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第三部 第四話 逃げ道が、初めて本物になった日。

悠馬のパパンの拓海が「逃げた理由」を、別枠短編で出すか、幕間にするか考え中です。

ジェシカ叔母様に呼び出されてから数日が立った。


屋敷は相変わらず騒がしく、

でもーーー

僕の周囲だけ奇妙な静けさがあった。


皆、僕が”考えていること”を察している。

だから誰も口を出さない。


僕は書斎で一人資料を広げていた。


ハミルトン家の組織図

グループ全体の権限配置

ノアの将来設計ーーーの、未完成さ


「……やっぱり」


小さく呟く。


この家は「ハミルトン家」だ。

僕の家ではない。


本来なら……。


ノアはパブリックスクールを卒業する頃には

もう少し

”当主になる準備”が整っていたはずだ。


象徴として

判断者として

責任者として


でも、いま彼にはそれが無い。

いや……

整っていない。


「……僕がいたからか」


思考がそこに戻る。


僕が止めた

僕が調整した

僕が先回りした


善意で。

最短距離を選んで。


それがノアの下地を奪ったのか。


それともーーー

それがノアの本質なのか。

分からない

だから怖い。


視線を落とすと、別のフォルダが目に入る。

オックスフォード卒業後の

オファー一覧。


金融

コンサル

政策顧問

研究職


どれも破格

条件も裁量も自由度も高い


「……出られるんだよな」

初めて本気でそう思った。


ここを離れて、ハミルトン家と関係のない場所で。

誰の未来も背負わず、誰の要にもならず。


自分の力を思いっきり使う。


「……それは」

逃げ、だろうか。


逃げ、という言葉が胸に刺さる。

だが選択でもある。


僕は机に突っ伏した。


卒業式まであと少し。

決めなければならない。


ここで「王」となるか。

外に出るか。


ノックの音。


珍しいな。

この部屋に、こんな時間に誰か来るのは。


「入るぞ」


父さんの声だった。


「どうしたんですか」

顔を上げると、父はいつになる気まずそうだった。


「いや…」

頭をかく。

「…ちょっと様子見」


それだけで察した。

母さんに言われたな、これは。


父さんは僕の机の上を一目見て、すべてを理解した顔をした。


「…オファー、来てるな」

「はい」


しばらく沈黙。

父は椅子に腰を下ろして、低い声で言った。

「でたいか?」


即答できなかった。


「……わかりません」

正直に言う。

「出たら、、、楽になる気はします。

だけど、それが正しいかどうか……」


父さんは、小さく笑った。

「正しいかどうかなんてな…」

少し間をおいていった。

「俺も昔、逃げた」

唐突だった。

「警察を辞めた時だ」

視線を落とす。

「正義感も責任もあったつもりだった。

でも…家族を守れなかった。だから、あの時は”逃げた”」


僕は息を止めた。


「でもな」

父さんは、顔を上げる。

「今の俺は逃げたと思っていない。

必要な回り道だった。逃げなきゃ、壊れてた」


その言葉が胸に落ちる。


「だから…」

父さんは続けた。

「悠馬…

出ること自体は逃げじゃない。だけど…

分かっていておいていくならそれは逃げだ」


はっきりした声。


「お前はこの家が未完成だってわかっている。

ノアがまだ整っていないとわかっている。

それを…

知ったまますべて置いて出るなら…

それは逃げだ」


僕は何も言えなかった。


「でもな」

父さんは静かに言う。

「お前が全部背負えなんで、誰も言ってない。

トップに立つということは一人で立つってことじゃない。」


「立たせることだ」


ノアの顔が浮かぶ。

ジェシカ叔母様

菜摘母さん

凛と蘭

エドワード叔父上


「……僕は」


声が、少し震えた。


「立ちたいわけじゃない」


「知ってる」

即答する父さん。


「でも」

父さんは立ち上がる。


「お前がここで王として立てば、この家は壊れにくい。

それだけだ」


短い言葉。

でも、逃げ道を塞ぐには十分だった。


父さんは扉に手をかけて振り返る。

「卒業式はちゃんと出ろ?

決めるのはそのあとだ」


扉が閉まる。


僕は、一人残され天井を見上げた。


「……ずるいな」


誰にも聞こえない声。

逃げ道は確かにあった。

でも。


「戻る理由もはっきりしてしまった」


僕はオファー一覧を閉じる。


捨てはしない。

だた、今は。

卒業式が終わったら、僕はもう一度ハミルトン家に戻る。


ここの「王」として。

でも、ひとりではない王として。


それが、僕の最初の着地点だった。














感想をいただけると嬉しいです。


AIアシスト作品です。


僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。

気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。

これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。

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