第三部 第十話 佐伯悠馬、トップに据えられる
噂回収編1 悠馬君胃薬の量が増える
噂というものは、一度“使える”と認識されると、必ず過剰利用される。
それは、歴史が何度も証明してきた。
「……増えてるな」
僕は、机の上に並んだ資料を見下ろした。
外交関連レポート。
メディア動向。
学術フォーラム。
すべてに共通する一文。
ーーハミルトン家の次期体制
「……“次期当主ノアと、その補佐役・佐伯悠馬”」
読み上げて、小さく息を吐く。
最初は、ただの噂だった。
次は、象徴として消費され。
そして今。
「……構造に組み込まれ始めている」
ノアが、背後で固まっている。
「兄さん……俺、まだ何も決めてない」
「知ってる」
僕は即答した。
「でも、外側はもう決め始めてる」
スクリーンに映るのは、国際会議の登壇者候補。
・Hamilton, Noah
・Saeki, Yuma
「……え?」
ノアの声が裏返る。
「待って、俺、呼ばれてない」
「“呼ばれている”」
僕は、淡々と続けた。
「本人の意思を確認しない形で」
沈黙。
ジェシカが、腕を組んで言う。
「第二波ね
第一波は“好意的誤解”
第二波は“既定事実化”」
菜摘が続ける。
「このままだと、ノアの将来も、悠馬の立場も
“選択前に固定される”」
ノアの顔色が、目に見えて変わる。
「……俺」
絞り出すような声。
「俺、カードになってる?」
誰も、すぐには答えなかった。
答えは、”YES”だからだ。
僕は、静かに目を閉じる。
否定する方法はある。
噂を切ることもできる。
全面的に“誤り”と宣言することも。
だが――
家は割れる。
エドワード叔父上は面子を失う。
外交関係は冷える。
ノアは“混乱の中心”に立たされる。
「……だから」
僕は、小さく息を吐いた。
「噂は“制御”じゃ足りない
回収する必要がある」
ノアが、不安そうにこちらを見る。
「兄さん、止められないの?」
僕は、一瞬だけ苦笑した。
「止めることはできる」
「でも、止めた結果を、引き受ける人間が必要になる」
一拍。
そして、内心でだけ呟く。
「……結局、王様扱いか」
望んだわけじゃない。
選んだわけでもない。
ただ、そう扱われる位置に押し上げられただけだ。
それでも。
ここで背を向ければ、もっと多くのものが
勝手に決まっていく。
だから悠馬は、一歩前に出た。
「僕が、回収役を引き受ける」
誰も驚かなかった。
それが、一番“楽な答え”だと
全員が分かっていたからだ。
感想をいただけると嬉しいです。
※一応完結分までは完了してますので都度載せます。
よろしければ見てください。
AIアシスト作品です。
僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。
気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。
これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。




