幕間 ノアの恋愛観(というより、選ばれ方の話)と、エドワードの懲りない画策
噂って、本人の耳に入るのは最後ですよね
~とあるパーティ会場~
正直に言えば、ノアはここに来る予定ではなかった。
だけど。
「顔を出すだけでいい」
「挨拶程度だ」
「すぐ帰れる」
その言葉を、最近何度も聞いている。
結果は、だいたいいつも同じだ。
「ノア様、よろしければ――」
「少しだけ、お時間を――」
囲まれている。完全に。
逃げ道はない。物理的にも、社会的にも。
ノアは、グラスを持ったまま立ち尽くしていた。
ーーまた、これだ。
見た目だけは、完璧らしい。
金髪。
整った顔。
背は高い。
姿勢もいい。
家柄は、説明不要。
条件だけ見れば、超優良物件。
そういう“評価”を、最近よく浴びる。
でも。
「……あの」
ノアは、できるだけ穏やかに口を開く。
「俺、その……お付き合いとかは」
「まあ!」
被せ気味に、相手は笑顔になる。
「まだお若いですものね」
違う。そうじゃない。
ノアは、心の中で静かに首を振った。
年齢の話じゃない。準備の話でもない。
ーーこの人たち、俺を見てない。
肩書き。
家。
顔。
それだけ。
会話は成立しているのに、視線が合っていない。
最近、この感覚にも慣れてきてしまった。
ふと、脳裏に兄の顔が浮かぶ。
悠馬兄さんなら、ここでどうする?
言い訳しない。
謝らない。
相手を否定もしない。
ただ、静かに距離を取る。
ーー無理だ。
俺は、そこまで上手くない。
兄さんみたいには、できない。
「……すみません」
ノアは、正直に言った。
「俺、誰ともそういうつもり、ないです」
一瞬、空気が止まる。
「……まあ」
誰かが、少し困ったように笑った。
「変わってますのね」
ノアは、小さく笑い返す。
「よく言われます」
残念王子、健在。
だがその瞬間、ノアはまだ知らなかった。
この“断り方”が、最悪の素材になることを。
噂の材料として回収されたいうことを。
――ハミルトン邸・書斎――
「……やはり」
エドワードは、机を軽く叩いた。
「先に事実を作るべきだ」
机の上には、資料の束。
婚約発表案(下書き)。
「既定路線にしてしまえば、皆、後から納得する」
理屈は、完璧だった。
……何度も使われてきた理屈だ。
「エド?」
背後から、低い声。
「それ、何回目?」
菜摘だった。
「……善意だ」
「知ってる」
即答。
「だから質が悪い」
次の瞬間。
資料は、ひったくられた。
「蘭は駒じゃないし、ノアも制御装置じゃない
皆にさんざん言われてるわよね?」
「……まだだ」
エドワードは、それでも粘る。
「私は諦めていない」
「私もよ」
菜摘、即答。
「だから止める」
沈黙。
善意と善意が、正面衝突していた。
~翌日~
「聞いた?」
「ハミルトン家の跡取り、女性に興味ないらしいわよ」
「え、じゃあ……?」
「男性の方がお好きなんですって」
尾ひれが付く。
羽が生える。
勝手に飛ぶ。
ノア本人は、その噂をまだ知らない。
ただ一つだけ、薄々気づいていた。
……何もしなくても、勝手に“物語”にされる。
それが、自分の立場なのだと。
感想をいただけると嬉しいです。
※一応完結分までは完了してますのでよろしければ見てください。
AIアシスト作品です。
僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。
気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。
これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。




