幕間 ジェシカは、王(悠馬)を鍛える ※ついでに商才も拾う
余談ですが、凛と蘭は女子高でもこっそりとビジネスをしてママンズに怒られます。
ジェシカ・ハミルトン叔母様が僕を呼び出した理由は、実に単純だった。
「時間、ある?」
その言い方は、会議前と同じだった。
ーー逃げられないやつだ。
場所は、書斎でも応接間でもない。
”キッチン”だった。
「……ここで、ですか?」
「ええ」
ジェシカ叔母様は即答する。
「思考は、日常の中で鍛えるものよ」
僕は、なんとなく嫌な予感がした。
「質問するわ」
ジェシカ叔母様は冷蔵庫を開けながら言う。
「ハミルトン家が明日、突然三割収入を失ったら?」
「……支出を精査します」
「遅い」
即、却下。
「最初にやるべきは”誰が困るか”を把握することね」
僕ははっとした。
「数字は結果。人が原因」
叔母様は野菜を刻みながら続ける。
「誰が暴れるか、だれが黙るか、誰が泣くか……
それを”予測”しなさい」
僕は静かに考えた。
ノア
父さん
エドワード叔父上
……真っ先に浮かぶ。
「その顔」
叔母様が笑う。
「合格」
「次」
「あなたがこの家を完全に”掌握”した時」
僕の胃が、キュッとなった。
「一番厄介なのは、誰?」
すこし考えて、答える。
「……僕自身、だと思います」
叔母様は満足そうに頷いた。
「正解
優秀な支配者ほど自分を酷使する。だから…
”自分を制御できない王は必ず滅びる”」
その言葉は、冗談じゃなかった。
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その頃。
屋敷の別室では、「再び事件が起きて」いた。
「ねえ凛」
「なに?」
「これ、前より効率よくない?」
蘭がタブレットを操作する。
画面にはハミルトン家”周辺”の情報が並んでいた。
今回は、ブロマイドではない。
・匿名アンケート
・ファン心理分析
・需要調査
・限定コンテンツ化
「……これ、データ売れるね」
「だね」
双子は、静かに荒稼ぎしていた。
そして……。
「……あら」
それに気が付いたのがジェシカだった。
偶然、だが、最悪のタイミング。
「これ、誰がやったの?」
凛と蘭は一瞬だけ視線を交わした。
ーー逃げ場、なし。
「「……私たちです」」
「ふうん……」
ジェシカは怒らなかった。
……それが、一番怖い。
「売り上げは?」
「……そこそこ」
「構造は?」
「……再現可能」
沈黙……。
そして、ジェシカは笑った。
「素晴らしいわ」
凛が、目を丸くする。
「……え?」
「違法じゃない。倫理はグレー。でも、才能は本物ね」
「悠馬」
「はい」
「見なさい」
ジェシカは言う。
「これが、”管理すべき才能”よ」
凛と蘭はその日から”監修付き”になった。
勝手にはやらせない。でも、潰さない。
「才能は、枠に入れるのよ」
ジェシカはあっさり言った。
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夜。
僕は一人で胃薬を飲みながら思った。
ーーこの人、母でも、女王でもなく……
『経営者』だ。
そして、僕を同じ立場に立たせようとしている。
「逃げられないな……」
呟くと、ジェシカが通りかかった。
「当然よ」
即答。
「でも安心して?”あなたは、一人でやらせない”」
僕はすこしだけ救われた気がした。
胃は、相変わらず痛かったけれど。
感想をいただけると嬉しいです。
AIアシスト作品です。
僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。
気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。
これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。




