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第七話 ノア・ハミルトンは、自分を疑い始めた / 佐伯悠馬は、週末を失った

俺は、強い。そう思っていた。


背は5歳上の悠馬兄さんと並ぶくらい高いし、筋肉は悠馬兄さんよりずっとついてる。

速く走れるし、大人と同じくらい力もある。

拓海父さんが教えてくれた通り、躊躇しないで前にも出られる。

そして、「ハミルトン家」という後ろ盾もある。


ーーーそれは正しいことだって思ってた。


でもあの日、相手を押し倒したあと悠馬兄さんがいないことに気が付いた瞬間。。。


胸の奥が、ひどく冷えた。


怒鳴られている間も、父上が黙っている間も、俺が考えていたのはただ一つだけ・・・


『悠馬兄さんにどう説明するか』


「……俺、間違ったのかな?」


そう聞いたとき、悠馬兄さんはすぐに答えなかった。そして・・・

それが一番怖かった。


示談は成立して、屋敷の名前も表には出なかった。

父上は言った。


「結果は抑えた。だが、次はない」


その言葉の意味を、俺は初めてちゃんと考えた。


夜、自分の部屋で拳を見る。………この手で誰かを壊せる。


今まではそれが誇らしかった。でも・・・今は悠馬兄さんの顔が浮かぶ。

報告したときの、あの静かな目。


あれは信頼と同時に管理されている視線だった。


『俺は危険だ。悠馬兄さんがいなければ。』


その事実を、俺は初めて否定できなかった。


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その一方で。

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※悠馬視点になります


それから、僕は毎週末屋敷に戻ることになった。


遠い学校、長い移動、短い滞在・・・


理由は誰も口にしなかった。でも、全員がわかっていた。


『ノアの安定装置』


それが僕だ。


平日は、まだ平和だった。


授業…寮…読書…


誰も、僕を呼ばない。それが救いだった。

………平日という名のオアシス。だから、僕は信じた。

このバランスなら耐えられる。週末だけ。それだけなら。


そう、その知らせがくる「まで」は。


【クリスマス休暇だ!】


寮監が淡々と告げた。


長期休暇。全員帰省。喜ぶ周りの生徒たち……


逃げ場は、、、無かった。


その夜、僕は久しぶりに眠れなかった。

胃が静かに痛んだ。


「平日が‥消える。」


それは思っていた以上に重かった。


屋敷に戻ると、ノアは少し変わっていた。


・動く前に僕を見る。

・拳を握る前に一瞬止まる。


それは進歩だった。でも同時に…絶望でもあった。


「悠馬兄さん」


ノアは低い声で言った。


「俺さ……いないほうがいい?」


その質問は初めてだった。そして「答えてはいけない」質問だった。


僕は初めて思った。


『ここから離れたい』


ノアを嫌いになったわけじゃない。家を憎んだわけでもない。


ただ……自分の人生を一度「自分の手に戻」したかった。


クリスマスの飾りが、屋敷に増えていく。明るくて、華やかで、、、

そして……「逃げ場がない」。

その光の中で僕は、初めて本気で考え始めた。


「拒否するという選択肢」を。


まだ、口に出してはいない。でも、考えてしまった。

それだけで歯車はすこし軋んだ。


ノアは「自分が危険だ」と知り始め、

僕は「自分が壊れかけている」と知った。


その二つは同時に進む。

だからきっと………

次は誰かが止めなければならない。


問題はそれが「誰なのか」ということだった。









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