと」

 梶尾は頷いた「でかしたぞ、岡田」

「これで連中の弱点が分かったわね」

 梶尾は散弾銃を装填した。

「坂口のおかげで連中の弱点が分かった、これで生存率がぐんと上がったぞ野郎共!」

 梶尾の部下は全員、歓声を上げた。

 美智子は岡田にウィンクした。

「大手柄ね」

「たいしたことないさ、ただのマニアの助言だ」

 美智子は微笑む。

「それでも大手柄よ」

「ああ、そうだな、あいつがいれば、きっと褒めてくれたかな……」

「あいつ?」

「何でもない、気にするな」

 美智子は、拳銃を握る。頼もしい相棒。使いたくない相棒だ。


 1年2組の綾瀬真理子は、1人寂しく廊下を歩いた。

「まりりんは、今迷子なのです」

 真理子はおっとりとした性格かつ、マイペースで天然な楽天家であり、オタクだった。

 彼女は、笑顔が素敵な少女で、黒い髪、小さな顔、大きな目という、とても可愛い外見に性格がマッチして、非常に妖精にたとえられることが多い。つまり年齢の割には幼い外見だ。

 真理子は生まれつき方向音痴だった。たびたび学校で迷うことが多かったが、今まさに迷っている。

「ここは、どこですかぁ?」

 年齢の割には幼い声で、そう呟く。

 すると、遠くで人影が見えた。

「あ!人だ!お~い!」と、状況とは正反対の明るい声で呼びかける。故に彼女は馬鹿と呼ばれる。

 人影が振り向く。

「ねえ、玄関まで案内してほしいのです」

 そう言った瞬間、人影が無言で近寄る。

「あれ?変な人だなぁ」

 だが、顔が見えるくらい近寄ると、それは正常な人間じゃなかった。

 全身血塗れで、歯を剥き出しにしてる。何より怖いのは、大きく見開いた目が赤く染まっていた。

「あのぉ、具合が悪いなら保健室にいったら?」と心配そうに話しかける。

 その時、そいつは奇声を発しながら走って来た。

 だが、一瞬だった。

 そいつは倒れた。

 そいつの後ろには、身長の高い、腰まである長い黒い髪をもった静かそうな、しかし、端正な顔立ちで、鋭い目つきが逆にクールな印象を与える美少女がそこに立っていた。

「まったく、どういうつもりだ?」

「どういうつもりって、まりりんは、その人を保健室まで運ぼうと思ったのです」

 その女子はため息ついた。

「まったく、狂った連中と正常な連中の見分けくらいつかないのかね?」

「狂った……連中?」

 人差し指を唇にあて、真剣に考える。

「まりりんには、わからないのだぁ~」

 その女子は、血塗れの木刀をハンカチで拭き、左手を差し出す。

「剣道部の青島御子だ、よろしく」

「綾瀬まりこなのだー、まりりんって呼んでね」

「まったく、能天気だな」

「ノーテンキ?」

「いや、忘れろ。それより、よく1人で居られたな?」

「まりりんは、道に迷ったのです」

「道に……迷った?」とあきれながら頷く「ここは広いからな」

「うん、物凄く広いから、まりりんは迷ってしまったのです」

「その喋り方、どうにかならないのか?」

「ミーコは~、まりりんのことが~、嫌いなのですかー?」とゆったり口調で聞く。

「ミーコ!?…まあいい…す、好きに呼べ…」

 青島は、はっきりと真理子と相性が合わないと直感した。しかし、現状では、救うべき人間だ。だから、見捨てない。

 そう言えば、玄関に大勢の生徒が集まっているが、あそこに暴徒が現れたらどれほどの騒ぎになるのだろうか?


 梶尾は先頭に立ち、散弾銃を構えながら進んだ。グエン、長田、美智子、矢川、志木の順に、短機関銃を持った岡田が最後尾につき、警戒しながら進んだ。

 美智子は、ここで可能性について考えていた。連中、すなわちゾンビ(仮)が、存在しているのはこの目で確かめた。それが伝染するのも。

 この学校では、全校生徒教師合わせて約2000人ほどいる。それほど大きな中学校だ。だが、もし仮に全校生徒がゾンビ化していたら、はたしてどうなるんだ?

 ここにいる連中は武器に使い慣れているが、散弾銃1つ、短機関銃1つ、それ以外は拳銃で、人数も少ない。そんな現状戦力で、はたして2000人のゾンビと戦って勝ち目はあるのか?

 見え見えの答えだ。答えはノーだ。満一つの可能性はない。

 それでも、美智子は全校生徒がゾンビ化していないことを願う。矢川が、ごつい拳銃(SIG/ザウザーP226で、矢川曰く性能は本物)を構えながら、汗をぬぐっていた。おデブの志木は、どでかい拳銃(デザート・イーグルで志木曰く威力半端ないっすよ)を構えながら、美智子にほほ笑んだ。

 美智子は苦笑いした。こりゃ、2000人のゾンビか来ても頼もしいだこと………

 すると、廊下の奥に差し掛かったころ、ドアが見えた。小さなガラス窓つきのドアだ。

「ドアだ」

 すると、後ろから奇声が聞こえた。全員振り向けば、ゾンビが2人、全力で走って来た。

「構うな!走れ!」

 全員走った。梶尾はドアを開け、全員が走ったと思い、ドアを閉めた。

 長田が反応する「待って梶尾さん!グエンがまだ!」

「何!」

 確かにグエンが取り残されていた。

「グエン!」

「待て長田!あいつは大丈夫だ!」

 2人のゾンビが、グエンに襲い掛かった。だが、グエンは2人のゾンビの首を絞め、2人に何度も頭突きを繰り出した。

「おら!喰らえ!」

 2人のゾンビが怯むと、今度は片方のゾンビの腹部にこぶしをめり込ませ、もう片方は壁に叩き付けた。

 そして、腹部を殴ったほうのゾンビの両耳をチョップし、今度は両手で首をチョップした。

 それに興奮した長田が、突然靴を脱ぎ、ドアを開け、グエンの方に駆け付けた。

「待ってグエン!俺の参戦するぜ!」

 そして、両手の靴で、片方のゾンビを殴りかかった。

「おら!靴の双剣だ!」

 そう言って、ゾンビの頭を靴で殴りまくり、グエンはゾンビの頭を壁に叩きつけまくった。

「グエン!長田!もういい!戻れ!」

 梶尾のどなり声に2人ははっとし、すぐにドアをくぐった。梶尾はそれを確認すると、ドアを閉め、鍵を掛けた。

 そこは階段だった。

「全員無事か?」

 全員頷く。誰も噛まれる瞬間を見ていない。もう坂口の二の舞はごめんだった。

「いいか、今度からは、ゾンビとの戦闘は極力避けるんだ。噛まれたらアウトだからな」

 全員頷く。

「よし、矢川、案内してくれ」

「ああ、そうだな」

 そう言って、矢川は、先頭に立ち、案内を始めた。

 美智子はさっきの状況を思い出し、少し笑った。靴の双剣は傑作だった。 


 

 

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