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第五部 第十四話 悠馬、噂を、止めないという選択

だいぶん終わりが見えてはきた。見えてはきたけど終わらない。

翌朝。


オフィスは、昨日と変わらず静かだった。


噂が消えたわけではない。

むしろ、

確実に流れている。


でも、表に出てこない。


ーーーそれが、今の一番厄介な状態だ。


僕は、端末を開き、いくつかの通知を確認した。


動画。

写真。

コメント。


凛と蘭が

“準備だけ”と言っていたもの。


限定。断片。偶然を装った拡散。


どれも、止めようと思えば止められる。


法的に。組織として。


ジェシカなら、一言で終わらせられる。


だが。


「……止めても、意味はないな」


そう、結論が先に出た。


止めれば、“隠した”になる。


否定すれば、“事実だった”になる。


完全に消せば、“触れてはいけない何か”になる。


噂は、止めるほど輪郭を持つ。


だから、止めない。


代わりに、位置をずらす。


僕は、メッセージを一通送った。


『今後、私個人に関する話題は業務連絡に含めないでください』


短い。命令でも、お願いでもない。


“線を引いた”だけだ。


次に、資料を一つ、共有フォルダに置く。


題名は、極めて事務的。


『業務判断の前提条件について』


中身も、いつも通り。


・判断基準

・確認手順

・質問の窓口


でも、一行だけ追加した。


> ※不明点がある場合、

>  判断前の相談を推奨する。


“必須”でも、

“義務”でもない。


推奨。


それだけで、十分だと判断した。

 

昼。


会議は、いつも通り進む。

しかし、一つだけ違いがあった。


「……ここ、確認してもいいですか」


質問。


小さな、でも確かな。


僕は、少しだけ間を置いてから答えた。


「もちろんです」


声は、変えていない。

説明の内容も、変えていない。


ただ。


”答えるまでの速度を、少し落とした。”


それだけ。

その“間”に、空気が流れる。


考える時間。聞いていい時間。

会議が終わる。


誰も、何も言わない。


だが、去り際に視線が合う。

以前のような、距離のある目ではない。


探るような、様子見の目。


「……」


完璧ではない。


噂も、止まっていない。


でも、今朝よりほんの少しだけ空気が変わった。


ノアの言葉を、思い出す。


“別の層”。


そこに、橋を架ける。

橋は、派手である必要はない。


渡れることが、大事だ。


夕方。


ノアから、短いメッセージが届く。


『今日は、少し話しやすかったです』


それだけ。


僕は、端末を閉じた。


噂を止めることは、できない。


でも、噂に自分の立ち位置を決めさせる必要もない。


止めない。

乗らない。

少し、

ずらす。


それが、今の僕にできる最善だった。


そしてーーー


これは、一人ではできない作業だ。


翻訳者がいる。

拾う者がいる。


その前提を、ようやく自分の中に置いたまま。


僕は、次の予定を確認した。


まだ、道は続いている。



感想をいただけると嬉しいです。

※一応完結分までは完了してますので都度載せる予定です。

よろしければ見てください。


AIアシスト作品です。


僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。

気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。

これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。

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