中学生マフィア
美智子たち不発弾事件に巻き込まれたメンバーは、美智子と健一の自宅に集まり、会議をしていた。自主映画を作って、YouTubeに投稿するという企画だ。
だが、意見がゾンビもの、恋愛もの、西部劇、青春の4つに分かれており、一向にまとまる気配がない。もっとも、美智子には関係ない話だ。
すると、インターホンが鳴った。
「はい、今出ます」
玄関から出てみれば、そこにはずっと学校に来なかった矢川俊彦が居た。
「あら?どうしたの?」
「どうしたのって、俺は手に入れたぞ」
「何を?」
「3年前、日本を滅ぼした感染症の情報」
「嘘?!」
「言っておくが、お前だけに教える。それ以外の人には教えたくない」
「でも、秘密を打ち明ける場所なんて……」
「うちにいらっしゃい」
2人が向けば、そこには社会科教師の橘が居た。
「どうせ、私には関係ない話だから、うちで教えてもらえば?」
「ですが、先生にも……」
「言っておくけど、私は3年前の感染症について知ってるよ」
「「え?」」
「だってきかなかったじゃん」
2人は絶句し、橘の自宅に上がらせてもらった。
中は、美智子と健一の自宅より伸び伸びできそうなくらい、清潔で住み心地がよさそうだ。リビングのソファーに座らせてもらい、紅茶を出してもらった。
美智子は、矢川の抱える大きな段ボールが気になった。
「で?どんな感染症なの?」
「非常に厄介だ」
段ボールから資料を取り出した。
「これは感染した少年の写真だ」
思わず吐き気を感じた。
その少年は、目、鼻、耳、口、いたるところから出血していた。
「これって……」
「エボラよりも酷い。感染後の発症率100%、完治率0%、症状は出血、高熱、興奮状態、最後には〝死〟だ」
ぞくっとする。
「たった1滴の血液、唾液で感染する厄介なウイルスだ。今も治療法も治療薬もない。しかも感染はたった数ヶ月で西日本、1年で東日本に広まり、もう1年で日本を滅ぼした」
そんな恐ろしいことがつい3年前に起きていたのか。
さらに大量の資料や新聞が入ったダンボールを渡した。
「もっと詳しく知りたきゃ、自分で調べてくれ。どうやら、感染症の症状やら、そういう情報が載った新聞は1つ残らず回収されたらしい」
見つからないわけだ。
「先生はどのくらい知ってましたか?」
「今話したこと全部」
なら、この先生にさっさと聞けばよかった。
その日手に入れた情報は、美智子は極秘にした。
次の日、美智子は学校に登校し、授業が始まるのを待つ。いつも通りのはずだった。
だが、その日はいつもどおりに進まなかった。
矢川の元に、2人の男子がやって来た。この時間帯に教室にいるのは、矢川、男子2人と美智子だけだ。
「矢川、お前の力を必要としている」2人のうち片方が言った。アフロヘアーで太っている。
「何だ?言っておくが、俺はギャングまねはしない」
すると、もう1人、痩せていて坊主頭の男が言う「吉岡が殺された」
「何?」
「梶尾ファミリーに殺されたんだ」
「仇打ちはしないぞ」
「構わない。話を聞いた以上同行してもらう」
そう言って、痩せている方が矢川に何か刺し、矢川は倒れる。
デブの方も美智子に近寄り、首に何か刺した。痛みを感じた瞬間、意識が消えた。
目を覚ませば、どこかの廊下だった。両手が後ろの腰に捻じられ、手錠を掛けられていた。
隣の矢川も同じ状況だった。
「ねえ、矢川君、いったい何が起きてるの?」
「実はな、お前の知らないところで学校内に複数のグループ、まあ、ヤクザか暴力団ってとこか、そういう連中がいるんだ」
あの不対称的コンビとほかにマスクをした2人が、ドアの前で何かをしていた。4人とも拳銃を持っていた。
「あれって玩具?」
「いや、本物だ。この3年間日本は野放し状態だったから、警察の拳銃やら何やらが一般市民の手に渡れる状態だったんだ。たぶん、その過程で手に入れたんだ」
思わず、夢であってほしいと願った。
「梶尾ファミリーめ!絶対に殺せてやる!」
「おい!黙れ!聞こえるぞ!」
「お前こそ!」
すると、銃声が響いた。木製のドアが壊れ、マスクの1人の首から鮮血が噴き出る。美智子は思わず目を閉じた。
さらにドアが開き、中から大勢の男子が現れ、もう1人のマスクを撃ち殺し、あのコンビ、美智子、矢川を室内に連行した。
中は、教室ほど広いが、ソファーとテーブル、タンスとクローゼットしかなかった。
そして、あのコンビはしゃがんで両手を壁につけ、美智子たちは壁に圧し掛かった。
すると、1人の男子、いかにもアジア人、ベトナムかフィリピンあたりなのか、そういう顔をした小柄の男が拳銃を向け、叫び出した。
「お前らどこの組だ!喜代造か!喜代造組なのか!え?!」
「グエン、よせ」と存在感ある声が響く。
ソファーに、オールバックの、体格が良い、いかにも不良っぽい顔をした男が座っていた。
「すいません、クライシスボス」
クライシスボスと呼ばれた男は、たちあがった。
いったい何なのよ!突然マフィアの抗争を目の当たりにするなんて!ありえない!
すると、小柄で眼鏡をかけた髪型がベートーベン――――いやスパゲッティに似た男が口を開いた。
「兄ちゃん、コカイン」
すると、ベトナム人グエンが口を開いた「まだ吸わないでいい」
美智子がいい加減頭にきた。「あの!あなたたち何者ですか!」
すると、スポーツ刈りの少年が口を開いた。
「俺は岡田、通称拷問ゾンビ、あのスパゲッティヘアが坂口、通称ゲッティ―、あのベトナム人がグエン、通称ビクター、あそこのインド人っぽい日本人が長田、通称ヒンディー、あそこののっぽが石井、通称タワー、そしてこの梶尾ファミリーの偉大なる指導者(自称)、梶尾ことクライシスボスだ。別名ヴァイオレンスファザー」
これではっきりした。こいつらは中二病だ!拳銃は本物だが、中二病だ!
すると、ヒンディーと呼ばれた長田が口を開いた。
「ボス!殺しましょう!こいつら絶対喜代造組だ!」
「待て、素人かも知れん」
「しかし」
「待て!情報を聞き出すんだ!」
美智子はこの中二病集団から出て行きたかったが、願いそうにない。
すると、愛相のよかった岡田が口を開いた。
「拷問でも?」
「それは最終手段だ」
今度はグエンが拳銃を美智子に向け、口を開いた。
「おまえどこの連中だ!言え!」
「あたしはただの中学生よ!あのデブとガリガリの話を聞いたから、強引に連れていかれただけ!」
「ボス、思い出した!このデブは志木ってガキだ!このガリガリは村松ってガキだ!」
「どこの組?」
「像組だ!」
一瞬笑いそうになったのを必死にこらえた。
「あいつを助けに来たのか?」
すると、近くのドアが開き、目隠しされた少年が椅子に座っていた。
「あいつを助けに来たんだな!え!こうならどうだ!」
グエンは拳銃を4発撃ちこみ、目隠しされた男が倒れこんだ。
「え!これで計画は失敗だな!」
美智子は冗談みたいな気分だった。石井という背の高い少年が死体のある部屋のドアを閉め、拳銃に弾を込めた。
この部屋にいる梶尾ファミリー幹部全員が拳銃を美智子たちに向けた。
「ボス、命令を」
「まあ、待て」
美智子は冗談みたいな状況に、発狂したい気分だった。
その時だった。




