幕間 凛と蘭は、だいたい分かっている(※ただし事故は起きる)
まぁいわゆる”お約束”?
ロンドンから少し離れた場所。
カフェの奥、コンセント席。
凛と蘭は、スマホを挟んで向かい合っていた。
「……ねえ」
「なに」
「最近、タグおかしくない?」
「おかしいね」
画面には、やたら整った資料スクショ、
妙に切り取られた会議風景、
そしてーーー
「また出てる」
「出てるね」
「“佐伯悠馬=妖精説”】【注:実在しない】
二人同時にため息。
「妖精はさすがに盛りすぎ」
「でも分かる気もする」
「実体感ないもんね」
「いるはずなのに、いない感じ」
凛が指を滑らせる。
「こっちは?」
「“感情欠落系エリート”】【注:医学的根拠なし】
「アンドロイド説ね」
「あと」
「BL疑惑」
「それはまた別ジャンル」
二人、無言で頷く。
「まあ」
「悪意はないよね」
「ないね」
「全部“分からないから”だし」
「理解できないものをキャラ化してるだけ」
蘭がカップを持ち上げる。
「で、これ」
「なに」
「昔の写真」
画面には、細い悠馬と、すでに大きいノア。
距離が近い。無自覚に。
「……これは」
「売れる」
「売れるね」
即断。
だが、次の瞬間、
二人は同時に動きを止めた。
「……いや」
「待って」
「今は」
「出さない」
凛が真顔になる。
「これは“準備”」
「うん」
「今出すと」
「兄さんの胃が死ぬ」
蘭も頷く。
「今はまだ」
「静観」
「仕込むだけ」
「編集して」
「選別して」
「倉庫に置く」
指が、迷いなく動く。
「タグ、仮」
「説明文、下書き」
「価格設定、参考値」
すべて、“まだ公開しない前提”で。
「これで」
「よし」
「後は」
「様子見」
二人は、スマホを伏せた。
ーーーはずだった。
「……ん?」
蘭が、眉をひそめる。
「何?」
「……予約入ってる」
「は?」
「“公開待ち”のはずが」
「……限定公開?」
凛が画面を覗き込む。
「……あ」
「なに」
「プラットフォーム」
「初期設定、“自動解放”だ」
一瞬の沈黙。
「……」
「……」
「……まあ」
「少量だし」
「様子見、続行で」
凛が言う。
「本公開じゃない」
「テスト配布みたいなもの」
「ね?」
蘭も、小さく肩をすくめる。
「……誰も気づかないでしょ」
「うん」
「今はまだ」
二人は、そのまま話題を変えた。
ジェシカが通りがかる。
「……あなたたち」
「また」
「ろくでもない顔」
「褒め言葉?」
「いいえ」
ジェシカは画面を一瞥し、静かに息を吐いた。
「……理解はできる」
「止めはしない」
「でも」
二人を見る。
「“事故”だと分かった時点で」
「必ず報告しなさい」
「了解」
「了解」
ジェシカは去り際に、ぽつり。
「……あの子、分からないまま一番傷つくタイプよ」
残された二人。
「ねえ」
「なに」
「これ」
「うん」
「たぶん」
「もう流れ始めてるよね」
凛が、苦笑する。
「準備だけのつもりが」
「世に出る」
「よくある事故」
蘭が静かに言った。
「兄さんとノアが」
「これを知るのは」
「……もっと後」
二人は、同時にスマホを見た。
数字が、ゆっくり動いている。
「……」
「……」
「まあ」
「静観は」
「続行で」
遠く離れた場所で、まだ誰も知らない“商品”が、
静かに、しかし確実に流れ始めていた。
それが、次に誰の胃を直撃するのか。
この時点では、まだ分かっていなかった?
感想をいただけると嬉しいです。
※一応完結分までは完了してますので都度載せる予定です。
よろしければ見てください。
AIアシスト作品です。
僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。
気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。
これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。




