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第十一話 佐伯悠馬は、逃げ道の豪華さに絶望した

ノア「悠馬兄さんは俺のもの!!!」

悠馬はもう逃げられない(多分)

十八歳になった僕は進路を考える年齢になっていた。

それはとても普通の事、むしろ遅いくらいだった。


寮の談話室で、僕は仲間たちと話していた。


「悠馬はオックスフォードほぼ確定だろ?」

「成績も推薦も問題なしだし」

「いや、日本もありじゃない?お前日本人だしな」


何気ない会話、進路相談。ただそれだけだった。


「……日本、か」


僕は考えていた。ノアは変わり始めている。

自分で考え、自分で選び、失敗しても、それを受け止めようとしている。


ならば……僕も次へ進むべきだ。


だが。その会話を聞いてしまった人物がいた。


ノア・ハミルトンは廊下で固まっていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


日本?逃げる?悠馬兄さん???!!!!

頭の中で単語が爆発する。


冗談じゃねぇ!絶対行かせねえ!!!


胸がかっと熱くなった。最近、我慢していた感情が一気に噴き上がる。

自立?大人?知るか!!


悠馬兄さんは……悠馬兄さんは俺の!!


だが待て……。

ここで暴走したら、悠馬兄さんは離れる。きっと逃げる。


逃げたらきっともう帰ってこない。


ノアは、深呼吸した。そして珍しく本気で考えた。


「ここは頼るべきだ」


自分より、金も、力も、影響力もある存在に!


数時間後、ノアはこっそり屋敷に戻っていた。

そして……号泣した。


「父上えぇぇぇ!!!父さああぁぁぁぁん!!!」


エドワードと拓海は同時に振り返った。


「悠馬兄さんが!!!日本に!!!逃げますううぅぅぅ!!!」


ーーー沈黙。次の瞬間……


「……それはまずいな」

「……最悪だ」


二人の声が完全に一致した。


エドワードは即座に理解した。


悠馬はこの家の要だ。

参謀で、調整役で、暴走防止装置。

彼がいなくなれば……この家はまた、音を立てて崩れる。


拓海もわかっていた。


息子は、優しすぎる。

逃げると言い出すほど限界まで考えている証拠だ。

そして、逃がしたら最後……。


「……招集だな」


エドワードが言う。


「……ああ」


二人は同時に妻たちへ連絡した。


数日後、屋敷の応接間。終結する最強のママンズ。


「状況は理解したわ。」


ジェシカは腕を組み、即断。


「「囲い込みね」」


菜摘は紅茶を飲みながら、にこやかに同意する。

この二人が一致したとき、事態はたいてい「面白くない方向」へ進む。


「まず、選択肢を増やしましょう」


と、ジェシカ。


「日本も英国も、全部”魅力的”にする」

「本人に考えさせるようで、考えさせない、ね」


菜摘が補足する。


一方、何も知らない悠馬は普通に生活していた。が。

やたらノアが周りをうろつきチラチラとこちらを見ていることに嫌な予感がしていた。


そして、その次の日から……

嫌な予感は加速度的に現実になった。


まず、手紙が増えた。

推薦状、評価書、将来性の話。

差出人もやたら豪華だった。


次に、電話。

「悠馬君、君の可能性についてぜひ一度……」


知らないはずの番号。知っているはずの名前。


『全部、家経由』


そして決定打。週末の呼び出しによる帰省。


「久しぶりね、悠馬。」

応接間にいたジェシカ叔母様は完全に臨戦態勢だった。


「選択肢は、多いほうがいいわよね?」


菜摘母さんは紅茶を注ぎながらにこやかに言う。


「まだ決めなくていいのよ?」


ーーー決めさせる気満々の顔で。


机の上には資料の山。

英国。日本。共同研究。特別枠。

どれも魅力的、そして…


『どれも断れない』


「……逃げ道が、ない」


思わずつぶやくと、父ーー拓海が妙にやさしい声で言った。


「選択肢が多いだけだろ?」


それが、一番怖かった。


夜、、、

部屋に戻るとノアがいた。


やけに大人しく、やけに素直。


「兄さん、無理はしないでください」


「……ノア?君、何した?」


「……何も?」


目が泳いでいる。


その瞬間すべてが一本の糸でつながった。


ーーーーーこいつだ。


「ノア」


「……俺、暴走してない」


それが答えだった。


その夜、悠馬は眠れなかった。

頭の中で、未来が何通りも提示される。

でも、どれも同じ方向を向いている。


『屋敷から、離れられない未来』



翌朝


ノアは意を決したように行った。


「俺、自立する」


その言葉に、悠馬は笑いそうになった。


……遅い。

あまりにも。


「でもさ」


ノアは続けた。


「兄さんがいなくなるのは違うと思う」


それが本音だった。

自立したい、でも失いたくない。

子供の矛盾。


悠馬は初めてはっきり思った。


『ここにいたら人生を消費される』


数日後。


エドワードと拓海が並んでいた。

二人とも珍しく焦っている。


「「悠馬」」

「逃げるな」

「……戻ってこい」


言葉は違うが意味は同じ。


その背後で、母たちは完璧な笑顔だった。


「あなたのためよ?」

「全部、愛情」


……逃げ場ゼロ。


悠馬はゆっくり息を吐いた。

怒鳴る気力も、説明する力も、もうなかった。


「……考えます」


それが、唯一言えた抵抗だった。


その夜。


ノアは眠れずに天井を見ていた。

自分が追い込んだ。でも、止め方がわからない。


同じ頃、悠馬は窓の外を見ていた。

雪が、静かに積もっていく。


ーー音もなく、出口を埋めていくみたいに。


豪華で、丁寧で、逃げられない。

それが、

今の自分の未来だった。















感想をいただけると嬉しいです!


AIアシスト作品です。

僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。

気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。

これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。

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