幕間 ジェシカは笑い、エドワードは墓穴を掘る
僕、ジェシカ母さんが好きかも。
ジェシカ・ハミルトンは紅茶を飲みながら確信していた。
ーーこの家、もう実質悠馬が回してるわね。
彼女がそれに気づいたのは、とても些細な出来事だった。
屋敷の修繕計画。
予算。
人員配置。
本来なら、エドワードが最終判断を下す。
……はずなのに。
「それ、来年度に回したほうがいいと思います」
静かに言ったのは悠馬だった。
誰も反論しない。
誰も説明を求めない。
全員が「そうだな」と、思っている顔。
ジェシカは思わず笑った。
「ねぇ、エド?」
「なんだ?」
「もう、当主交代してるわよ?」
エドワードは聞こえないふりをした。
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その夜、ジェシカは夫を書斎に捕まえた。
「で?」
「……で、とは?」
「悠馬の事」
エドワードは、一瞬だけ天井を見る。
ーーあ、これ逃げられないやつだ。
「優秀だろう?」
「それはわかってるわ」
「責任感もある」
「それも知ってるわ」
「文句はないはずだ」
ジェシカは、にこやかに首を傾げた。
「じゃあ聞くけど……
あなた、”悠馬がいなくなったらどうするの?”」
その瞬間だった。
「困る」
即答。あまりにも、、即答。
ジェシカは目を見開いた。
エドワードはハッとした。
ーーしまった。
「……困る、というのは…」
「言い直さなくていいわ」
ジェシカは笑顔で遮った。
「十分聞こえたから」
沈黙の後、、、エドワードは観念した。
「……怖いんだ」
低い声。
「悠馬がいないと、ノアが止まらない。家が暴走する…また、壊れる」
ジェシカはゆっくり頷いた。
「つまり…あなたは悠馬を、当主のために必要としているんじゃなく、父親として安心材料にしている」
エドワードは、否定できなかった。
それが…本音だったから。
「ねえ?」
ジェシカは少し声を落とす。
「悠馬は、”壊れない子”じゃない。”壊れないフリ”が上手いだけ」
その言葉は、エドワードに深く刺さった。
翌日。
ジェシカは悠馬をテラスに呼び出した。
唐突だった。
「あなた、自分が後継者扱いされてるのしってる?」
悠馬は一泊置いてから答えた。
「……胃薬が減らない理由はわかっています」
ジェシカは吹き出した。
「正解」
そして真顔になる。
「私はあなたを認めている。能力も、覚悟も、、、でもね」
指を立てる。
「エドワードがあなたに依存し始めたら……
私が、あなたを引きはがすわ」
悠馬は、少し驚いた顔をした。
「……味方、ですよね?」
「ええ」
ジェシカは迷いなく答える。
「あなたの味方」
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その夜。
エドワードはジェシカに言われた。
「悠馬を後継として扱うなら……”逃げられる余地”も、一緒に渡しなさい」
エドワードは苦笑した。
「……本当に、君には敵わないな」
ジェシカは肩をすくめる。
「当然よ」
「私はこの家で一番”外”を知っているんだから」
彼女は知っている。
この家を救うのは、「支配」ではなく、「選択」だということを。
そして、、、、
佐伯悠馬は「選ばされる」側ではなく、「選ぶ側」だということを。
感想をいただけると嬉しいです。
AIアシスト作品です。
僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。
気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。
これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。




