表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/153

第五話 第十五話 ノア、正しさをずらしても

ノア君今回はうまくいく回

~橋は、置いただけでは渡られない~


噂は、確かに少しだけ形を変えた。


“冷たい”

“人間じゃない”

“アンドロイド”


そうした言葉は、露骨には使われなくなった。


代わりに出てくるのは、

もっと無難で、

もっと安全な言い回しだ。


「佐伯さんの判断、正しいんだけどね」

「でも、早すぎるんだよ」

「説明はしてくれるよ?聞けばね」

「聞ける人には、だけど」


現場は回っている。数字も、進捗も、目に見えて改善している。


だからこそ、誰も“問題だ”とは言わない。


言えない。


それでも、空気は重いままだった。


ノアは、その空気の中を歩いていた。


前に立たない。

指示もしない。

判断もしない。


ただ、人の隣に立つ。


「……この工程、正直、まだ自信なくて」


ぽつりと落ちた声。


ノアは、足を止めた。


「どこが?」

「え?」

「どこが分からない?」


相手は一瞬、驚いた顔をする。


「……聞いて、いいんですか?」

「いいよ」


ノアは、即答した。

迷いがなかった。


相手は、少しだけ肩の力を抜く。


「佐伯さんに聞くと、“正解”は返ってくるんです」


「でも、その正解に、どう辿り着けばいいのかが分からなくて」


ノアは、頷いた。

それは、正しさの問題じゃない。

”途中の話”だ。


「兄さんの判断は、最短ルートなんだ」


ノアは、ゆっくり言葉を選ぶ。


「でもさ」


「最短ルートって、地図持ってる人向けだろ」


相手が、はっとする。


「俺さ」


ノアは、自分を指す。


「兄さんほど、見えてない。だから、途中で迷う

でも、、、迷ってるって言わないと、余計に置いていかれる気がしてさ」


沈黙。


その沈黙は、さっきまでのものと違った。


逃げの沈黙じゃない。

考える沈黙だ。


「……」


「だから」


ノアは続ける。


「正解を聞く前に、“今どこにいるか”を一緒に確認しよう」

「……」

「それだけで、だいぶ違うから」


相手は、小さく笑った。


「……それ、佐伯さんに言っていいやつですか」

「いいよ」


ノアは、少しだけ笑う。


「俺が言われたことだから」


その日、ノアは三つ、同じような会話をした。

質問は、増えた。


判断は、遅くなった。


でも。


現場の声は、確実に戻り始めていた。


夕方。


ノアは、オフィスの廊下で悠馬を見かけた。


相変わらず、細くて、静かで、正しい背中。


声をかけようとして、一瞬、迷う。

でも、今日は迷わなかった。


「兄さん」


悠馬が振り返る。


「……どうした」

「現場でさ」


ノアは、短く要点だけを伝える。


「“正解までの道筋”が見えなくて止まってる人がいる」


悠馬は、すぐには答えなかった。

その沈黙が、以前と違う。


考えている沈黙だ。


「……質問は、増えたか?」

「うん」

「時間は?」

「少しかかる」


悠馬は、目を伏せる。

そして、静かに言った。


「それで、回っているなら問題ない」


ノアは、胸の奥で小さく息を吐いた。


渡った。


ほんの一歩だが、確かに。

橋は、最初からそこにあった。


だが、渡らせる人間がいなかった。


ノアは、今日初めてその役目を果たした。


翻訳ではない。

説得でもない。


『隣に立って、位置を確認しただけ』。


それだけで、現場の空気はほんの少し、軽くなった。


噂は、まだ消えていない。


だけど。


噂だけが、すべてではない。


ノアは、そう確信し始めていた。


ーーー橋は、渡らせるためにある。


そして。


その役目を、自分が担えるかもしれない。

そんな手応えを、初めて感じながら。


ノアは、もう一度、現場へ戻っていった。



感想をいただけると嬉しいです。

※一応完結分までは完了してますので都度載せる予定です。

よろしければ見てください。


AIアシスト作品です。


僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。

気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。

これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ