第三部 第二話 佐伯悠馬は、動かないと決めていた
悠馬君胃薬が増えるの回。
帰ってきて二日目の朝。
僕は確かに、何もするつもりはなかった。
昨日あれだけ「口出ししない」と宣言していたのだ。
人としての信用問題だ。
なのに……
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「いや、それは今決める話じゃない!」
「決めないと止まります!!」
「止まるなら止まればいいだろ!」
「それが一番まずいんですけど!?」
朝食前の小広間がすでに戦場だった。
「ジェシカ叔母様は?」
「時差」
「会議中」
「捕まらない」
はい詰み。
状況を整理しようと思ったその瞬間。
全員が別方向を向いていることに気が付いた。
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・エドワード: 「信用問題を最優先」
・菜摘:「損失を最小限に」
・拓海:「現場を止めるな」
・凛:「今なら攻められる」
・蘭:「このままだと契約違反」
・ノア:「……え?俺何すればいい?」
……ああ
これ、要が不在な時の典型的な崩れ方だ。
「悠馬は何も言わなくてもいいからね?」
菜摘母さんは言う。
優しい声。
でも……
「悠馬、どう思う?」
エドワード叔父上。
秒で矛盾……。
全員の視線が、僕に集まる。
無言の圧。
”止め役、来い”という顔。
「……」
僕は、深く深く、ため息をついた。
「条件付き帰還二日目にして破られるのか……」
誰にも聞こえない声……。
このまま黙っていたら、誰かが独断で突っ込む。
それが一番まずい。
僕は立ち上がった。
「五分ください」
声は、自分でも驚くほど落ち着いていた。
「判断はしません、決断もしません。
ただ、”整理”します」
一瞬、空気が止まる。
「今、起きている問題は三つ」
タブレットの共有画面を切り替えて説明する。
1:対外的な即時対応
2:内部の責任分担
3:二次被害の防止
「今皆はこの三つを”同時に一人でやろうとしている”」
凛が自分の画面を見ながら言う。
「……確かに」
「だから衝突する。なので……
役割を分けます」
迷いがない。
指示でもない。
これは”配置”だ。
「対外対応は叔父上。ただし声明は事実のみ。評価は入れない」
「数字と契約関連は菜摘母さんと蘭。ただ、即断しないで、損切りラインだけ決めること」
「現場は父さん。止めることはないけど、独断では進めないで。」
とりあえず僕は一気に言った。そして最後。
「ノア」
「はい?!俺?」
「今の全体をそのままメモして。後で第三者として見直して」
ノアが言う。
「……俺、それだけ?」
僕は言う。
「それが一番重要」
沈黙。……そしてーーー
「……よし」
エドワード叔父上が口を開いた。
「今の配置で行く」
誰も反論しない。なぜなら……
すでに全員、自分の役割に戻っていた。
十分後…
二十分後…
三十分後…
事態は、驚くほど静かに収束した。
損失は最小限
信用は維持
内部の混乱、なし
何事もなかったような屋敷の空気。
僕は、再び椅子に座り直し、再び口を閉じた。
……やってしまった
その場にいた全員が同じことを思っていたのがわかった。
「やはり、悠馬は王者だった。」
それが一番まずい。
ノアがぽつりと言う。
「……兄さん、やっぱすごい」
「違う」
僕は即答した。
「今のは誰でもできる」
…………
僕ははっきり言った。
「次は僕は立ちません。今日のこれは例外です。
ジェシカ叔母様がいなかった。即決が必要だった。条件がそろいすぎていた」
言い訳みたいだ…。僕は思った。
でも、境界線は引く。
「同じ状況がもう一度起きたら、、、
今度は”崩れてもらいます”」
誰も、笑わなかった。
その夜、僕は一人、部屋で胃薬を飲んだ。
久しぶりだった。
「俯瞰で見れる目がいないのが問題なだけなんだ」
僕は小さく呟いた。
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帰還二日目
最初の爆発はあっけなく収束し、その静けさの中で
全員が確信してしまった。
「佐伯悠馬は王である」と。
たとえ”条件付き”であっても。
そしてそれは彼自身が
「最も恐れていた」評価だった。
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僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。
気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。
これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。




