プラネタリウム
「これ何?」
私は聞いた。
私の目の前には小さな穴がいくつも空けてある丼の紙皿が裏返って置いてあった。
「先週のことです。私は熱を出しました。
夜寝苦しくて天井をひたすらに眺めていました。その時ふと思ったんです。
そうだ、プラネタリウムを作ろうと」
「それでできたのがこれ?」
「まだ途中です。今からこれの内側にアルミホイルを貼ります。そして同じものを2個作成し、球体になるように器どうしを貼り付けます」
「私を呼んだのは何故?」
「プラネタリウムというのは複数人で見るものだと相場が決まっています。あなたなら呼べば来てくれるだろうと」
「さては私のことをいつも暇そうな人だと思っているな?」
「否定はしません。さあ、作りましょう」
私達は作り始めた。
途中穴を開けるのとアルミホイルを貼り付ける順番を間違えたことや、光源を中に入れないと意味がないことに気づいて作り直したが、割とすぐに完成した。
「完成しましたね」
「したね」
「どうしましょう? まだ電気を消しても部屋の中が明るいですよ」
時刻は午後5時半。外は明るく、子供達が帰る声が聞こえる。
「……夜ご飯でも食べます?」
そう言うと彼女は冷凍庫から凍ったうどんを取り出し、茹で始めた。
しばらくすると紙皿に盛られた素うどんが出てきた。この皿はプラネタリウム作りで余ったものだろう。
「家にはちゃんとした丼の皿は一つしかないので」
「それは良いけど、このうどん具はないの?」
「具もなかったので、出汁と乾燥ネギだけで味わって下さい」
具なしうどんの味は悪くはなかった。
食べ終えた後、窓の外を見るといつの間にか暗くなっていた。
「そろそろ見れそうですね。鑑賞会を始めましょう」
作成したプラネタリウムをセットして電気を消した。球体の中に入れたライトの光が器に開けた穴から漏れ出し、丸い形の光が天井にいくつも写っている。
「おー」
「おおー」
「……」
「……」
「これ以上の感想が出てきませんね」
「せっかく作ったのに」
「予想していた通りのものが見れたなという印象です」
「感動はなかった?」
「そこまで無いですね。星空というほどでもないですし」
「まあ、作るのも簡単だったしね」
「そうですね」
「……」
「……」
「……今度本物でも観に行きますか?」
実にくだらない、彼女と付き合い始めるきっかけとなった話である。




