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第五部 第五話 ノア、拾える声と、拾えない意味

ノア現場に立つ

現場に戻ったのは、卒業してすぐだった。

正式な配属でも、肩書きでもない。


ただの「見て回る役」。


拓海に言われた言葉は、それだけだ。


「決めるな、背負うな、拾え」


簡単なようで、よく分からない。


でも、分からないままやるしかないのも、分かっていた。


最初の現場。空気は、悪くない。


仕事は回っている。手順も整っている。

誰かが怒鳴ることもない。


むしろ、静かすぎる。


「……」


ノアは、邪魔にならない位置で立っていた。


話を聞く。

質問は、しない。


ただ、聞く。


「最近、判断早いよな」

「佐伯さんが全部見てるからな」

「助かるけど」

「……ついていくの、正直きつい」


声は、小さい。

愚痴、というほどでもない。


だから、誰も止めない。


ノアは、その言葉を頭の中で転がした。


助かる。きつい。

両立する感情。


「現場、あんまり来ないよな」

「でも、把握はしてるんだろ」

「……してる、とは思う」


言い切られない。

そこに、違和感がある。


別の場所。


別の人。


「佐伯さんって、冷たい?」

「いや、冷たいっていうか」

「感情、見えない」

「正しいんだけどさ」


正しい。

またその言葉だ。


ノアは、胸の奥が少しざわつくのを感じた。


これは、責めじゃない。

評価でもない。

ただの、距離感。


昼休み。


隅の方で飲み物を買っていると、背後から声がした。


「……ノア君?」


振り向く。


「あ、はい」

「戻ってきたんだ」

「まあ、ちょっと」


それだけの会話。

でも、続けて言われた一言が引っかかった。


「兄、大変だな」


軽い調子。


冗談のようで、

冗談じゃない。


「……どういう意味ですか」


聞き返すと、相手は少し困った顔をした。


「いや、悪い意味じゃない」

「ただ」

「上に立つ人って、どうしても孤立するから」


孤立。


その言葉が、重く落ちる。

ノアは、何も返せなかった。


夕方。

現場を一通り見て、外に出る。


風が冷たい。


頭の中に、聞いた言葉が積み重なっている。


冷たい。

感情が見えない。

正しい。

ついていけない。

孤立。


「……」


ノアは、初めてはっきり思った。


兄は、悪く言われているわけじゃない。


むしろ、評価されている。


でも。


その評価の仕方が、人を遠ざけている。


「拾う、って」


拓海の言葉を思い出す。


拾う。

声は、拾えている。


でも。


”この声をどう扱えばいいのか、分からない。”


兄さんに伝えるべきなのか。


自分が何か言うべきなのか。

それとも、黙っているべきなのか。

正解が、見えない。


ノアは、空を見上げた。

夕焼けが、やけに静かだ。


「……兄さん」


小さく呟く。

このままじゃ、だめだ。


でも、どうすればいいかも分からない。

ただ一つ。

ここに、自分が戻ってきた意味はありそうだ。


それだけは、確かだった。



感想をいただけると嬉しいです。

※一応完結分までは完了してますので都度載せる予定です。

よろしければ見てください。


AIアシスト作品です。


僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。

気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。

これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。

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