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第三部 第三話 ノアは、兄を見上げて立ち尽くす

僕結構ノア君は好きです。

ジェシカ母上が帰ってきたのは、屋敷がようやく静まりかえった翌朝だった。


空気が、一段ひき締まる。


誰も声を荒げない。

誰も冗談を言わない。


ーーーこれは、”本体”が戻ってきたときの空気だ。


「昨日の件、最初から説明して」


ジェシカ母上の声は低く、静かだった。

怒っているときの一番怖いやつ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


書斎の前で、俺は足を止めた。


入っていいとは言われていない。


でも、離れられなかった。

扉の隙間から、中が見える。


悠馬兄さんは立っていた。

背筋もしっかり伸びている。


顔色も、声も、昨日と変わらない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ジェシカ叔母様」

兄さんが先に話し始めた。

「結論から言います」


ーーー言い訳しない。

その時点で俺はもうわかってしまった。


「僕は、条件付き帰還にもかかわらず場に介入しました。

それは事実です」


謝らない。言葉を濁さない。


「理由は三つ」


兄さんはタブレットを見せる。


1:即時判断が必要だった

2:非常停止権限者が不在だった

3:独断で動く者が出る直前だった


「僕は、判断はしていません。配置と整理のみです」


ジェシカ母上はだ、待って聞いている。

遮らない。


「結果として、事態は収束しました。。ですが…

これは再現すべき対応ではありません」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ここで、俺なら言う。


どうすればよかった?

次は何をすればいい?


すぐ聞く。正解を求める。


でも、兄さんは違った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「改善店を提示します」


そういって、画面を動かす。


・非常時代理権限の明文化

・時差対応の即時連絡プロトコル

・即決が必要な場合の“止め役”複数化


「これが整っていれば僕は立ちませんでした」


ジェシカ母上が初めて口を開いた。

「謝罪は?」


「ありません」

即答


「僕はまちがったとは思っていません

ですが……望ましい状態でもありません」


部屋が一瞬凍った。

でも、ジェシカ母上は笑った。


「……そう」

短く。

「悠馬、あなた、本当に変わらないわね」


怒りでも、皮肉でもない。

「評価」だ。


俺は、その瞬間に理解した。


兄さんは、責められに来ていない。

検証しに来ている。


だから、言い訳もしない。

謝罪もしない。

”正しさ”を感情で流さない。


胸がきゅっと縮む。


俺なら。

俺だったらーーー


あの場で絶対に言い訳を並べる。

すぐ謝る。


そして聞く。


「どうすればよかった?」


でも、兄さんは聞かない。

示す。


昨日。  

兄さんは、 俺に言った。


「全体を  第三者として見直して」  


俺は見た。そして、考えた。  

何度も。  


……でも、分からなかった。  

兄さんは、これをずっとやってきたのか。  

俺より、ずっと幼い頃から…。


「……敵わない」  


声に出さずに、思った。  

俺も、 それなりに “出来る側”なはずだ。

努力もしているし、考えている。  


でも。あんな風に離れない。


父上の言葉が頭をよぎる。


「悠馬はお前の右腕にするつもりだった」


見ていれば分かる。

父上でさえ兄さんには敵わない。

母上でさえ”対等”だ。


そしてーーー

たぶん、兄さんはそれを全部わかっている。


俺のことも。


父上や母上よりよく。


だから、止める役から”見る役”に変えたんだ。

俺を壊さないために。


「俺は、どうすればいいんだろう」

答えは、出ない。


分からない。

追いつけない。

真似もできない。


でも……。

逃げる気はなかった。

兄さんが止め役を降りた今、

俺は”止めてもらえない側”になる。


それが怖い。


でもーーー

多分必要なことなんだ。


書斎の扉が開く。


兄さんが出てくる。


俺に気づいて一瞬だけ目が合った。

何も言わない。

でも、わかった。


「見てたな

わかったな

それでいい」


そういわれた気がした。


俺は、立ち尽くしたまま深く息を吸った。


敵わない。絶対に。


それでも。

兄さんが前に立たないなら、俺は前に出るしかない。


自分なりのやり方で。


それが、兄さんに追いつけない俺の残された道だ。


ノア・ハミルトン 17歳


初めて「兄を超える」という幻想を捨てた日。


そして同時に「自分の役割を探し始めた日」だった。



















感想をいただけると嬉しいです。


AIアシスト作品です。


僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。

気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。

これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。

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