幕間 ノアの進路相談②
今回幕間は4つです
~決めてないという選択~
夏休みも、後半に入っていた。
ノアは、自室のベッドの上に進路資料を広げていた。
大学案内。
専門学校。
留学パンフレット。
インターン募集。
……多い。
「……多すぎない?」
誰にともなく呟く。
ページをめくるたび、選択肢が増える。
増えるたび、決められなくなる。
「大学、行かないって言ったけどさ」
あれは、勢いじゃなかった。
少なくとも、衝動ではない。
前から、考えてはいた。
でも。
「行かない=何もしない、じゃないんだよな」
そこが、まだ曖昧だ。
机の端に、拓海の名刺が置いてある。
ーー現場、来るか?
短い一言。軽い誘い。
でも、重い。
「……現場」
正直、怖くないわけじゃない。
失敗したら、全部自分の責任。
兄さんみたいにフォローしてくれる人は、もういない。
いや。
「……いない、わけじゃないか」
思い出す。
殴った後の、悠馬の顔。
距離を取られた、あの感じ。
怒っていた。でも、感情的じゃなかった。
それが、一番きつかった。
「……引っ込んでろ」
あの言葉。拒絶じゃない。
でも、保護でもない。
ノアは、天井を見上げる。
「……自分で考えろ、ってことだよな」
ノックの音。
「ノア?」
エドワードの声。
「入るぞ」
「どうぞ」
エドワードは、進路資料を一瞥して眉をひそめた。
「まだ決めていないのか」
「……はい」
正直に答える。
「急ぐ話じゃない」
エドワードはそう言いながらも、
どこか落ち着かない。
「大学は考え直してもいい」
「選択肢は残せ」
正論。
だから、ノアはすぐに頷かなかった。
「……分かってます。
でも……」
一拍。
「今、決めたら、逃げになる気がして」
エドワードは、少し驚いた顔をした。
「逃げ?」
「はい」
「“普通の道”に隠れる、みたいな?」
しばらく、沈黙。
やがて、エドワードは深く息を吐いた。
「……ジェシカは何も言っていないか」
「保留でいい、って」
「……そうか」
エドワードは、それ以上踏み込まなかった。
「考えろ」
「それだけだ」
それだけ言って、部屋を出る。
しばらくして。
今度は、菜摘が顔を出した。
「お腹すいてない?」
「……少し」
「じゃあ、軽いものにしましょ」
それ以上、進路の話はしない。
それが、ありがたかった。
夜。
ノアは、また資料を閉じた。
「……答え、出てないな」
でも。
焦っていない。
前より、ちゃんと考えている。
それだけは、分かる。
机の端に、スマホが震える。
拓海からだ。
『無理に決めなくていい』
『現場は逃げない』
短いメッセージ。
ノアは、小さく笑った。
「……逃げない、か」
逃げない。
立ち止まっても、考えていても。
それは、逃げじゃない。
「……戻る時は…」
「ちゃんと、自分で決めて戻ろう」
兄さんの横に立つために。
補佐じゃなく。
並ぶために。
答えは、まだ先だ。
でも。
今は、それでいい。
感想をいただけると嬉しいです。
※一応完結分までは完了してますので都度載せる予定です。
よろしければ見てください。
AIアシスト作品です。
僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。
気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。
これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。




