第二部 第十三話 佐伯悠馬は、戻る前に条件を書く。
悠馬君はもどったら散々こき使われます。でかい会社のトップとしてね。ハミルトン帝国の王様です。
( ゜д゜)ハッ!なんだ!この地味な話でも異世界っぽいじゃないか!(違)
Ⅰ:卒業が見え始め、悠馬は初めて「帰還」を考える
卒業が見え始める、というのは不思議な感覚だ。
終わりが近づくにつれて、焦るどころか
むしろ静かになる。
やることは減っていないのみ、選択肢だけがはっきりと形を持ち始める。
研究室の机の上で、スケジュール表を見つめながら
僕はそれを実感していた。
最終発表
口頭試問
提出期限
全部現実的だ。
そしてその先に、”帰る場所”がある。
ーーー戻る、か。
その言葉を、僕は心の中で転がしてみる。
重い。
だけど、以前ほど苦くはない。
僕は、ノートを一冊、新しく開いた。
白紙の一ページ目に、タイトルを書く。
『帰還条件』
書きながら、少し笑ってしまう。
「……学生が書くメモじゃないな」
でも、これを書かないまま戻ることはできない。
それだけははっきりしていた。
僕は箇条書きで書き始める。
・決定権を集中させない
・非常時でも”代替可能性”を残す
・感情的判断を制度で制御する
・自分がいなくても回る構造を維持する
・”善意の過労”を許さない
……ひどい条件だ。
だれにとっても。
特に、「僕自身」にとって。
書きながら、頭に浮かぶ顔がある。
叔父上
父
母
ジェシカ叔母様
ノア
……そして凛と蘭
彼らは悪意で僕を使ったわけじゃない。
むしろ逆だ。
信頼した結果、集中させてしまった。
だからこそ、戻るなら同じ役割では戻れない。
あの頃の僕は「止めればいい」と思っていた。
止め続ければ、みんなが傷つかずに済む、と。
でも、それは違った。
止める人間が固定された瞬間、
他の全員が止まらなくなる。
それが僕の研究で証明されてしまった。
ノートをめくる。
もう一つ、大事なことを書き足す。
・期間後、最初の判断は自分が下さない
これを書いた瞬間、胸の奥が少しだけ痛んだ。
でも、これがないと台無しになる。
『王が戻るなら、最初は王であってはいけない』
観察して、聞いて、壊れていないかを見る。
それができないなら、戻る意味がない。
ふと、ノアの顔が浮かぶ。
あいつは、たぶん僕の考えに一番早く気付く。
そして一番苦しむ。
それでも逃げないだろう。
……そういうやつだ。
落ち上や父たちが、僕の論理を誤用しかけていることも多分起きている。
ジェシカ叔母様がいないならなおさらだ。
でも、それを今の僕が止めに言ったらすべてが逆戻りになる。
だから、今は知らないふりをする。
冷たい選択だ。
でも、必要な距離だ。
研究室の窓から、夜の中庭を見る。
学生たちが笑いながら歩いている。
僕も、その一人だ。
少なくとも、今は。
思い出す。
あの頃、僕はまだ五歳で、この役割を選んだわけじゃなかった。
でも今は違う。
戻るなら、選んで戻る。
ペンを置いてノートを閉じる。
条件は揃った。
逃げ道でも、言い訳でもない。
ーーー帰る準備はできてしまった。
それが、
少し怖くて
すこし安堵でもある。
僕はまだ帰っていない。
でも、戻る条件を自分で書けたという事実だけは
確かに僕を前に進ませていた。
あとは、オックスフォードでのすべてを終えるだけだ。
その先で、僕はもう一度ハミルトン家の門をくぐる。
ーーー条件付きで。
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AIアシスト作品です。
僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。
気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。
これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。




