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第三部 第十二話 佐伯悠馬の、初仕事とその代償

いっそ噂を事実にしたら→()

悠馬君22歳。彼女いない歴=年齢です。

~トップとしての初仕事~

ーー噂を“仕事”に落とすーー


僕の仕事は、

派手な決断を下すことじゃない。


『場を整え、

角を落とし、

誰かが不用意に傷つかない位置に、

物事を置き直すことだ。』


……少なくとも、今の僕がやっていることは、

そういう類のものだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


翌朝。


僕は、ジェシカ叔母様と並んでオンライン会議に出ていた。


画面の向こうにいるのは、

例の――

“噂を前提に動き始めた”

国際文化交流団体。


正直に言えば、この場に自分が座っていること自体、

まだ現実味がない。


昨日まで、僕はただ

 「状況を整理する人間」

でしかなかったはずだ。


なのに今は、外部との窓口として、

“代表”の位置にいる。


胃の奥が、じわりと重くなる。


「本日はお時間をありがとうございます」


僕は、口を開いた。


声は、自分でも驚くほど落ち着いていた。


……ああ。こういう時、声だけは裏切らない。


「一点だけ、整理させてください」


画面の向こうが静まる。


全員が、こちらの言葉を待っている。


期待。

評価。

あるいは、

次の“物語”の素材探し。


その全部が、視線の奥にある。


「現在、流布している噂は」


一拍置いてから、続けた。


「当家の公式な発信ではありません」


……間。


空気が、わずかに張り詰める。


「ただし」


僕は、視線を逸らさずに言う。


「それを、全面否定する予定もありません」


相手が、身を乗り出すのが分かった。


ーー来た。


「我々が、現時点でお伝えできるのは」


「”ノア・ハミルトンは、まだ何も選んでいない、”

という事実です」


ここは、一番大事なところだ。


「そして、彼が選ぶための、

 時間と環境を守ることが」


「今のハミルトン家の最優先事項です」


沈黙。


だが、拒絶ではない。


相手は、考えている。


「……つまり」


向こうが言葉を選びながら言う。


「現時点での象徴性は維持しつつ、

将来の定義は、留保する、という理解で?」

「はい」


即答だった。


隣で、ジェシカ叔母様がほんの小さく頷く。

その仕草に、少しだけ背中を押される。


「それで」


 僕は続けた。


「もし、貴団体が若年層向けの

 プログラムを検討されるなら……

個人ではなく、

 “価値観”を前面に出してください」


言葉を、一つずつ置く。


「多様性。

選択の自由。

そして、未決定である権利。

それらを、テーマにしていただきたい」


画面の向こうの表情が変わる。


ーー理解した顔だ。


「……非常に現代的ですね」


「噂を、利用しているようにも見えますが」


僕は、少しだけ笑った。

否定する気は、最初からない。


「噂は、もう存在しています。

使わない方が、無責任です」


会議は、それ以上荒れることなく終わった。


「合格」


 ジェシカ叔母様が、短く言った。


「……仕事として、ですか?」

「トップとして」


その一言で、胃がきゅっと縮む。


やりたかったわけじゃない。評価されたかったわけでもない。


ただ、やらなければもっと酷い形で誰かが消費されると

…分かってしまっただけだ。


ーーーだから、引き受けた。


その時だった。

ジェシカ叔母様の端末が、小さく振動する。


一瞥して、画面を伏せる。


「……もう一件」


淡々とした声。


「同じ方向性で話が来ているわ」


胸の奥が、静かに沈む。


早い。思っていたより、ずっと。


ーーーああ。


これで、“一度きり”じゃなくなった。


ーー次も、あなたがやるんでしょう?


言葉にしなくても、空気がそう言っている。


「……結局」


心の中で、小さく呟く。


「王様扱いか」


声には出さない。

まだ、鳴らす時じゃない。


ただ、引き受けただけだ。


その代償が、これから少しずつ…

積み上がっていくことを、分かっていながら。






感想をいただけると嬉しいです。

※一応完結分までは完了してますので都度載せます。

よろしければ見てください。


AIアシスト作品です。

僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。

気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。

これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。

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