第二部 第十話 それぞれの戦場で、選んだ重さ
悠馬君は学校近くの部屋で一人で暮らしています。マメそうだからちゃんと自炊とかしてそう。
Ⅰ:ジェシカは盾になった
アメリカの夜はいつもより長かった。
ジェシカの前には、複数の画面。
ハミルトン家関連の案件
自社の株価
世論の動き
ーーーすべてが彼女の名前に紐づけられている。
「……来たわね」
静かな声。
予想していた反応だ。
彼女が前に出た瞬間、矛先は必ず向く。
それをわかっていてでた。
記者会見
フラッシュ
質問
含みのある言葉
「ハミルトングループの内部混乱について………」
ジェシカは一切否定しない。
「変革期です」
それだけ言う。
「責任は?」
「私が取ります」
即答。
経営者としての正しい答え。
だけどーーー
個人への負荷は計り知れない。
会見後、一人になったオフィスでジェシカは本に一瞬だけ目を閉じた。
「……強いわね、私」
冗談みたいに呟く。
でも、本音でもあった。
そして、メッセージを一つ送る。
宛先:佐伯悠馬
「前は、私が立つ」
それだけ。
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Ⅱ:悠馬の”学生としての危機”
オックスフォードでは、嵐は別の形できていた。
研究室
教授と外部審査員。
悠馬は椅子に座り真正面からみられている。
「君の研究は明らかに実務のにおいが強い」
「これは学生研究として許容される範囲なのか」
悠馬は一瞬だけ迷った。
言い訳はできる。隠すこともできる。
だけど、、、それは守りたいものを裏切る。
「……これは、僕が見てきた現実を基にしています」
正直な答え。
「ならば」
教授は問う。
「その現実を切り離せますか」
ーーーーー鋭いな、そう思った。
悠馬は深く息を吸った。
「切り離します」
はっきり言う。
「今は学生としてここにいます」
重い沈黙……
「良い」
外部審査員が言った。
「それができるなら」
条件付きで、研究継続が認められる。
部屋を出た後、悠馬は廊下の壁に少しだけ額を預けた。
「……危なかった」
心臓がまだ早い。
守れた……。
『学生である自分を』
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Ⅲ:ノアは、守る側に立つ
ハミルトン邸
小さな混乱が再び起きていた。
対外対応の現場。
若手の使用人が責任を押し付けられそうになっている。
以前なら、ノアは前に出ただろう。
声を荒げ、力で止めた。
だけど、今回は違った。
「その件、一度持ち帰らせてください」
静かな声。
でも、はっきりしている。
相手は戸惑う。
「君は?」
「ハミルトン家の一員です」
それだけ。
肩書は使わない。
ノアは、執事長の元へ行き、状況を正確に伝える。
憶測はいれない
感情も入れない
「……よく、我慢しましたね」
ノアはすこしだけ照れたように視線を逸らした。
夜
ノアは自室でスマホを見る。
悠馬からの返事はない。
でもいい。
「にいさん……」
小さく呟く。
「俺、ちゃんと止めた」
それは、自慢でも報告でもない。
”約束”だった。
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Ⅳ:三人は、別々の場所で同じ方向を見る
アメリカで、ジェシカは再び矢面に立っている。
オックスフォードで、悠馬は学生として踏みとどまった。
屋敷で、ノアは初めて守る側に立った。
それぞれが、自分の役割を全うしている。
完璧ではない。
でも”崩れていない。”
悠馬は、夜空を見上げながら思った。
自分は、まだ大学生だ。
でも、もう何も背負っていないわけではない。
ジェシカは、夜空のオフィスで小さく笑った。
「……育ったわね」
誰にともなく。
ノアはベットに横になり目を閉じた。
今日は筋トレをしていない。
でも、、、胸は妙に軽かった。
三人は、それぞれの場所で同じことを思っている。
『守るとは、前に立つことではない。
崩れないように支えることだ』
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AIアシスト作品です。
僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。
気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。
これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。




