幕間 佐伯凛・蘭、日本で荒稼ぎして撃沈する
凛と蘭はビジネス的にはジェシカさん管轄です。
~日本・東京~
結論から言うと、
凛と蘭は無断で日本に来ていた。
理由は単純だ。
「悠馬が戻ってきて、
家がうるさくなる前に逃げよう」
「ついでに稼ごう」
なお、資金は……
悠馬の帰還前後のバタバタに紛れて二人で動かしていた案件の利益。
報告?
→していない。
許可?
→取るわけない。
完全にバカンス兼・事業視察だった。
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「……日本ってさ」
空港を出て、蘭が言う。
「思ってたより、人が多い」
「街が近い」
「あと」
一拍。顔を見合わせて言う。
「「情報量が多い!!」」
凛は周囲を見回す。
佐伯家はイギリスへ行って以来日本には来たことがなかった。
理由は単純で、昔、拓海がやらかして以来、
このルートがずっと封印されていたからだ。
初・日本。
初・自由行動。
そして……初・ノーマーク。
「……ねえ」
しばらく歩いて、蘭が足を止めた。
「なんか、人だかりできてない?」
若い女性たちが、一箇所に集まっている。
手にしているのは……
「アクスタ」
「缶バッジ」
「……ランダム封入?」
「なにこれ……」
蘭がスマホを取り出し、即座に調べる。
「“推し活”」
「推し?」
「好きな人を、応援する文化」
蘭の目が輝く。黄金色に。
「……凛」
「なに」
「これ、ちょっとやばくない?」
「うん」
凛の目が、
一瞬で切り替わる。
「ランダム性」
「希少性」
「情緒価値」
「顔が良いと、勝手に価値が跳ねる」
二人の脳裏に、同じ顔が同時に浮かぶ。
・若イケメン(弟)。
・イケおじ(叔父)。
「……いるね」
「いる」
「身内に」
「揃ってる」
「公式は?」
「まだ」
「じゃあ」
凛が静かに笑う。
「“非公式・二次流通”」
「グレー?」
「グレー」
「でも」
「撮影権、私たち持ってる」
蘭も、静かに頷いた。
そこからは早かった。
「貴族系イケメン推し活グッズ」
「日本限定」
「初期ロット少なめ」
「煽り文句強め」
「在庫、絞る」
数字が回る。
反応が来る。
予想以上に、回る。
「……やば」
「……楽しい」
凛蘭、完全に波に乗る。
……だが。
二人はまだ知らない。
この動きが、
✓ 無断
✓ 日本
✓ 荒稼ぎ
✓ 身内イケメン使用
という地雷原フルコンボだということを。
数週間後。
最恐ママンズのレーダーに引っかかり、すべてが露見する。
撃沈は、ほぼ同時だった。
「……楽しかったね」
「うん」
「でも」
「怒られる」
「確実に」
二人同時にため息。
なお、利益は没収された。
きれいに。
凛と蘭の日本初上陸は、大成功と大失敗を同時に記録して
静かに幕を閉じ………
なかった。
数日後。日本時間、深夜。
二人の端末に、同時に一通のメッセージが届く。
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From:Jessica Hamilton
面白い試みね。収益構造も、
市場の掴み方も、判断は悪くない。
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一瞬、希望がよぎる。だが、次の行。
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ただし。
無断。
日本。
身内使用。
二次流通。
「全部アウト。」
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凛、画面を閉じる。
「……管轄、覚えてた?」
蘭、静かに頷く。
「忘れてた」
……追撃。
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利益は没収します。
代わりに、
レポートを提出しなさい。
“なぜ回ったか”
“どこが危険だったか”
三日以内。
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「……三日」
「短い」
最後の一文。
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なお。
次に同じことをするなら、
最初から私を巻きなさい。
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二人は顔を見合わせた。
「……怒ってる?」
「怒ってない」
「じゃあ」
「次は、許可制」
凛と蘭は、深く息を吸った。
管轄を怒らせると、本当に怖い。
日本で学んだことの中で、それが一番、実用的だった。
感想をいただけると嬉しいです。
※一応完結分までは完了してますのでよろしければ見てください。
AIアシスト作品です。
僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。
気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。
これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。




