第五部 第十話 これは、放っておく種類の問題じゃない
この辺で少し軽くいきたいですね。次は幕間
~ジェシカ・拓海・エドワード~
話は、予定された会議ではなかった。
ロンドンのオフィスでも、
ウィルトシャーの屋敷でもない。
オンライン。
短時間。
議題は一つ。
「……回ってるわね」
最初に口を開いたのは、ジェシカだった。
画面越しでも、表情ははっきり読める。
これは、“感情”の話ではない。
「どこまでだ」
エドワードが、低い声で聞く。
「下層部だけじゃない」
ジェシカは即答した。
「中間管理層まで染み始めてる」
「内容は?」
拓海が、腕を組んだまま問う。
「人格否定」
「冷酷」
「人間じゃない」
「現場を知らないエリート」
一つ一つ、淡々と並べる。
「……最悪だな」
拓海が、吐き捨てるように言った。
「仕事の批判なら、まだ潰せるが、人格は潰せない」
「ええ」
ジェシカが頷く。
「しかも、“分かりやすい悪役”がいない」
エドワードが、目を閉じる。
善意。
不安。
劣等感。
置いていかれる恐怖。
どれも、“よくあるもの”だ。
「……ノアの件は?」
エドワードが聞く。
「直接の原因ではない」
ジェシカは即答した。
「でも、引き金にはなった」
拓海が、深く息を吐く。
「……あいつ、また同じことを」
「殴ってはいないわ」
ジェシカが遮る。
「でも、言葉でやった」
「分かってねえんだろうな」
「ええそうね。自覚はない」
沈黙。
その沈黙が、何を意味するかは、三人とも分かっていた。
「悠馬は?」
拓海の問い。
「まだ、“仕事の問題”だと思ってる」
ジェシカの答えは、少しだけ重い。
「……だろうな」
拓海が頷く。
「アイツは、理解できないことを“整理”しようとする。
それが、今回は逆効果になってる」
「エド」
ジェシカが、エドワードを見る。
「あなたのせいでもあるわよ」
直球だった。
エドワードは、否定しなかった。
「……分かっている」
低い声。
「優秀すぎる人間を、“要”に据え続けた」
「周りが追いつく前に。
結果、理解できない側を育てなかった」
拓海が、静かに言う。
「ノアが脳筋なのは、俺のせいだがな」
一瞬、空気が緩む。
だが、すぐに戻る。
「問題は」
ジェシカが言う。
「このまま行くと、悠馬が“孤立する”」
「もう、始まってるわ」
拓海が、拳を握る。
「……あいつ、自分が刺されてるって分かってねえ」
「ええそうね、
“なぜ刺されるのか”が分からない」
「ノアを戻すか?」
エドワードが問う。
「今は早い」
ジェシカが首を振る。
「ノアは、まだ翻訳できない」
「でも、必要になる」
「ええ。“橋”として」
拓海が、画面を見つめる。
「……じゃあ、今やることは一つだな」
「ええ」
三人の意見は、一致していた。
「悠馬を、一人にしない」
「正しさを、盾にさせない」
「そして」
ジェシカが、静かに締める。
「“これは危険域だ”と、私たちが理解していることを忘れない」
会議は、それだけで終わった。
対策は、まだ打てない。
だが。
”放っておく選択肢は、もう消えた。”
感想をいただけると嬉しいです。
※一応完結分までは完了してますので都度載せる予定です。
よろしければ見てください。
AIアシスト作品です。
僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。
気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。
これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。




