第二部 第二話 ジェシカは待たず、王に命令が届く
お話がやっと本筋に軽く触れてきました。(多分)
ノアは寮にいた。
規則正しい生活
定められた時間割
問題は起きていない。
ーーー少なくとも表面上は。
ハミルトン邸も一見すると平和だった。
怒鳴り声はない
物は壊れていない
誰も暴走していない
だが、、、、、
「誰も止めていなかった」
最初に崩れたのは、「順序」だった。
決済が飛ぶ
根回しが抜ける
確認が後回しになる
すべて、致命的ではない。
だが、積み重なる。
ジェシカはその”積み重なり方”を一目で理解した。
”数字”が、騒いでいる。
「……遅い」
誰にも聞かせない声。
彼女はもう一度報告書を読み返す。
そこに悠馬の字はない
その瞬間、ジェシカは決めた。
『待たない』
電話を取り、短く指示を出す。
「案件、すべて一時停止。例外は認めない」
執事長が一瞬息をのむ。
「……当主の承認は」
「私が出す」
その声は揺れていなかった。
屋敷がざわつく。
止められた流れ
遮断された連絡
戸惑う使用人
それでもジェシカは表情を変えない。
「これは崩壊じゃない、破綻の手前よ」
独り言のようにつぶやいた。
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その夜。エドワードが書斎に入ってきた。
「…やりすぎじゃないのか?」
ジェシカは顔を上げない。
「遅すぎたの」
……それだけ。
「悠馬に連絡すべきだろ」
その言葉で、ジェシカは初めて手を止めた。
「ええ」
そしてはっきりという。
「戻れ、と伝える」
エドワードは一瞬だけ目を閉じた。
それがどんな意味を持つか、わかっていたからだ。
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ーーー同時刻、オックスフォード
僕は、図書館からの帰り道でスマホをみた。
通知は一件
差出人は……ジェシカ
「戻れ」
理由は書いていない。
それが、彼女なりの誠実さだった。
足が止まる。風がやけに冷たい。
僕はすぐに理解した。
これは相談じゃないし、お願いでもない。
「判断を委ねた命令」だ。
戻れば、また元に戻る。
止める役
調整役
胃薬の日々
そして、、、何れ、完全に掌握する未来。
戻らなければ、家は壊れる。
ゆっくり、確実に。
誰かが「取り返しのつかない一手」を打つ。
「……卑怯だな」
僕は小さく呟いた。
攻めているのはジェシカではない。
彼は、空を見上げた。
オックスフォードの空は、今日も静かだった。
嵐の気配はここにはない。
スマホを握り、返事を書く。
消して、また書く。
最後に残ったのは短い一文。
「状況を、正確に教えてください」
それが、僕の答えだった。
即座に戻らない。
でも、目をそらしもしない。
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ジェシカはその返事を見て、小さく笑った。
「……ええ、それでいい」
彼女が欲しかったのは服従ではない。
「自覚」だった。
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嵐はもう始まっている。
音を立てず、でも確かに。
次に動くのは、悠馬なのか
それとも、、、壊れかけた家か。
感想をいただけると嬉しいです。
AIアシスト作品です。
僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。
気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。
これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。




