第十話 ノア・ハミルトンは、選んで失敗した / 佐伯悠馬は、嫌な予感しかなかった
ノア、自立する?悠馬、ちょっと寂しい?
Ⅰ:ノア・ハミルトンは、選んで失敗した
俺は、自分で決めた。それだけは間違いない。
新入生の中で、小さな問題が起きていた。
寮の備品が壊れ、責任の所在が曖昧で空気が悪くなっていた。
誰も、前に出ない。
だから、俺は出た。
「俺が話をつける」
そういった瞬間、周囲がこちらを見る。
……見られる感覚。悪くはなかった。
相手は気が強く、言葉も荒かった。
俺は、力を使わなかった。ちゃんと、言葉で押した。
立場を示し、責任を指摘し、逃げ道を塞いだ。
……やれる。
そう、思った。
結果は最悪だった。
相手は逆上し、話はこじれ、最後に教師が介入した。
「高圧的だった」
「威圧感があった」
そんな言葉が並んだ。
俺は、黙った。言い返さなかった。
ーーー正しかったから。
そう、信じたかった。
数時間後、呼び出された。
そこに、、悠馬兄さんがいた。
監督生として。
悠馬兄さんは俺を見て、でも何も言わなかった。
代わりに状況を整理する。
事実。誤解。行き違い。
声は穏やかで、でも隙がない。
問題は「誤解」になり、処分は軽くなった。
誰も、俺を責めなかった。
終わった後、俺は言った。
「……助けたな」
悠馬兄さんは、少し困った顔をした。
「フォローしただけだよ」
それが、一番刺さったし、安心した。
そして同時に思ってしまった。
結局、頼ったな……と。
夜、一人で考える。
自分で選んだ。
自分で動いた。
でも、最後は……悠馬兄さんが片付けた
それでいいのか?
それで、俺は本当に「選んだ」と言えるのか?
一方で、悠馬は気づいていた。
ノアの視線が前より少し硬くなったこと、ためらいが混じったこと。
ーーー変わり始めている。
それが、良い兆候か、悪い兆候かはまだ分からなかった。
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Ⅱ:佐伯悠馬は、嫌な予感しかなかった
~嫌な予感はあたる。それは僕の人生経験だ。~
「なあ悠馬」
父ーー拓海が「妙にうれしそうに言ったとき、すでに遅かった。
「ノアと蘭の話なんだけどさ」
その瞬間、僕は頭が痛くなった。
話は簡単だった。
エドワード叔父上が『まだ諦めていなかった』
ノアの将来、血筋、信頼。
「蘭は、扱いやすい」
その言葉に僕は一度目を閉じた。
『蘭を、何もわかっていない』
「面白そうじゃない?」
菜摘母さんは紅茶を飲みながら言う。
止められない。煽らない。
ただ、生暖かく見守っている。
ーーーー一番怖い立場。
ノアは完全に蚊帳の外だった。蘭は、さらにその外。
ソファで動かない。
「……別に」
それが、蘭の意見だった。
凛は腕を組んでいった。
「ノアなんて顔はいいけど中身が残念なの確定でしょ?」
辛辣だった。
ノアがきちんと知ったのは後になってからだった。
蘭が、自分の婚約者候補扱いになっていることを。
「……俺、そんな話聞いてない」
(実は少し前にそれとなく話しているが本人はよくわかっていなかったため忘れている)
ノアの声が低くなった。
僕は、その様子を見ていた。これは、ほおっておくと爆発する。
そうなったら……面倒だ。
「叔父上」
僕ははっきり言った。
「今はやめたほうがいい」
「何故だ?」
「ノアは自分で立とうとしている。その邪魔をすることになる」
エドワードは一瞬だまった。そして、笑った。
「……君は、本当によく見ているな」
それは褒め言葉であり、敗北宣言だった。
その夜、ノアは言った。
「兄さん」
「ん?」
「……俺、ちゃんと自分で決めたい」
それは初めて聞く言葉だった。
即は、少しだけ安心した。
二つの騒ぎは、どちらも小さく収まった。
でも、確実に残ったものがある。
ノアは僕に頼ることを怖がり始め、
僕はノアが自分からはばれようとしている兆しに気づいた。
それは、健全で、でも少し寂しい変化だった。
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AIアシスト作品です。
僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。
気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。
これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。




