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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

"瀉血"

掲載日:2026/04/06

館の主たる吸血鬼は多くの伝承にある通り、日中眠りに就く

その僅かな時間だけが、僕たち囚われの少年たちの限られた自由だ



僕と君は囚われて間もないので

朝の陽射しが牢の格子から差すにつれ、どうしても眼が醒めてしまいがちだ


来ているものを引き裂かれ、まともに『衣服』と呼べるものを身に着けて居ないせいか、昨夜はとても冷えたらしく、気が付くと僕たちは互いの躰に腕を絡めて、二つの樹木がもつれる様な姿勢で眠って居たようだった


僕が起きた為か、君も眼を醒ます

二人は顔を静かに視合わせたあと、慌てて躰を離しながら、頬を紅く染めて俯く

僕が「おはよう」と言うと、君も相当の沈黙を経た後でゆっくりと、「………おはよう」と返した


腕の中には、まだ君の躰の感触が残って居る

薄くて柔らかくて───でも、骨と筋だけの持つ硬さが、内側に存在して居る

『自分が君に触れて、悦んで居るのかも知れない』という可能性に思い当たり、僕の顔からは熱が出そうな程だった


君が、僕の躰を辛そうに視ながら「お互いさ」「随分、酷く『やられた』よね」と笑う


君の眼は、笑って居ない

僕は自分の躰を庇うように抱き締めると、少しだけ涙ぐんだ


僕が涙を拭こうとして居ると、君が急に近寄って来て、僕の剥き出しになって居た肩口を、音を立てて口に含んだ



「えっ……?」


「ちょっと」



「なに……して……」


君が僕の肩を、唇で撫でるように何度もぴちゃぴちゃと口に含む

昨晩血を吸われた時の傷が、濡れ温められながら少しずつ開いていく


痺れるような痛みと快楽の中で、失血の朦朧がヴェールのように、僕の意識を取り囲んだ



「………血なんて、本当に美味しいのかと思ってね」


視線は片時も肩の傷口から離さないまま、君が言った



「君のだからかも知れないけど、本当に美味しい」


『君のだから』という言葉に、如何(どう)してか僕は儚く口の橋を吊り上げながら、それでも気を喪いそうになる

君が唾液の糸を残しながら口を離すと、今度は反対に自分の肩口をはだけて、僕に差し出した



「────飲んでよ」


「僕だって、君に飲んで貰いたい」


君が話し終えるか終えないかの内に、僕は君を押し倒して上になると、けだものの様に君の肩を何度も噛んだ


その度に、僕の顔に鮮血が跳ね返り、君が顔を(しか)める

『こんな酷いこと、早くやめないと』と心が警告して居たが、躰は君を貪る事を、けして止めようとしなかった


ごくごくと喉を鳴らして、君の血を嚥下する

飢えが満たされて、少しずつ意識が冷静さを取り戻していく


『自分が何をして居るのか』を理解して、僕は青褪める


君が「こんなので」「足りたの?」と、僕を上眼に視上げながら妖しく嗤った





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