第四部 第五話 佐伯悠馬、引き受けるということ
悠馬大王再び出る。悠馬君、胃薬足りてる?
騒ぎは、思ったより早く広がった。
会議室での暴力。
当主候補の不祥事。
若さゆえの未熟さ。
言葉は、
どれも整えられている。
事実は、一つだけだ。
『ノアが、人を殴った。』
それ以上でも、
それ以下でもない。
だから、話は早い。
問題は、構造ではない。
評価の歪みでも、期待の暴走でもない。
『暴力行為。』
それだけが、正式に問題視される。
そして。
その責任は、誰が取るのか。
答えは、最初から決まっていた。
「……今回の件ですが」
応接室。関係者が揃う。
ノアは、ここにはいない。
それでいい。
今、前に出るべきではない。
「ノアの行動は、未熟でした」
自分の声が、静かに響く。
怒りも、感情も、そこにはない。
「暴力は理由を問わず許されません」
誰も反論しない。
「ただし」
一拍。
「今回の件に至るまでの判断、配置、監督は、
すべて、私の責任です」
視線が集まる。
「ノアを前に立たせたのは私です。
表から下がり、裏で修正を続けたのも私です」
「結果として」
「彼に、過剰な評価と過剰な負荷を背負わせました」
誰かが、口を開こうとする。
でも、続ける。
「したがって」
「本件に関する対外的な責任」
「家としての対応」
「グループとしての説明」
「すべて、私が引き受けます」
それは、宣言だった。
了承を求めていない。
異論も出ない。
なぜなら、ここでそれを引き受けられる人間は他にいない。
「ノアは」
続ける。
「一定期間、表舞台から退きます。
学業に専念させます」
処分ではない。罰でもない。
必要な距離だ。
「彼の将来を閉ざすことはしません」
「ですが、今は立つ場所ではない」
場の空気が、静かに固まる。
それで、決まりだ。
会議が終わる。
廊下を歩きながら、自分でも思う。
ーーまた、前に出たな。
意図して下がったはずだった。
でも、構造が壊れた瞬間、前に出るしかなくなった。
それが、自分の役割だ。
納得している。
後悔もない。
ただ。少しだけ、疲れた。
屋敷も、グループも、一時的に落ち着くだろう。
その代わり。
すべての矢面は、自分に向く。
それでいい。
それが、引き受けるということだ。
佐伯悠馬は、再び“トップ”と呼ばれる位置に戻った。
望んだわけじゃない。
でも、逃げる理由もない。
ノアが、考える時間を取り戻したなら。
それで、十分だ。
次に彼が戻ってくる時。
今度は、自分の足で立てる場所を用意しておく。
それが、兄としての役目だと。
そう、決めた。
感想をいただけると嬉しいです。
※一応完結分までは完了してますので都度載せる予定です。
よろしければ見てください。
AIアシスト作品です。
僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。
気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。
これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。




